arp解散。この報せを濱田貴司から受けたときは、分かり易く戸惑ってしまった。他のアーティストには失礼かもしれないが、彼らほど誰かの生命力となる歌や音楽を実直に目指した存在を私は知らなかったし、あれだけ暗闇から光へとリスナーをすくい上げることに命を懸けた作品やライブを届け続けた2人に、何かを諦める瞬間がやってくるとは思いもしなかったからだ。故に話を聞きたかった。今回の解散に“?”が浮かんでるファンにも聞かせたかった。その前にほぼ動物的な反応として「残さなくては」と思った。インタビューのオファーに最初は戸惑いを見せた2人だったが、ファイナルライブを迎えてしまうその前に、彼らは真相を語ってくれた。
--arpへのインタビューがこれが最後になると思うと、いろいろ込み上げてくるモノもあるんですが、今日はarpというアーティストが存在していた証を残したいと思って無理を言って一席設けて頂きました。ナーバスな時期に本当にありがとうございます。
大宮あん朱:こちらこそありがとうございます。
--ただ、僕は今回のインタビューは「すみません、お応えできません」と言われたら、無理強いはできないなと思っていたんです。「ファイナルライブでその想いをすべてぶつけるから」と言われれば、それはそれで正しい形だと思いますし。でもこのオファーを悩みながらも受けてくれた。なので、まず今日はこのインタビューを受けてもいいと最終的に決断してくれた理由を聞かせてもらいたいんですが。
大宮あん朱:「受けたい」という気持ちはすごくあったんです。それは平賀さんにはお世話になったし、一番辛い時期にもインタビューしてもらっているので。ただ、自分と上手く向き合ってお話をする自信や覚悟がなかったので、迷っていたんです。それでお返事するのに時間が掛かってしまって……。
--では、その覚悟をせっかく決めて頂いたので、いろいろと質問させて頂きます。何故arpは解散という選択肢を選ぶことになったのか、その経緯と理由を教えてほしいんですが。
大宮あん朱:一昨年の冬ぐらいから歌が思うようにうたえなくなっていて。それでもみんなからアドバイスをしてもらいながら改善を図っていたんです。ただ、それとはまた別に去年の秋ぐらいに体調を崩してしまって、その体調改善も思うようにいかず。最終的にみんなに相談して“解散”という結論に踏み切りました。
濱田貴司:arpって、聴いてくれている人はみんな感動しに来てくれている。涙を流したいと思って来てくれているようなお客さんが多くいらっしゃるので、そういう状況の中でベストで臨めないのであれば、それを続けていくことは誰の為にもならない気がするんです。だから解散は仕方ないのかなと思うんですよ。あと今はあん朱の「もう続けられない」という気持ちを尊重しつつ「彼女の人生にとってどういう選択が一番いいのか」っていう考えに頭は切り替わっていて。僕自身のことで言えば、arpでやり残したことはあるし、これからのarpの為に準備していたこともあるし、残念じゃないかと言えば、やっぱりそこは残念なんですよ。11年間続けてきたものですから「良い終わり方をしたい」と思っていましたし。ただ、今回のarpの解散。解散は解散なんですけど、正確に言うと“大宮あん朱、引退”なんですよ。
大宮あん朱:そうです。
濱田貴司:僕は止めました。「arpを辞めるのはまぁええ。でも一生歌っていく人やろ?君は」ってしつこく言ってました。僕は彼女は一生歌っていく人だと思っていたんです、ずっと。arpが終わろうが、それこそ僕が辞めようが。だから“引退”ということが、arpにとってというよりは、あん朱にとって本当に最善の選択なのかどうか、僕は未だに悩んでいます。それでも、まずは尊重するところから始まると思うので、彼女が今それを決めたのなら、そうする他はないんですけど。まぁでもね、辞めてもね、またやりゃいいんだし。本人は「絶対にそれはない」と思っているみたいなんですけど、人生はすごく長いようで短いようで、長いんですよ。
大宮あん朱:(笑)。
濱田貴司:僕の中であん朱はすでに家族なので、リアルな話、妹とかよりもずっと長い時間を共に過ごしていたんでね。arpがどうこうというよりは、今はあん朱にとってベストなのは何か。一応もう結論は出てるんですけど、まだ考えることは止まっていないのもあるし、悩んでいるし、心配している。
--あんなに必死に歌を、心を、魂を届けようと全身全霊で歌い続けてきた人が、その場所から離れる決断をするってこんなに苦しいことはないと思うんだけど、実際のところはどうだったんでしょう?
大宮あん朱:苦しかったんですけど、ずっと。でも決断するまでが苦しくて、決断した後はすごくラクになっていて。もちろん「私の音楽人生、11年って何だったんだろう?」ってナーバスになったりもしていたんですけど、辞めたかったのかもしれないんですよ。まさか決断をした後の方がラクになるとは私も思っていなかったので。でもとにかく1年以上、私はずっと悩んでいて。その期間が最後のチャンスだったんだと思います。でも上手くいかなかった……ので、引退って決めざるを得なかった。
Interviewer:平賀哲雄
Page Design:佐藤恵