仲里衣紗主演の映画「ハラがコレなんで」主題歌『愛なんて』を書き下ろしたGOING UNDER GROUND。今回は松本素生(vo,g)への単独インタビューを行い、楽曲や映画への想いはもちろん、今の世の中へのもどかしさ、震災で感じたことなどについて語ってもらった。
今ここにいることが大事なのに、マイナスなことばかりを考えて何も出来なくなるなんて、クソみたいだと思ってます――。
そう語った松本素生の言葉から、様々な“生きていくためのヒント”を感じ取ってもらいたい。
−−『愛なんて』はとてもシンプルな曲ですよね。歌っている内容も、鳴らしている音も。
松本素生:変な意味じゃなくて、映画のタイアップがなかったらシングルとしては出さないような曲ですね。メジャーでやっていてシングルを発売するとなると、シングルっぽさとか、色々なことを考えたりするんですよ。でも、この曲は石井裕也監督(※1)石井裕也監督(※1)からオファーを頂いて書いたという出発点があるから、最初からそういう気持ちがなかった。それが結構大きかった気がしますね。めちゃくちゃ拘ってシンプルにしましたから。「俺はこれだけ出来る」とか変な欲みたいなのは無しにして、本当に曲のメッセージだけ考えてみようぜって。それは監督も同じだったんですよ。歌詞に「クソみたいな」とか尖った言葉もあるから、そこは直そうかなぁって勝手に考えていたら、「絶対に直さないでください」って言ってくれたりして。なんか、初めての経験でしたね。
−−確かに、GOING UNDER GROUNDの作品の中で一番、真っさらで素朴な歌です。
松本素生:震災の後に書いた曲なので、それも関係していますね。あの出来事が影響を及ぼさないわけがないですから。震災後に色々と考えた時、飾ることや自分を良く見せようとすることが、凄く無意味に思えてきたんですよ。僕、子どもがいるんですけど、子どもって裸で産まれてくるじゃないですか。歳を重ねる事に色々なことを覚えて、最初は与えられていたものだけを着ていたのに、自分の着たい服を着る。女の子だったら化粧をするようにもなる。そういう自分の子どもを見ていて、大人になるっていうのは飾っていくことなのかなって思ったんですよ。で、音楽のことだけではなくて、自分の暮らしの事とかも考えた時に、ありのままの気持ちを歌ってみたいなって思った。それが偶然、監督の考えていることとハモれたんです。
−−今回のシングルの前にリリースしたアルバム『稲川くん』が賑やかで弾けていた分、驚くファンの方も多くいると思います。
松本素生:俺もそれは考えたけど、「イエイ!」ってなる時もあれば、家でしょんぼりする時だってあるじゃないですか。「イエイ!」ってなっている時の上澄みだけを取って、商売としてやっていく、或いは自分たちのアイデンティティとしてやっていくことは、古いと思うんですよね。『稲川くん』の後に『愛なんて』を聴くと「どっちが本当なの?」ってなる人もいるかもしれないけど、「これが本当なんだもん!」ってことです。
−−あと、松本さんがTwitterで「未練+意地+絶望+醜さ+希望×肯定=愛なんて、、かなぁ」ってツイートしてたじゃないですか。これほど色々なものが混ざっていて、何故こんなにもシンプルになったんでしょう?
松本素生:うーん………俺、多分一人だったら、どうでもいいと思っちゃう人間なんですよ。でも自分の子どもも出来て、暮らしていくこと、生きていくことを考えなくてはいけなくなったんです。そうなった時に、生活って止められないんですよね。嫌なことがあるから「じゃあもう終わっちゃえばいいじゃん」とはなれない。最終的に“死んではいけない”“生きていかなければいけない”という答えに繋がるので。それは多分みんな同じだと思うんですよ。人は丈夫にはできていないけど、簡単に終わるようにもできていない。良い日もあれば、悪い日もあって、その中で色々なことに折り合いを付けながら、バランスを取りながら、一生懸命生きているわけじゃないですか。それが美しいなと思う。そういう意味ですかね。
−−じゃあ、ここでの“肯定”は、嫌なことや駄目な自分も全てを受け入れるという意味ですか?
松本素生:肯定しないと生きていけないと思っているのかもしれない。生きていたら悲しいことも嬉しいことも全部あるだろうから、肯定しようと思わないと前へ進めないような気がするんです。
「ハラがコレなんで」の主題歌を書こうと思った理由もそこにあるんですよ。どっちつかずじゃないですか、人間って。今日はこう思うけど、次の日は全く違う考えになっていたり。情けない部分も、いやらしい部分も、卑怯な部分もあるし。だけど、頑張っている部分もあったりして。そうやって色々なことを抱えながらも一生懸命生きている人を、「それでいいじゃん」って肯定してくれるような強さが、この映画にはあったんですよ。
Interviewer:武川春奈
Page Design:佐藤恵