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米倉利紀 『through you』インタビュー

アルバム
米倉利紀 『through you』

『through you』
2012.6.27 RELEASE. TKCA-73773
3,150円(tax in.)

米倉利紀 『through you』を購入する
01.gotta get your groove on -hey, baby-
02.out of control
03.why? -y-
04.i wonder if...
05.i love you
06.message
07.human nature
08.my dear friend
09.love is the key
10.magic

20周年を語る、「もうそういう時代じゃない気がする」

デビュー20周年という節目を迎えた米倉利紀が初登場! かつてのヒット曲も満載の今ツアーから、先日出演した「二丁目なう」での一コマ、そして音楽好きなら必聴の1枚となった最新作についてまで。「もう生々しくないと面白くない」と語る米倉の生の言葉は必見です。


米倉利紀 『through you』インタビュー

−−先日、SHIBUYA-DUOで行われたライブを鑑賞させて頂いたのですが、サウンドクオリティ、ボーカルスキル、パフォーマンス、MCから選曲にいたるまで。隅々まで考え抜かれたステージで本当に度肝を抜かれました。

米倉利紀:今回は20周年ということで、90年代に発表した楽曲を中心にセットリストを組んでいきました。ただ、今“考え抜かれた”と言って下さいましたけど、実は何も考えてないんですよ(笑)。特にMCは考えないようにしているんです、考え過ぎるとつまんなくなっちゃうから。

−−MCといえば、米倉さんはライブ中、余韻に浸っている観衆の目を覚まさせるようなことも平然と言っちゃうじゃないですか。

米倉利紀:そうですね(笑)。

−−普通だったら、そのステージに陶酔している観衆には、最後まで夢の世界を楽しんでもらおうとするのが殆どだと思うんです。

米倉利紀:僕は逆に“現実”という夢を見てもらっているんだと思うんです。日常的なリアルな僕を語るMCから“もしかしたら一緒にご飯を食べているんじゃないか?”ってくらい距離間を縮めて、会場を出るとやっぱりCDの中の人だったっていう。どちらが夢なのかを選ぶのは聴いて下さる方、集まって下さる方の自由ですけど、そのバランスを楽しんでもらいたくて両方を僕なりに提示しているつもりです。

−−そういう意味では、『hands』を歌う前に「この歌は貴方たちへの歌ではない、僕が愛した大切な人に贈った曲です」と、あっさり明言していたのも驚きました。

米倉利紀:それが事実ですから。発信源が本物じゃないと ―――それは音楽に限らず、何をやっても何を言っても賛否両論。どちらにも転んでしまうからこそ、発信源だけは事実でありたいと思っているんです。歌詞も曲も気持ちも、事実を書きたい。それを聴いてくださる皆さんがどう捉えるかは自由です。でも、事実がブレてしまっていたら聴き手に届く頃には意味不明、ブレブレになってしまう。

だから『hands』も、何年前に出会って何年間付き合って何年前に別れましたと敢えて全部言うことで聴く前にリアルな物語の扉が開く ―――まあ、「そういうことは聴きたくない!」って僕を王子様扱いして頂いている方もいるとは思うんですが、それではもうつまらない時代かなって。それに「貴方たちには歌ってない」という言葉をそのまま受けるのではなく、大切な人に書いた曲を大切な人に歌う事で、皆さんの恋するヒントになればと思っているんです。結果、皆さんの為に歌っているという事です。

−−米倉さんは先日、USTREAM番組「二丁目なう」(※)に出演されましたよね?

米倉利紀:はい。

−−それも驚いたのですが、番組で米倉さんは“もう今の時代生々しくないと面白くない”って仰っていました。ただ、そうした表現は自身を傷つけかねない所もあると思うんですよ。こんなご時世だけに……

米倉利紀:それをも楽しんじゃってるんですよね。正直、変な手紙やメールが届いたりしますけど、逆に「あ、その人の心にちゃんと僕の言葉と想いが届いたんだ!」って思うんですよ。届いたから、その人は反応した。

ショービジネスにいる以上、エンターテイメント、メジャーの世界にいる以上、これから発する言葉はきっと正しくないんでしょうけど、それで米倉の音楽を信じられないと言われるのであれば、それでいいかと思っています。本当にありのまま、普段の生活をしていく中で、僕はアーティストとしてこういう表現方法を持って生きている。これが僕ですし、これで充分というか。

だからMCも、「もっと非現実的なMCをした方が観客は夢を見られる」って助言をしてくれる人が周りにいますけど、もうそういう時代じゃない。ネットで調べれば色んなことがでてきますし、事実じゃない噂も色んな所にあるでしょ?僕は何を言われても平気です。

−−周囲は心配しませんか?

米倉利紀:デビューした頃は、ファンレターは全てスタッフが事前に検閲してから僕の元に届いてましたね。その気遣いはありがたかったんですけど、それはそれでファンの皆さんからのリアルな気持ちを受け取れていなかった。ある意味、デビューしてからの10年間は完全に裸の王様で、鳥かごの中からの外しか見る事が出来な状況でした。近くにライオンが来たとしても、檻に守られているから怖くなかった。その檻は防音も完璧だったので、「ガーガー言ってるように見えるけど怒ってるのかな?」ってわからないくらいに守られてました。そんな事すら分からない環境でした。

もちろん、だからこそやってこれた10年だと思って感謝していますが、完全なプライベートな時間は家の中とホテルの部屋しかなかった。家から、ホテルの部屋から一歩出たらマネージャーさんがいて、車に乗って仕事場に行って、帰りの車も一緒。買物するにも全部一緒だったので、周囲が何を言っているのか、何をしているのかがまったく分からなかったんです。

やがてそんな状況でも自問自答を繰り返し、自ら鳥かごの扉を開けて出てみたら、いっぱい猛獣がいたけど、いっぱい幸せの小鳥の仲間もいた。その現実に直面したのが30代前半と遅かったんですが、遅くても気付けて良かった。そこで、もっと自分らしく生きた方が良いという鍵を見つけたんです。

−−先日のライブでは、デビュー曲『未完のアンドロイド』を歌う時は、当時の衣装というか、ジャケットに黒い手袋をはめてのパフォーマンスでした。ああしたパフォーマンスも昔はできなかった?

米倉利紀:あれこそ記念日というか節目でしか歌わないので、会場のお客さんも猛烈に沸くんですよね。みんなと歩いてきた米倉利紀の軌跡なので、僕個人的には当時の自分が恥ずかしいは恥ずかしいんですけど、それでも大事なデビュー曲ですから歌いたいですし、観てもらいたいです。今後、もしどんなに凄いヒット曲を出せたとしても、どれだけファンの皆さんに支持して頂ける曲ができたとしても、個人的に大好きな曲が生まれたとしても、デビューシングル『未完のアンドロイド』の存在感には到底敵わない。

今も昔も『未完のアンドロイド』が好きかどうか、それは僕には分からないですけど、要するにそういう次元の曲じゃないんです。あの曲でデビューして、世の中に出ていったので、何にも変えられない米倉利紀の第一歩。凄く大切な曲です。

Interviewer:杉岡祐樹
Page Design:佐藤恵