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−『スカーレット』以来、約半年振りのインタビューになるわけですが、2004年を振り返ってみてどうでした?バンド的には変化に富んだ1年だったと思うんですが。木下さんの中で特に印象に残ってるライヴはありますか?

木下理樹(以下K):『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2004』や『COUNTDOWN JAPAN 04/05』、『ライヴスカーレット2004』とかそういうのは印象に残ってますけどね。

−前回のインタビュー時に「暑いの嫌だな」って言ってましたが、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2004』はまさに猛暑という状況でのライヴでしたよね?

K:そうそう(笑)。あの時はね、歌いながら冷静に「途中で帰ろうかな」と思った。「帰ったらこの先どうなるのかな?」とか色々考えちゃいましたね(笑)。「俺が休みたいんだけど」とか思ってオーディエンスに向かって「涼みたかったら休んでください」とか言ったりしてね。

−観てる方としては逆にすごく面白かったですけどね。暑い気温の中で冷たい雰囲気の楽曲が流れてるっていうのは、観てる方としてはすごく気持ち良いライヴだったと思いましたね。

K:そうっすか。観てる方に喜んでもらえれば良いっすけどね。所詮は水商売なんで(笑)。

−(笑)。その後『スカーレット』が発売され、LIQUIDROOM ebisuで『ライヴスカーレット2004』がありました。あのライヴは皆さんにとって一つの区切りになったと思うのですが、木下さんの中にそういった想いはありましたか?

K:ちょこっとずつ良くなってきてる感じはあったんで、それの確認ではありましたけどね。

−自分が観させて頂いた中では『fazzmaniax』でのライヴも印象的でした。

K:あれは色んな方から「良かった」って言われましたね。俺たちにはピンと来なかったんですよ、めっちゃ調子悪くて。だからちょっと力抜けてるくらいの、調子悪いくらいが良いのかなって(笑)。

−オーディナリーボーイズのオープニングアクトも務まれましたよね。

K:櫻井(雄一)君とかがちょっとメンバーと喋ったりしてた。・・・良い曲が1曲ありましたよね。

(一同笑)

K:ブライト・アイズとかASHとかはそういうのは好きなんですけどね・・・嫌いじゃない、って感じかな。すごい申し訳ないですけど(笑)。

−昨年はライヴごとに徐々に、着実にバンドが一つにまとまっている印象を受けましたが。

K:練習ばっかりやってますからね。ただちょこっと歩むよりも劇的に良くならないのかっていう気持ちは常にありますけどね。劇的にバンドが良くなったっていうのは前も今も全然無くて、何年もライヴやってきてそのうち自分達で気付くことが多かったんだけれども、もうちょっとその成長のペースを速めたいなとは思ってるけどね。

−『COUNTDOWN JAPAN 04/05』は昨年に引き続いての出演でした。前回は日向さんと大山さんが在籍した形のART-SCHOOLとしての最後のステージでした。今年ステージに上がってみてそうした感慨や郷愁などありましたか?

K:昨年も切なさはありましたし、今回も「そういえば1年前は居たな」みたいな感じはありましたよ。もう全てが郷愁ですよね。1回そういうの経験してるから自然と生まれてくるものだし。まあ人間的にそういう部分で一段と成長したって思いたいんですけどね。ただ、グループ魂の後だったんで、そういうこと考えてられないなっていう(笑)。

−グループ魂の方との交流はあったんですか?

K:僕『大人計画』好きなので、クドカン(宮藤官九郎)とか阿部サダヲさんかがすごい近くにいたんで話し掛けたかったんですけど、けっこうテンパってたみたいで。ライヴ直後とかめちゃめちゃ怖かったですね、「こんななのかぁ」と思ったんですけど。

−ライヴを中心に2004年の下半期を振り返っていただきましたが、新加入の戸高さんと宇野さんの印象などは変わりましたか?

K:戸高君は良くなってるね、すごく成長してる。

 2004年、ミニアルバム『スカーレット』発売以降はとにかくライヴに明け暮れていたART-SCHOOL。その中でバンドとしてのアンサンブル、一体感をより増していった彼らには、“復活”とか“再生”という言葉はもはや不適切である。砕け散った過去と新しい光、よりリアリスティックに残酷で、哀しい程に美しく成長した彼らのその証=『LOST IN THE AIR』は、ありていに言うのなら孵化したての蝶のような作品だ。失った想いと空虚な心、そんな地獄のような世界の中でもがき続けた末に見出した一縷の光。ボーカルにして今作の全作詞作曲を手掛けた木下理樹に、心の闇を抉り出し全てを曝け出すように綴られた『LOST IN THE AIR』に込められた想いを語ってもらいました。彼だからこそ感受できる哀しさや郷愁、そしてそこから生まれる優しさと強さ。是非読んでみて下さい!

対談

ART-SCHOOL
×
Yuki Sugioka

MINI ALBUM
「LOST IN THE AIR」

01.LOST IN THE AIR
02.FLOWERS
03.羽根
04.刺青
05.I CAN'T TOUCH YOU
06.PERFECT

VAR-002
¥1,600(tax in)

2005.2.9 in STORES

(C) SMA
http://www.art-school.net/index.html

このCDを購入、
または過去の作品を知りたい方は
こちらまで

ART-SCHOOL

−戸高さんなどはライヴとかで見ると触れ難いというか「グーッ」と入り込んでる感じが出てますよね。宇野さんは木下さんの日記の中にあった、泥酔した時に宇野さんが言った「宇野、圧倒的!」って言葉が好きだったんですが。

K:それは名言だとも思うけれども、「どの辺が圧倒的なんだ!?」と(笑)。宇野君に関してはもっとこう危機迫る感じというか、「もっと行けよ」って想いもありますね。その言葉は名言だとは思うけれども(笑)、もうちょっと足並みを揃えていきたいですし。

−メンバーが脱退してしまった事でART-SCHOOLという物体が一度バラバラに砕け散った感じはあると思うんですよ。そこに新しいピースとして戸高さんと宇野さんがART-SCHOOLに加わり4人でイチから作り上げ、やっと一つの形が見えてきた、という実感はありますか?

K:この1年はわりと表に出ていないというか、ほとんどライヴ活動しかしてなかったしライヴ盤の『BOYS DON’T CRY 』以外、音源も『スカーレット』しか出してないし。だから1年間、バンドを磨く時期でしたね。そして2005年になって、いよいよ表舞台に戻ろうかなみたいな。モグラが顔出すみたいな、そういう時期だと思うんですけども。

−結果として生まれたART-SCHOOLは“復活”ではなく“新生”という言葉の方が似合う、まったく違う匂いのバンドになった気がしますが?

K:メンバーが違えば“復活”しないからね。やはり二度と戻らない、ゾンビじゃないんだからね(笑)。

−ゾンビもまぁ不完全な“復活”みたいな感じですからね(笑)。

K:でも“新生”になっても基本的に根っこの部分は変わってないんですよね。だからそれを良い形で見せれば良いっていうだけだから、そういう意味ではいろいろ葛藤はありつつも着実に進んでいってるなって気はするんですけどね。

−そして2005年ですが、昨年の年越しから元旦にかけては仕事づくめだったと『狂人日記』(オフィシャルサイト内にある木下理樹による日記)にありましたが?

K:レコーディングが地獄で。僕なんかはけっこう早く終わってたんだけど、ベースがなかなか大変だった、1回全部録り直したりとか。あれは日記だから皆が見るとショックかなと思ってそんなに書かなかったんだけど、ものすごい録り直してるんですね。それがけっこうヘヴィーで・・・。ベースをプロトゥールズで直したんですけど、宇野君が自分ではちょっと分からないから、俺とエンジニアの人でずっとやってましたけどね。

−プロトゥールズ使って作業していくっていうのは頭が痛くなってくるような作業ですよね。波形の世界ですからね。

K:波形を見ながら、「ここで何分の何拍子はちょっと可笑しいな」とかちょっとマニアックな。「ロックじゃねぇよな・・・」とか思いながらやってました(笑)。

−木下さんは宅録系の音楽も好きだったそうですが、そういう部分への興味は強かったりしますか?

K:もちろん。『サウンドアンドレコーディングマガジン』とかも常に読んでますし、エンジニアリングの技術とか興味はありますね。まあそれにしてもあまりにもハードなスケジュールで、とても楽しめる環境ではなかったですね。プリッツばっかり食ってたからもう痩せちゃってね(笑)。プリッツしか食えなくなっちゃいましたね。身体的にも精神的にも不衛生だった。まあでもとりあえずは終わって。でも正月三が日は潰れました。

−それはずっとマスタリングで?

K:『COUNTDOWN JAPAN 04/05』の後、元旦の朝から新宿でPV撮影して、2〜3日はレコーディング、5日にマスタリングで終わったっていう感じですね。もう暮れも正月も無く、仕事納めも仕事始めもよくわかんねぁなって。地続きかよ、みたいな(笑)。

−そうした並々ならぬ苦労の末、2月9日にART-SCHOOLの新しい音源『LOST IN THE AIR』が発売となりますが?

K:めでたいね。血と汗と涙と・・・怒りと、絶望と、諦めと(笑)。

−悲喜交々な(笑)。完成した今の心境は今の言葉そのまま?

K:そうですね。もう終わって胸を撫で下ろしてる部分はあるんですけれども、『スカーレット』『LOST IN THE AIR』って2枚で1枚みたいな、『LOST IN THE AIR』は“スカーレット2”と言っても良いような、そういう感じだから。

−2枚を組み合わせて1枚のアルバムにしても全然遜色の無い世界観がありますよね。

K:そうそう。だからどっちも買ってくれないかなと思ってるけどね。そしたらお金入ってくるから(笑)。

−そんなリアルな部分を(笑)。『スカーレット』の時もすごくタイトなスケジュールでやっていったと前回のインタビューで仰っていましたが、今回も先程のお話の通り、タイトでしたよね。そういう風にやっていくっていうのは、アルバムを作る上で必要な状況だったりしますか?

K:いやいや単純に予算とかですよ、「何日で仕上げます」っていうのは。まぁ結果的には全然その枠に収まらなかったですけどね(笑)。僕ら側からしたらもっとゆとりを持ってやりたいですけど、しょうがないよね。

−それでは1曲ずつ伺っていきたいと思います。タイトルチューンにもなっている1曲目の『LOST IN THE AIR』。この曲を聴いた時、まず思い出したのが木下さんが『ライヴスカーレット2004』の時に言っていた「明日が今日より良いかもしれない、そう思う事が大切なんだ」という言葉だったんですが。

K:あ、本当?良いっすねぇ。でも希望に溢れてる曲じゃないですけどね、これは。

−そうですね。でもその中で“ただ生きたくて”っていうメッセージがあって。

K:それはね、ギリギリのコミュニケーションみたいな。そういう曲にはしたいなと思ってますけどね。自分がそういう状況だから、「明日死んでも良い」って思って生きてるからまぁ、いろいろ感じ取ってくれれば良いなと思ってますね。

−ある漫画家の言葉で、「生と死はコインの表裏のようにはっきり分かれている物ではなく、同じ場所にあるものだ。平和に生きてる人にも何%かの死への希求は混じるし、絶望して自殺を考える人間にも何%かは生きたいという気持ちが混ざる。生と死は地層や泥、水割りのように同じ領域の濃度のような関係なんだ」というのがあるんですが、この『LOST IN THE AIR』と凄く通じるものがありました。そういう気持ちはあったりしますか?

K:どうでしょうね。あまり「生きたい」と思わないようにしたいなとは思ってる。「生きたい」と思う人ほどすぐ死んじゃいそうな気がするし、「死にたい」と思って生きてる方が生きてんじゃないのかと思うけどね、残念ながら。それが現実としてあって。だから揺らぐものが常にあって。

−完全に気持ちが一箇所にいるわけでもなく?

K:うん、そうだね。現代人とかはよく分からないですけど、僕とかも秒単位で気持ちがコロコロ入れ替わるから。「良い事あった、あ・・・生きれるかな。でもめんどくせぇな」みたいな、すぐ入れ替わっちゃうから分からないけれども。けれども・・・、みたいな曲ですね。

−前回のインタビューで、「必死にやっていてもふと俯瞰で見てみると全てが滑稽に映る」というような、自嘲的なものが木下さんの中にあるという話をされてましたが、そういう感覚をもっと皆持てよ!みたいな気持ちはありますか?

K:前回の時は自嘲的な気持ちがあったと思うんだけど、−今回もなきにしもあらずですけれども−もっとぶっちゃけてる感じがします。

−ものすごく正直というか、ものすごい所まで見せてるなっていう感覚がありますよね。

K:「見たくないよ」みたいな(笑)。今回はよく言われますよ、「詞がすごいです」とか「引っ掛かるものがすごくあります」とか。やっぱり嬉しいですよね。

−ひとつひとつの言葉が全部活きてて、流して見れない感じがありますよね。

K:そうっすね。すごく苦しんで作ったから、何かしら引っ掛かるっていうのがものすごい嬉しいですよ。そこまでいくことによって初めて次が見えるっていうか。だからね、『スカーレット』も気に入ってたんだけども、『LOST IN THE AIR』はもっと気に入ってる。自分でもっと愛せるような−ちょっとナルシスティックのようだけれども−とにかく俯瞰するような気持ちが無くて。僕自身も相当汚れてる人間ですけど(笑)、俯瞰して見てもそれは汚れてるし、それを自嘲してるのはあまりにも悲しいなと思って。だから『LOST IN THE AIR』は今まで作ったどのCDよりも(自分に)近いところにいると思う。

−『LOST IN THE AIR』は今までの楽曲の中でも特にバンド感や勢いが強く、テクニックだけでは補えない、気持ちとか意識っていうのがすごく大事である事が前に出た楽曲だと思うんですが?

K:そうですね。でもなかなかブレイクの「ガッ」ていう所が合わなくてね、ベースだけ「ビヨーン」とか。「出てるよ、お前」みたいな。そこはもうプロトゥールズさんの編集で(笑)。

−ライヴでやる上では相当難しい楽曲になるんじゃないかなと思うんですが?

K:ライヴだと剥き出しになるからね。もう勢いでやっていくしかないですけどね。だからライヴに向けての練習はかなりしてますね。

−まだ拝見させてもらってないんですが、『LOST IN THE AIR』のビデオクリップは?

K:新宿をひたすら歩いてるみたいな。僕がおみくじを引くシーンがあるんですけども、「中吉・・・」。

−何か腑に落ちないというか中途半端な(笑)。

K:「でもやっぱりこんなもんだよなぁ」って。大吉でも凶でもなく中吉だよなあ・・・みたいな。まぁでも豊田(利晃)監督は『青い春』とか『9souls』を撮った方なので、映像的にはすごくキレイですよね。

−豊田監督の印象はどうでした?

K:アーティストの人っていうか。豊田さんも2年くらい引きこもってたって話をしてましたけどね。誰とも口を利かなかった時期があったとか、そんな話はしましたね。なんか俺のことけっこう詳しくて、「三池(崇史)さんとか好きなんでしょ?」って言われて、何で知ってるんだろう?と思いながら「そうですね。けっこう好きですね」とか言ったら「でも俺、あんまり好きじゃないんだよな」って(笑)。「えぇ〜!?」って。

−じゃあ聞かないでよっていう(笑)。

K:でも面白い人だった。

−出来上がった映像は満足できるものに?

K:映像的にもすごくキレイで。日本の今のシーンでどういう風に受け入れられるか分からないけれども、自分で言うのも何なんですけどすごくクオリティが高いモノなんじゃないかなって。今売れまくってるファッキン野郎どもよりはクオリティはすごく高いし(笑)。

−ビデオクリップ集が発売されるという話を聞いたんですが?

K:それはね、4月のライヴを撮って、それプラスPV&特典映像でインタビューとか普段の風景とか収録しようかなと。あと3月か4月くらいにレコーディングでアメリカ行ってデイヴ・フリッドマン(プロデューサー。from マーキュリー・レヴ)とやるんで、その時の映像とかも入れようかなと思ってるけどね。

−それには過去のPVとかも入ってるんですか?

K:そうっすね。今までのを一応全部入れたいなと思ってて、そういう映像集を出したいなと思ってるけどね。僕からしたらワンコインで出したいなと思ってるんだけど、ワンコインDVD(笑)。

−では次の曲『FLOWERS』ですが、“青になって”という言葉がすごく印象的だったんですが?

K:もう青い気持ちですよね。ティーンエイジャーの、拳振り上げちゃうような。

−(笑)。前回“猿”という言葉がいっぱい出てきましたが、この曲の“犬”というキーワード。これを見た時に松尾スズキさんのエッセイにあった、「人は答えを求める動物である」というテーマに対した「いらねえ、答えなんか。犬でいいから上品でありたい」という言葉を思い出しました。

K:あまり人生で犬を考えたことはないけど(笑)。でも松尾さんの言ってることはすごく分かる。僕、最近銀杏BOYZ買って、その中にあった『犬人間』という曲を聴いた時に、「こういうことなのかな」って思って。犬ってそのままじゃないですか。もの凄く醜いしさ、よだれ垂らして盛りが来たらやって、みたいな。それが良いのかも分からないけれどさ、「・・・けれども」みたいなね。「I wanna singing」って歌っているのはそういうちょっと自嘲的になりながらも歌うような、そういう気持ちではいますよね。

−自分はそういう正直さみたいなものを追求して生きるれば生きるほど、世界っていうは空虚になっていく思うんですが、“空っぽのコンドーム”とか“空っぽの君でいい”という歌詞にはそうした想いが象徴されてますか?

K:そうですね。もともと虚無感って俺もすごく持ってて。そういう気持ちと戦ってきた中で導き出した結果−まぁ今もその渦中にいるのかもしれないけど−が『LOST IN THE AIR』とか『FLOWERS』から出てる。それでも「生きよう」とか「コミュニケーションとりたい」「あなたに聴いて欲しい」っていう気持ちがあるから、そういう気持ちで苦しんでる人達の胸は捕らえて離しませんよっていう気持ちはありますよね。同じように戦ってるからさ。

−「ここにいるよ」的な?

K:そうそう。「I'm here」みたいな。そんな強さも無いけど(笑)。

−「いるから、来たければ来れば?」くらいの。

K:「いるけど・・・そんなに来ないでくれ」みたいな(笑)。好きなら手を伸ばして欲しいって気持ちはやっぱりあるよね。

−ART-SCHOOLのファンの方は狂信的と言うと言葉が悪いですけど、メジャーから一度離れた時もあまり減らなかったというイメージがあって。さっきの捕らえて離さないじゃないですけど、常に木下さんの気持ちに共感して皆が付いて行ってるっていう、シーンや背景など関係なく好きになってるファンが多いバンドだと思うんですが?

K:僕もそれはすごく思ってた。しかもメンバーが変わって東芝辞めてってさ、普通だったら済し崩し的にどんどん集客も減っていくよね。そこがセールス的にもあまり変わらなかったから。「あれ?これは良いな」と思って。そういうファンの人がいたから次も考えられたし、アルバムも1年越しのリクエストでデイヴ・フリッドマンとやれる事になって、それをまたメジャーから出せるっていう。だからそういう面でもね、すごくラッキー・・・ラッキーとは思わないけど。

−運だけではないですからね。それは木下さんの今までやってきた結果ですよね。

K:そうだね。まぁでも本人的にはもっと・・・、自分は昔、器用だと思ってましたからね。恐ろしいことに(笑)。

−アメリカに行くというのは、昨年の7月のインタビューの時に「どうなるか分からない」みたいな話でしたが、それの振替的な?

K:それの形が見えたんですよね。楽しみですよ。3月、4月くらいにシングル、5月にアルバム録りに行こうかなって、そういう風に考えてますね。

−復活1発目はシングルで?

K:そう。『あと10秒で』っていう曲をシングルカットしようとしてて。

−『あと10秒で』はライヴで何回かやられてますよね?

K:あの曲ポップだしね。デイヴとやったらと合うかな、と思ったんで。

−『LOST IN THE AIR』に入ってなかったのでどうしたのかな?と思ってて。

K:そうそう、じらしで。「もう4ヶ月くらい待てば?出しますから」みたいな(笑)。

−次の曲『羽根』はやっぱり“小三で終わった”っていう言葉、まあこれまでにも何回も聞かれたことだと思うんですけど(笑)。『スカーレット』収録の『1995』では「高校2年生の時の自分だ」と話をされてましたけど、今回この“小三で終わった”っていうのも具体的に何が?・・・っていうのもあれなんですけど・・・。

(一同笑)

−その中で“羽根なんて腐った”という歌詞が出てきます。今回の『LOST IN THE AIR』に収録された楽曲の中には“天使”という言葉もよく出てきますが、木下さんにとって“天使”はどういう存在ですか?

K:イノセンスを象徴するものだったり、単純に自分の人生を救ってくれるような女性だったり、そういうイメージかな。『LOST IN THE AIR』に“新宿で天使が轢かれてたんです”とか出てくるけど(笑)。とにかく『羽根』に関しては・・・、僕、小ニくらいまでものすごい明るかったんですよ。家で絵を描いたりとかはしてたんだけれど、根本的にはすごく明るくていつもクラスの真ん中にいるような人だったのね。でも小三で音楽を好きになって、ちょうどその頃家庭も崩壊し始めてて、「小三で終わった」って思っちゃいましたね。小三〜四くらいからダークになっていって、「今までの明るい自分っていうのは違うのかな」っていう気持ちになりましたね。

−それはかなり早熟というか、やっぱり周囲の、同年代の人と合わなくなっちゃいますよね。

K:そう。だからね、常に本当の自分を押し殺して。いつも家で音楽聴いて解放してましたけどね。あと宇宙とか宗教の本とか読んだりね、「なんで自分は生きなきゃいけないんだろう?」と。生きる理由とかそういうのも探してたね、小学校の時は。

−それにしても小学校三年の時から所謂音楽を聴くっていうのも相当早いですよね。周りの人とかはそれこそ光GENJIとかそういう世界ですよね?

K:そういう世界だった。そこでスレイヤーとか聴いてたから(笑)。小三の時に本気でスレイヤー聴いてて、「自分ヤバイな」とか思って。

−俺、スレイヤー聴いたの中三くらいですよ。

K:分かる分かる。お兄ちゃんの影響で聴き始めたんだけれども、一発で好きになってね。『シーズンズ・イン・ジ・アビス』とか『レイン・イン・ブラッド』とかそういうの聴いてた。『エンジェル・オブ・デス』っていう曲とか好きだったんだよね。メタリカも好きだったな、すごく。

−木下さんが中学・高校くらいの時ってヘヴィメタとかハードロックが流行ったと思うんですけども、それより前から聴いてた?

K:そうだね。俺のメタル時代は中ニで終わりましたけどね。でもその頃とかね、MR.BIGとか聴いてたバカ達が・・・。

−俺、そこに入るなぁ(笑)。

K:勿論俺も小学校の頃にMR.BIGをちょっと聴いてたよ(笑)。でもまぁ音楽をもっといっぱい聴いちゃうと「うーん・・・」ってちょっと思っちゃうところがあって。だから(周囲とは)常に距離がありましたね。

−以前木下さんは「ロックって“ガッツンガッツン行けばいいじゃない”みたいな諦めがある」と仰ってましたが、『羽根』はそういう曲なんだと思います。この曲もライヴとかで盛り上がって欲しいなっていう?

K:今はもっと普通に心の底から反応してくれれば良いと思ってますね。ちょっと偽善的なんだけど、前よりも包み込みたいなっていう気持ちはありますね。そういう気持ちに向かっていきたいなって思ってるからね。

−そういう感じは『スカーレット』よりも『LOST IN THE AIR』の方が全体的に出てますよね。

K:だからより自分も生々しい言葉で書けたと思うし、より素の自分を見せてそこで受け入れられたりとか広がったりすれば良いなと思ってて。だから自分の見たくない部分しか見てなかったし。女の子ともいろいろあったし、本当にキツかったね・・・。だけど出てくる言葉もまたキツイからね(笑)。でもね、ちゃんとスッキリしたっていうか。

−形として完成させたことでスッキリと解放された?

K:うん。今はまだそんなに冷静に見られないけどね。なるべく冷静には見てるつもりなんだけど、すごい愛しくなるような詞だなという気はしますけどね。『羽根』とかはそうだね。

−『刺青』は聴く方としてはどうしても『TARANTULA』と繋がってしまう部分があると思うんですが?

K:そうだね。この曲は『スカーレット』に本当にリンクしてる曲だと思う。ああいう穏やかなノスタルジー的な、本当に爽やかでメランコリーみたいな。俺もこの曲は好きだよ、なんか切ないですよね。甘く切ない。

−この曲を初めて聴いた時に朝焼けの海の情景がパッと浮かんできたんですよ。で、インターネット(fm-yokohamaのサイト)に固定カメラが撮影してる海の映像を生中継している所があって、夜中にそれを見ながら聴くっていうのが自分の『刺青』の聴き方なんですよ(笑)。

真っ暗だった海が朝焼けになった瞬間とかその光景と音楽とが融合して、本当に泣きそうになったりとか。

K:分かる気がする。なんかね、ほろ苦いよね・・・、ほろ苦いって(笑)。でもね、俺が見た情景を書いたから、同じように感じてくれれば良いなって思う。もう決して手に入らないんだけれども、やっぱり懐かしい気持ちっていうのがあって、そういうものって実際普遍的だったりするよね。大切だった人との別れがあっても、それが絶望的な気持ちのまま残るんじゃなくて、穏やかで切ない1枚の絵として自分の中に残ってて。それを見せられたかなって思ってる。

−次の『I CAN'T TOUCH YOU』の“太陽はもう / 見たく無いさ”というフレーズがありますが、太陽とか光と影、っていうのは木下さんの中でひとつのテーマになってると思うんですけども、光や太陽というのはどういうイメージなんですか?

K:まあ太陽って言ったら、もうジャンルで言うと青春パンクとか・・・。でもね、最近は夜とかの方が好きで、暗いと星がキレイに見えたりするじゃん。そういうのがすごく好きで、ひっそりとした、でもちゃんとくっきりハッキリ見えるもの。太陽みたいにあれだけ眩しいと他のものがあまり見えないよね。でも闇の中にいるとそういう光がちゃんと見えるから。

−ひとつひとつがより鮮明に出てくる?

K:うん、そういうものなのかなって気がしてて。だから「太陽とかもう見たくねぇよ」っていう気持ちを歌った曲ですけどね。この曲に関しては前からあったんで、けっこうネガティブですね。

−この曲は静と動というか冷たさと温かさのようなメリハリがすごくある曲だと思います。今回は一貫してアルバム全体的にメリハリが強く出た、人間性みたいなモノが色濃い一枚だなと思ったんですが?

K:転がりまくってるバンドですからね。正直にやったらそうなっちゃったみたいな感じ(笑)。

−今の木下さんがすごい詰まってるっていう・・・。

K:そうだね。だから今回はまだそんなに冷静に見れないけども、すごく好きなものが出来たなという気持ちはあるよね。あまり飽きないから。飽きないものって良いなと思ってて、飽きないものってけっこう不完全なんだよね。完成されたものとかツルッとしたものにあまり興味は無いから。

−不完全なものの方が、受け手が隙間を補完していける分、どんどん入り込めますよね。

K:だから今回の詞って大人の人が聴けるようなノリになったかな。大人っていうか俺ももう26歳ですけどね、尾崎豊が死んだ歳。まぁ別に興味は無いんだけども(笑)。まぁ10代がどう反応するかわからないけども、基本的にロックの良いところってティーンエイジャーの胸を熱くさせるものだと思うんですよ、良くも悪くも。だから今回は自分の二面性を極めたかなって満足してますよ。『I CAN'T TOUCH YOU』にしてもそうだけど。

−最後の曲『PERFECT』、この曲はART-SCHOOLの中では珍しく戸高さんが弾かれてるピアノフレーズがフィーチャーされた楽曲だと思うんですが、これはどういう状態から出来上がった曲なんですか?

K:最初は入れてなかったんだけど、「ピアノ入れたら良いんじゃねぇか」って言ってて、フレーズを決めて戸高君に弾いてもらったら映像が浮かんでくるような感じになって。やっぱり映像が浮かんでくるようなものってすごく好きなんで、「これにしよう!」みたいな気持ちになりましたね。

−映画のエンディング的な、最後のエンドロールと一緒に流れてきたらすごく良いなという風に感じたんですが?

K:そうですね。キレイな曲が何とも言えない。

−この曲の詞もメッセージがすごくストレートなんですけど、“普通すぎる人生を”という言葉にちょっとシニカルなものというか、「ん?」っと引っ掛かるモノがあったんですが?

K:(笑)。まあ“普通すぎる人生を”送ってみたかったなとは思うんだけどね。まぁ自分のことも書いたんだけども、俺はまだ音楽やってるから良いけど報われない人っていうかね、コミュニケートを求めてる人とか引きこもってる人とか、そこにいるような人達の視点でも書いてみようかなっていう気持ちになって。いやらしいですけどそこで嘘が無ければ良いかなと思って。

−というわけで一通り解説してもらいましたが、どうしてもこのアルバムはタイトル曲の『LOST IN THE AIR』がすごく前に出てるというか、この曲のインパクトがすごく強かったんですけども、木下さんにもそういった手応えはありましたか?

K:長いですからね(笑)。今までのART-SCHOOLの楽曲の中で5分を越えた曲は殆ど無いし、タイトルトラックにしたことも無くて。何だろうね、もう何でも出来るっていうか。より「明日死んでも良いかな」っていう気持ちがすごく強くなってて、守るものが無い状態の人の方がキレイだなって、そういう気持ちなんだよね。人間的に成長したいってずっと思ってるから、だからよりそこの境地に近づいていきたいなと。

−毎回聴いてますけど、『LOST IN THE AIR』はどんな時に聴いてもらいたい?

K:出来ればね、恋人とのセックスの前とか「ちょっと良いな」と思う女を家に連れて来た時にかけると引くんじゃないかな、「何これ?」って(笑)。

−「“空っぽのコンドーム”?」とか(笑)。

K:まあ家で1人で聴いて欲しい、皆で楽しめる曲じゃないからね、絶対に。レディオヘッドのトム・ヨークが『ベンズ』を出した時に、「クラブで激しく踊って帰ってきた人が、家でリラックスしたい時に聴いてくれてるんだ」って言ってて。それって良いな、俺もそういうリラックスするようなアルバムが作りたいなと思って。

−虚勢とか見栄が剥ぎ取られた生の人間という部分で聴いてもらえるような?

K:そうだね。そういうリラックスしたい時とか、ここに本当の気持ちがあるとか、そこには嘘が無いから。

−この後シングル、アルバムとなっていくと思うんですけど、それはどんな作品になりますか?まぁ先ほど『あと10秒で』がシングルに決まったということですが?

K:『あと10秒で』の気持ち、何だろうね・・・。光のアルバムを見せたいなとは思っているんだ。今までネガティブなものしか出してこなかったから。ただそれは俺が作るものだから、100%の光じゃないとは思うんだよね。まあ包み込めるようなもの、土砂降りの後の一瞬だけ見える澄んだ空とか、そういうイメージかな。

−傷ついた人ほど他人に優しく出来る、というような感覚に近い?

K:そうだね。詞的にはもっといっちゃうと思うけど、ただアルバムから受けるイメージとしてそういうものになれば良いと思ってね。そこに自分が全てを注いでいこうと、それが作れたら良いなと思ってて。

−シングルからメジャーシーンに戻っていくという事で、これはやっぱりもう一度引っ掻き回して欲しいなっていう期待がすごくあるんですが、「ちょっとやったろうかな」という気持ちはありますか?

K:無い無い無い。そこは無ぇな。だってさ、二度目のデビューですよ(笑)。

−でも期待されてる方はたくさんいると思うんですけども。

K:そういう期待をすり抜けていこうかなと思ってる(笑)。もちろん期待されたいとは思うけれども、ただ自分でいたいと思うだけだから。

−変わるとかなく今まで通りに?

K:そうだね。別に前とかもそんなことは無かったからね。ただ単に自分でいたいと思ってただけだから。ただよりポピュラリティのあるものっつーか、光の方のものを作りたいとは思ってるけど、それは聴く人が判断すれば良いからね。

−それでは今後のライヴについても伺いたいのですが、明後日(1月23日)から待望のツアー『LOST IN THE AIR TOUR 2005』が始まりますけども、ツアー最終日はSHIBUYA-AXです。AXでのライヴは初ということですが、そこに向けての気持ちとか意気込みはありますか?

K:まぁもっと早い段階でAXでやろうとは思ってたんだけど、脱退とかあって飛ばしちゃったんで、「やっとAXか」っていう気持ちはあるよね。でもより真実味があるかなとは思うよね、ぽっと出の子たちがやるAXとは訳が違うっていうか。紆余曲折があって辿り着いたAXというのは、観る方としてもグッと来るよね。よりリアリティを感じてくれれば良いなと。

−良し悪しは別として、そういうのがあったからこそ観る方としてもより観に行きたくなる感覚、より一緒になれる気持ちがどんどん膨らんでいきますよね。

K:嘘が無い状態ってやっぱりキレイなんですよね。そういうものを見せたいなと思うし、もっとこのままの状態で大きくなっていければ素敵だなと思ってるんで。

−では最後になりますが、読者の皆さんに一言メッセージをお願いします。

K:薄着で来て欲しいなと。

−あ、ライヴに?(笑)まぁでもART-SCHOOLのライヴで厚着の人はあまり見たことないですけどね。

K:特に女の人には薄着で出来るだけ前の方に来てくれないかなぁ。

−「見える位置に居てくれねぇかなあ」って?(笑)

Interviewer:杉岡祐樹