ソウルフラワー中川敬 震災後の今を語る
これまで原発問題なんて一言も語ってこなかった人々が、3月11日を境に、免罪符を得たかの如く、是非を問う言葉を。ある者は歌を、方々に発するようになりました。そうした流れに疑問を抱いていた自分は、自身初のアコースティックソロアルバム完成というトピックを持つ中川敬に対し、まるで己のいらだちをぶつけるような質問をしてしまいました。そうした取材の形が正しかったのかは、今も分かりません。ただ、これを期に自分は、大きく変わりました。できることなら、今、日本に生きる全ての人々に読んで欲しい。アルバム『街道筋の着地しないブルース』を聴いて欲しいと願っています。(5月9日取材)
--今回はアルバム『街道筋の着地しないブルース』についてのインタビューとなりますが、やはり3月11日のことを避けては語れないと思っています。
中川敬:初のアコースティック・ソロ・アルバムってこともあるんやけど、プライベート・スタジオで全部ひとりで作ったってことも、自分にとって初。そのことだけでも忘れられないレコーディングといえるけど、3.11前後に作ったアルバムっていうのは、これはもう、一生忘れられへんよね。
『キャンプ・パンゲア』(※1)『キャンプ・パンゲア』(※1)の制作で2年間、スタジオに缶詰状態やったから、そのノリのまま間を空けずに作ってみようかなって、去年の夏頃から思い始めてた。一度上がったテンションや高揚感を、そのまま持ち込んだ方がいいと思ってね。とりあえずはガキの頃に好きやった曲のカバーとか、セルフ・カバーや、その日に録りたいと思った曲を、思いつくままに順番に録っていったって感じやね。だから「アルバム収録曲」は、俺にも分かってなかった。
--歌やギター以外の演奏も、全て中川さんなのでしょうか?
中川敬:全部俺。全篇、音像の隅々まで、中川敬だらけ(笑)。
--本作には3.11以降に制作された楽曲や、録音された楽曲もあるのでしょうか?
中川敬:3月は(震災の)後方支援に動かなければいけないところもあって、レコーディングがストップした。ツアー明けの4月上旬にレコーディングを再開させたんやけど、とはいえ毎日被災地と電話をしたり、支援物資を大量に買いに行ったり、そういうことばっかりしてたから、ハード・スケジュールになっちゃって。だから、いまだ、客観性がないんよね、この作品に対して。まあ、3.11以降に録音した曲も数曲あるんやけど、そこはあんまり意識せずに聴いてもらいたいって想いもある。
--M-01<風来恋歌(ふうらいれんか)>はアイリッシュ・トラッドのカバーですが、歌詞は中川さんによるものになっています。
中川敬:アルタン<プリティー・ヤング・ガール>のカバーなんやけど、3月前半くらいにアルタン側にも許可をもらって歌詞を考え始めて……。ただ、この曲は3.11があって大幅に歌詞を書き換えざるを得なくなった。原曲のニュアンスを残しつつ、3.11以降の自分なりの情景が混ざった曲になったね。
--3.11以降、既存の音楽であっても、響きが変化したと感じているリスナーは多いと思いますし、“これまで何を歌ってきたのか”が問われていくことになると感じました。もっと言えば、「替え歌」で何かを批判せずとも、響く歌は響くのではないかと……
中川敬:ただね、歌の文化や歴史っていうのは、基本的に「替え歌」の歴史なんよね。著作権が登場してからの100年くらいで音楽は変質してきているけど、長いホモ・サピエンスの歴史において、歌っていうのは基本的に「替え歌」。仕事唄、春歌、労働歌、祭りの唄…。モノノケ・サミットの世界もまさにそう。
今でいえば「原発」やね。歌詞を変えて、みんなで唄に乗せて思いを共有するっていうのは、ドンドンやればいい。俺も阪神淡路大震災が起きた時、書きかけてた<海行かば 山行かば 踊るかばね>や<エエジャナイカ>の歌詞を微妙に書き換えた。書き換えざるを得ない、それはあるよ。
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Interviewer:杉岡祐樹
Page Design:佐藤恵