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中川敬『街道筋の着地しないブルース』インタビュー

アルバム
01.風来恋歌
02.夜に感謝を
03.街道筋の着地しないブルース
04.少年
05.ひかり
06.満月の夕
07.日高見
08.いちばんぼし
09.しっぽの丸い小犬
10.ひぐらし
11.死んだあのコ
12.野づらは星あかり
13.寝顔を見せて
14.男はつらいよのテーマ
中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン) 『街道筋の着地しないブルース』 インタビュー

--中川さんは、表現することで発散、解消される想いもありますか?

中川敬:凡庸な言い方になるけど、【闇鍋音楽祭2011】の一回目。3月20日に七尾旅人くんとソウル・フラワー・ユニオンでやった時、1曲目を歌い出した瞬間に気持ちがすごく楽になったのを覚えてるね。歌い始めた瞬間の、肩の力が抜けていく感覚。振り返ると、3.11以降の10日間、ちょっと気持ちが張り詰めてたんよね。
それに、“こんな時期に笑って踊っていいのかな?”って感じの人も多かったみたいで。何でもかんでも不謹慎みたいな言い方が飛び交ってる時期でもあった。俺がライヴでやりたかったのは、人と人とが出会って会話をする。ずっと引きこもってた人や、オフィスから離れられなかった人が、ライヴ会場で話をするだけでも、ライヴをやる意味があると思った。
だから、いろんな意見が周囲にはあったけど、俺は“何にせよやる”って心構えやったよ。電気が無理ならアコースティックでとか、ライヴが中止になるなら会場まで行ってお客さんと話をするとか。中止になっても、会場にアコギ持って行って歌ってたやろな。

--だからこそ、この時期に中川さんのソロアルバムがリリースされることは、リスナーとしてとても嬉しいです。

中川敬:何となくモノノケ・サミット(※4)の1stアルバム『アジール・チンドン』とかを思い出すね。あの時は、それまでロック形態のみでやってきてたところから、チンドン楽団形態でまず1枚を完成させたんやけど、やっぱり今作も忘れがたい作品になるんやろうね。

--では、そうしたアルバムの最後の1曲をM-14『男はつらいよのテーマ』のインストカバーにした理由は?

中川敬:去年ある時、リクオと『男はつらいよ』の話で盛り上がったことがあって、「1話から観直してみようかな」なんて冗談で言ってて。結局今年の1月に1話を家で観てみることになるんやけど、うちの子供、同居3歳男性がさ(笑)、寅さんを気に入っちゃって。子供心に、渥美清が面白いんやろうね。連日レコーディングの時期、晩飯時に観てたんやけど、そのうち「今日は寅さん観ないの? 今日も寅さん観る!」って、自分から言い始めて(笑)。以来うちの同居3歳男性が、あのメロディばっかり歌うようになった。レゴとかで遊んでいる時とかも、ずっと(笑)。
で、『男はつらいよ』、シリーズ初期は夏と正月の年2回公開で、正月公開回のシチュエーションではラストシーン、これから春がやってくるからと寅さんは北に向かうんよね。そこに、東北の光景、1970年代の半漁半農の貧しいながらも尊厳に満ちた東北の光景が、あの映画にはたくさん詰まってる。ギターを弾きながら曲を作っている時に、その光景がバッと襲ってきて、いきなり、録ろうかなって思ったんよね。俺にとっての東北の光景というのが、『男はつらいよ』シリーズのあらゆる場面、シークエンスと重なった。まあ、それ以上でも以下でもない。録ろう、と思ったんよね。

あと、俺らの仲間達が今、ボランティアで被災地に入ってるんやけど、石巻に行ってる仲間が「避難所暮らしが続いて精神的に参ってきて、みんな気持ちがささくれ立ってきている。娯楽が必要だ」って話になって、映画上映会を開くことになった。その時、山田洋次さんと手塚治虫さんの事務所に連絡して、避難所で『男はつらいよ』と『ジャングル大帝』を上映したんよね。

--結果、アルバム『街道筋の着地しないブルース』は確かにモノノケ・サミットに近しい作品となりましたよね。

中川敬:神戸の震災の時、モノノケ・サミットとして被災地で200回以上ライヴをやったけど、演奏したオリジナル曲は<満月の夕>だけ。あとは全部、戦前の流行り歌とか民謡とか労働歌とか。今回のアルバムはカバーやセルフ・カバーが多いけど、モノノケ・サミットと似た要素があるとしたら、みんなが知っている曲なんだけど、懐メロとして響かせるのではなく、今の唄、今の音楽、次に生きる音楽として響かせようってところじゃないかな。そういうテーマは製作当初から確かにあったし、そうじゃないと絶対にアカンというのがあったな。

--では、ソウル・フラワー・ユニオンの今後は?

中川敬:今はまだ、バタバタしてるからね(※5)。ジゲンの桃梨もバリバリやってるし、奥野は布袋(寅泰)さんのバックで弾いてるし。ソウルフラワー震災基金(※6)も新しいひとつの仕事として、しっかりやっていきたいから、今年はそういう1年になるような気がするな。

Interviewer:杉岡祐樹
Page Design:佐藤恵