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中川敬『街道筋の着地しないブルース』インタビュー

アルバム
01.風来恋歌
02.夜に感謝を
03.街道筋の着地しないブルース
04.少年
05.ひかり
06.満月の夕
07.日高見
08.いちばんぼし
09.しっぽの丸い小犬
10.ひぐらし
11.死んだあのコ
12.野づらは星あかり
13.寝顔を見せて
14.男はつらいよのテーマ
中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン) 『街道筋の着地しないブルース』 インタビュー

--ただ、先ほど中川さんが挙げた2曲はもちろん、今作に収録された楽曲は、そうした状況のみを綴った歌詞になっていませんよね。

中川敬:俺も今、怒りはすごいわけよ。東京電力や官邸、役人の対応は本当に犯罪的。ただ、自分が楽器を持つ段階になると、ひとりひとり、誰か具体的な怒りの対象がいるのではない感じになる。
例えば今回の被災地でも、福島以北の被災地の感情、福島県民の感情、関東圏の感情。俺ら大阪、沖縄の感情と、それぞれにすごい温度差がある。Twitterとかやっていると、ネット社会って以前よりはマージナルな部分が見えやすい時代にはなっているけど、今回の震災は「ここは被災地だ」「あそこは被災地じゃない」と分けられる事態でもない。そんな中で、ミュージシャンは、それぞれの感情に則して各々の音楽を鳴らすべきなんよね。
そこで俺の場合は、まずみんなで共有できる、ちょっとでも気持ちを解放する音楽を鳴らしたいって気持ちが強かった。怒りだけが結晶したような勇ましい言葉が俺の音楽に投下されることは、今作に限って、あんまり起こらなかった。

実際、ニューエスト・モデルの初期のアルバムには、原発絡みの歌詞がいっぱいある。20代前半に作った曲やから、観念的表現が多いけど、その時その人の気持ちの高揚に忠実に音楽をやっていけばいい。

--確かに震災が起きる以前から、中川さんは原発の安全性を問う発言をしていましたよね。

中川敬:実は88年に、広瀬隆さん(※2)の講演とニューエスト・モデルのライヴのコラボレーションをやったりしてるんよね。ただ、俺の周囲には、90年代から“反原発、脱原発が当たり前”って空気があったから、あえて言及する感じじゃなくなってた。その態度は、次の子供たちの世代に申し訳ないというか、俺らの世代こそがもっと言挙げしておかなければならなかったんよね。
アメリカの軍産複合体同様、日本における原子力ムラは一番のタブーになってる。だから、地上波や全国5大紙からのみ情報を得ている人たちは、息の長い反原発運動自体の本質的な部分を知らないしね。もう、事象面はいい。自分自身が原発をいらないと思っているのかどうかが重要。
「このデモの仕方はどうなんだ?」なんて議論ももちろん大事やけど、一番大切なのは自分がどう思っているのか。子供達、次世代のために危険な原発、原子力を残したくないと思うのなら、無くなる方向に持っていくために今自分が何ができるのか。事象面にウダウダ言っている一億総評論家的なメンタリティこそが、今みたいな状況を作っているんじゃないか。そんな逆説的な考え方も、ひっそりと俺の中にはある。

--そうした状況だからこそ、今まで通りの生活を続けていくことも大切ですよね。

中川敬:いや、新しい生き方が求められているっていう思いが強いよ、3.11以降。もちろん、エネルギー問題がまず大きく横たわってはいるけど、全般的に、日本列島に住む全ての人々が、あらゆる意味において新しい生き方を求められている。今まで通り素晴らしい音楽的空間を作りたいと思うし、素晴らしい集いや繋がりを作りたいからこそ、新しい生き方が求められているっていう感じやね。

--そういえば今回の震災直後、関西FMラジオ局で今作にも収録の<満月の夕>(※3)が多数オンエアされていたのが印象的でした。

中川敬:阪神淡路大震災で<満月の夕>を書き上げた後、「こういう曲をもっと書いて欲しい」って言われたけど、狙って書くタイプの曲じゃない。もちろん、その後のソウル・フラワー・ユニオンの楽曲の中にも、被災地での影響はそこかしこに散りばめられてるけど、あそこまで具体的に歌った曲をガンガン書こうとは思わなかった。曲っていうのは自分の中から自然と湧き上がってくるかにかかってるから。狙って書くものじゃない、俺にとっては。

Interviewer:杉岡祐樹
Page Design:佐藤恵