新海誠監督による最新映画「星を追う子ども」の主題歌に起用され、箭内道彦監督の「TBCエステチケット」新CMに新曲『hotline』が使用され、2011年になって更なる注目を集めるようになった熊木杏里。先日は福島で感動的なライブを堪能させてくれたが、ここに至るまでのストーリーには自信を喪失してしまうほどにタイトな現実もあった。また、シンガーにとっては命となる声の変化もあった。そうした状況下で彼女は何を考え、何を得て、待望のニューアルバムにして最高傑作とも言える『and...Life』に辿り着いたのか。約19ヶ月ぶりのhotexpressインタビューにて本音で語ってくれた。
−−さぁ!待ちに待ったニューアルバムのリリースです。19ヶ月ぶりのインタビューです。だから今日は整理しなきゃいけないことがたくさんあります。本音トーク、交わしてもらってもいいですか?
熊木杏里:本音トークですか?
−−何かあったら後で僕が謝りますんで。
熊木杏里:はい(笑)。
−−ちょっと前、録音していないところで話していたとき「最近、自信を失っている」と熊木さんは言っていました。今はどうなの?
熊木杏里:全体的には自信を取り戻したというか、平常心ではいられています。自信を失っていたときは多分、移籍が決まる前だったりして弱っていましたね。どういう風に活動していいか分からないし、周りからの「一緒にやっていこう」という力もないと、灯りがどうしても弱くなっていってしまう。でも今は環境が整って、自分からも「やろう」という気持ちが出たり「やって」って言われることに対してやる気も出るし。あと、最近は訓練も兼ねて弾き語りライブを増やしていて、ひとりで歌うことによって強くなっていける気がしていますね。
−−昨年3月 ベストアルバムのリリース以降。それまで所属していた事務所とレーベルを離れてから、熊木杏里はフリーになっていろんなことを独りで抱えていくことになりました。実際にはどういう心境だったの?
熊木杏里:それまで音楽しかやったことがなかったから、正直なところ「生活はどうしていこうか?」っていう部分もあったし。でも「熊木さん、今はどうしているんですか?」っていう連絡をもらえたりしていたので、とにかくライブをやることで表へ出て行こうと。元気であることは知らせなきゃいけないと思ったので。ただ、意外と辛かったです。
−−何が一番辛かった?
熊木杏里:助けてくれる人がいないと、自分だけでは何もできないと痛感したんです。それが辛かった。うん……、彷徨いましたね。自分が出ていくことが良い場合と良くない場合があったりするし。ちょっと遅れた社会勉強をした感じ。
−−でも2011年を迎えてから、東京国際フォーラムで再びワンマンがやれて、新海誠監督による最新映画「星を追う子ども」の主題歌に起用されて、読売テレビ「かんさい情報ネットten!」の出演を機に『誕生日』がAmazon.co.jpのベストセラーランキングで1位を獲って、更には箭内道彦にその声を評価されてCMソングへの起用や【LIVE福島】への出演と、熊木杏里は高く再評価された訳じゃないですか。この状況にはどんなことを感じていたの?
熊木杏里:再評価か。自分ではよく分かんないなぁ。でも活動していることを少しでも世の中に発信できればいいとは思っていて。そうすれば、少なからずとも反応してくれる人がいるっていうのは、確かに感じましたね。箭内さんの一件も「ここは頑張っておかなきゃ」っていう気持ちでいて、それが【LIVE福島】まで繋がっていったりしているので、前よりもひとつひとつ大事にしなきゃとは思っているかもしれないです。
−−前回のインタビューで熊木杏里は「今よりも多くの人に知ってもらいたい。それが私が生きていく上での目標になってるんです」と言っていて、その気持ちは今より強くなっているんですかね。
熊木杏里:知ってもらいたいのは大前提にあるし、出たことのないフェスに出ていくのも「熊木杏里ってこういう人なんだ〜」って知ってもらいたいからだし。そこには繋がりが大事で。だから箭内さんもずっと知っていた人だけど初めて今回繋がれて、新海監督とも繋がれましたけど、その関係が途絶えることのない存在になりたいですね。「また熊木さんと何かしたい」と思ってもらえる存在に。なので、縁は大事にしたい。
−−「周りの人には「熊木杏里はずっとこの調子で歌っていければいい人なんだろうね」ってよく言われるんだけど、私は絶対に売れたい」とも言っていましたよね。でもこの強い想いが焦りになることはないの?
熊木杏里:「売れたい」というのはずっと思っているから、いつでもじんわり焦ってはいるんだけど、だからこそひとつひとつ大事にしなきゃと思うし、そのすべてが勝負になっている。前なら無造作に作っていた曲とかもあったと思うんですけど、今は自分も世の中のひとりだということを意識して作る。ふと流れてきたときに「こんな風に届いたらいいんだろうな」とか、そういうことを自分自身も意識するようになったのかなと。まぁでも突飛なことをしていこうとは思っていないし、熊木杏里という流れ、道がある中で曲は生まれていくから、そんなには焦っていないですよ。
−−なるほど。では、とにかく変わろうとしていた昨年3月と今のテンションは変わらないの? それとも大きく違うの?
熊木杏里:あの頃は先が見えなくて不安でいっぱいだったので。自分の作った曲たとがどういう風になっていくか。それを知りたいのに曲が世の中へ出ていかないという状況が苦しかった。何のアプローチもできないので、テンションは当然ながら違いますよね。
−−でも自分の音楽をもっと面白くしていける自信には溢れていましたよね。純度を高めながらも、裾を広げていく作業って普通に考えたら矛盾してるし、非常に難しいじゃないですか。でもそれを可能にする自信があると当時の熊木杏里は言っていました。
熊木杏里:そうですね。それはチャレンジしていました。
−−今、どういうところに落ち着いたの?
熊木杏里:アルバム『and...Life』が完成して、最近になってようやく形になった熊木杏里を端から聴ける状態なんですけど「芯は確実にあるな」と思う。それがありながら、私の感じ方とみんなの感じ方は違うかもしれないんだけど、裾も広がっていっているかなと。まだ「辿り着いた」とは言えないですけど、方向性としてはそっちに向けていると思います。前の作品よりも満足していますし。
−−今の熊木杏里はどれぐらい自信あるの?
熊木杏里:(笑)。自信……そうだなぁ。反省点って言ってる部分がたくさんあるから、伸びしろじゃないけど、まだ空いている部屋みたいなものがあるのは分かってる。そこを埋めればいいっていう。それが自信なのか、希望なのかは分かんないけど。まぁプチプチは凹んではいるんですけどね(笑)。
−−何について凹むんだろう? ライブで失敗したとか? それとも根本的な自分の才能に対して?
熊木杏里:自分の才能については、最近は自信ないことはないな。「天才かな」って思うときもありますし。
−−まぁあるでしょうね。あれだけ良い曲書いてるんですから。
熊木杏里:あるでしょうねって! やめて、そういう感じ(笑)。褒められると嬉しくなっちゃから。えーと、大体J-POPって洋楽へのリスペクトがある上に作られていて「○○的」とか「○○っぽい」って言われる訳じゃないですか。私にはそれがないなって。よくモノマネから入るみたいなことも聞くじゃないですか。私、モノマネから入ることがないと言うか、仮にあったとしても気持ち的な部分で(井上)陽水さんぐらいなのかなって。そういった意味ではミュージシャンっぽくないと言うか、すごく感覚的に曲を作っている気がしていますね。だからこそ自分の気持ちがすごく反映されちゃったり、曲にそういう傾向が出てきちゃったり。それは自分でも面白いって思う。
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Interviewer:平賀哲雄
Page Design:佐藤恵