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サカナクション インタビュー

Album

『アルクアラウンド』
[初回限定盤]
2010.01.13 RELEASE
VICL-36553
1,000円(tax in.)

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[通常盤]
VICL-36554
1,000円(tax in.)

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01.アルクアラウンド
02.スプーンと汗
03.ネイティブダンサー (Rei Harakami へっぽこ re-arrange)
04.“FISH ALIVE chapter 2”1 sequence by 3 songs - SAKANAQUARIUM 2009 @SAPPORO ※初回限定盤のみ

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サカナクションアーティストページ

サカナクションインタビュー

−−では、そろそろ新曲『アルクアラウンド』について触れていきたいのですが、今作からは閉塞から突き抜けようとしているグルーヴ、意思表示を感じます。

山口一郎:シングルというモノをリリースする意味というのは、アルバムを売る為だけのプロモーション的ツールとして使うということじゃないんです。ちゃんと作品として出したいんだと。でもあくまでもシングルな訳ですよ。1曲を絞らなきゃいけない。その1曲で「何を歌わなきゃいけないか」っていうことで、僕が拘ったのは、フィクションであってはいけない。ノンフィクションじゃなきゃいけない。じゃあ、今のサカナクションにおけるノンフィクションっていうのは何なのか。それは『シンシロ』というアルバムを東京に来て作って1年半ぐらい経ちますけど、そのときはちょっと遠征に来てる気持ちで東京に来てたんですよ。でも「ちょっと待てよ」と。「俺、ここで結婚して子供を作って家をもし建てたら、ここにお墓ができて、ここがホームになるんじゃないかな」「そういう覚悟で俺は今東京に来て音楽で生きていこうとしているのかな」っていうのを確認しなきゃいけなかったというか。その結果「じゃあ、ここで生きていくって決めて、俺は歌を書かないといけない」「ホームはここだ」っていう宣言をするべきだと。ホームはいくつあってもいいけど、やはりここで生きていくんだっていう証の曲にしなきゃいけない。それが僕の中での『アルクアラウンド』っていうストーリーができたきっかけです。

−−ここまで自身の今この瞬間の生活における想いを音楽に反映させたことって今まであるんですか?

山口一郎:意識的にはないです。こういう取材で「この曲の歌詞は今の一郎くんを物語っているよね」とか言われて「あ!」みたいのはあったけど、自分が意識的にそれを書いていこうと思ったことはなかったです。ただ「書けるな」とは思いましたけど。

−−「ここで結婚して子供を作って家をもし建てたら……」みたいなことを、なぜ突然思ったんですか?

山口一郎:あのね、僕の周りのスタッフさんとかって自分より年齢の上の方が多いんですよ。PAの方とか照明の方とか。40代とか、もしかしたら50代の方もいるかな。そうした人たちと日々話してると、そういう人たちってそこで生きている訳ですよ。結婚されているし、中には離婚をされている方もいて。で、子供もいるし、家も建てていたりして。でも「出身どこですか?」って聞くと、東京じゃないんですよ。僕らと同じように東京に出てきて、そこをホームにして生きていってるんですよね。自分をその人たちの人生と被せてみると「あ、途中なんだ」と。で、このまま生きていくとなると「ここがホームになっていくんだな」って。それが実はすごく怖かったんですよ。僕は今彼女いないですけど、誰かと付き合って「結婚しよう」って言われたら、それが高校生とか大学生の頃だったら「いいよ、結婚しよう!」みたいに言えたけど、今は「ちょっと待てよ!」と。「結婚?まぁまぁ」みたいな感じになるだろうなと思って(笑)。だから「ここをホームにしていく」っていう決意を歌に書くってことをしなきゃいけないなって。

−−その人間くささみたいなところをまず顕著に感じさせるのが、山口さんの声だったんですね。抽象的な言い方ですけど「すげぇ歌ってる」って思ったんです。『セントレイ』に比べても明らかに熱いし、エモーショナルですよね。

山口一郎:ロックにしたかったんですよ。サウンド面としては、どちらかと言うと、80'sダンスミュージック的要素が強かったし、ちょっとポップなんですよ。それは悪い意味じゃなく、自分たちの狙った通りだったけど、でもそれに対して可愛らしく歌ったり、今まで通り言葉を伝える為だけの丁寧な歌い方だと、突き抜けないというか、まとまらなかったんですよね。じゃあ、自分がノンフィクションで書いた言葉を、このオケに対してどういう風に歌ったら伝わるかな?って考えたときに、やはりこの歌い方が一番しっくり来たというか、まぁ自然とそうなったっていうのもありますけど。

−−ちなみについ先日、かなり気持ち良く酔っ払っているときに冬の夜景を眺めながら『セントレイ』を聴いてたら涙が出てきて(笑)。サカナクションってスピーカーから大ボリュームで鳴らして踊りながら聴くのが一番だと思っていたんですけど、人の孤独にそっと寄り添ってくる要素も強くあることを知ったんです。で、今回の『アルクアラウンド』はまさにそういう聴かれ方もされていく曲になるだろうなと感じたんですが。

山口一郎:僕はそれを「もう一次元」って呼ぶんですけど、先程の話じゃないですが、メディアで流れている音楽がたくさんある訳ですよね。それにみんなが何かしら引っ掛かって、その中でのヒットチャートが生まれると。それは素晴らしいことだし、それには要因がある訳ですよね。で、その要因って実はすごく健全で「みんなが何故引っ掛かるのか」っていう部分は物凄く純粋な訳ですよ。そういう部分が例えばサカナクションのような音楽の中にもしあったとしたら、盛り込めたとしたら、それはアンダーグラウンドとエンターテインメントを繋ぐ、唯一の武器になる気がする。だからそれを僕は「もう一次元」って呼ぶんですけど。クラブミュージックで涙を流すなんてある意味矛盾してると思うんですが、僕はそれを何度も経験してるし、そこで気付いたことっていうのは物凄く自分の音楽に活きてきてるし、それと同じような感覚を僕らのような歌で出すっていうのはね、すごく重要な訳ですよ。それが出来てる曲になったかどうかはリリースされて初めて分かるし、これからいろいろまた明かされていくと思いますけどね。

ただ、この曲は「サカナクションのスタンダードを作ろう」と思って作った曲なんですよ。「サカナクションっていうのはこういうバンドなんだ」っていうのをちゃんと証明したかった。広瀬香美さんってどの曲聴いても広瀬香美さんじゃないですか。そこを目指すべく「サカナクションってこうだよね」って言ってもらえるスタンダードを1曲作る必要があった。アルバムはまた別の話ですけど。だからそういう意味では何も悩まなかったです。

−−あと、今作は最後に「今始まる意味を探し求め また歩き始める」と言って終わる感じが新しいサカナクションを象徴してる気もしますし、明確な決意表明として受け取る人も多いと思うんですが、そこはそう感じてほしいと思うところですか?

山口一郎:聴く人の自由でいいと思います。僕はたまたま東京に出てきた人で、東京をホームだと感じようとしていますけど、例えば、逆に東京から地方の大学に行く人とかもいるだろうし、もちろん地方から東京に来る人もいるだろうし。もしかしたら結婚することで旦那が住む場所に引っ越さなきゃいけない人もいたりするだろうし。必ず人生で一回はあると思うんですよ、人間って。引っ越して自分のホームが変わる瞬間って。そういう人たちに何かしら届いたりしたらいいなと思うし。また、それとは全く別の意味、生きていく道っていう部分でこの曲が引っ掛かってくれたらいいなって思うし、別にそこは引っ掛からないけどサウンドが好きだと思って聴いてくれても嬉しい。

Interviewer:平賀哲雄
Page Design:佐藤恵