昨年5月、渋谷の小さなライブハウスで衝撃的なライブを観た。最高に心地良い音楽に身を委ねていたら「よければ何でもええから踊ってくれや」と連呼しながら客席を練り歩き、オーディエンスの頭を片っ端から撫でていく男の姿。他のメンバーはそれを嬉しそうに見つめながらブルージィな音色を弾く。なんなんだ!?この光景は。あれから1年強。彼らは自身の人生を乗せたアルバムで、今度は僕らの心の中を練り歩く。そのストーリーを本人たちに語ってもらった。
−−2008年5月16日、東京での初ワンマンライブ【cutman-booche 2008 TOUR-Permanents Release! boosoul of spring-】についてお話を聞きたいんですが、あの日は本当に心を揺れぶられっぱなしで。自分たちにとっても特別な日になっていますか?
ウリョン(vo,g):イベント出演とかもあって、3日連続でライブっていう忙しい状況ではあったんですけど、初めての東京でのワンマンというところで気合いは入りまくってました。不器用ながらもやりきった感じですね。
−−酒に酔ってるように見えてしまうくらい凄いテンションで歌っていたウリョンさんと、それを嬉しそうに見つめながら演奏をしていた林さんと小宮山さんの姿が忘れられません。めちゃくちゃ気持ちが溢れてましたよね?
ウリョン:いや、お酒は飲んでいなかったんですけどね(笑)、緊張とかもあって気持ちが舞い上がってたんですよ。みんなちゃんと聴いてくれて、返ってくるモノがデカかったんで、どんどんテンションが上がっていった。お客さんのパワーを直で返したいタイプなんで。
林周作(b):あの日はガムシャラでした。でもそれ以降のライブで「あのとき、初めてcutman-boocheのライブを観ました」とか、先日出演した【THE GREENROOM FESTIVAL】でも「待ってましたよ!あの日のワンマン以来なんですよ」みたいな声を聞いたし。良いライブをやったから、その後も僕らのことを気に掛けてくれるようになったんだなって思って。
−−客席に降りて片っ端からファンの頭を撫でまくってたじゃないですか?あれはよくやるの?
ウリョン:いや、あのときだけです。あれは何やったんでしょうね(笑)? 最近は客席に降りなくなったんですけど、あの頃はひたすらパッション!だったんで。「俺が行くから、おまえらも来い」みたいな感じはあったのかな。やっぱりお金払って観に来てくれてるんだったら「損すんなよ」って思うんですよ。自分もライブを観に行って損するのは嫌だからダイブしたりしていたし。そういうテンションがリスナーの頃からあったんで……まぁでも「あのときはすみません」みたいな(笑)。でも楽しかった。
−−あと、東京をずっと好きになれなかったけど「夢は叶うぞ。やるだけやったら叶うぞ!頑張っていきましょうや!俺も頑張るわ!東京で言えて良かった」っていう言葉がね、とても響きまして。
ウリョン:大阪も人はいっぱいいるんですけど、密集する場所は限られてるんですよ。でも東京はどこでも人がたくさんいる。電車乗っても「こんなに混むんか!?」って思うし。それに戸惑いまくったんですよ。別に「悪い人がおっぱいおる」とかじゃなくて、漠然と苦手だった。
林周作:大阪でもそんなに人がいっぱいおるところに自分から向かっていくような人間じゃなかったんで。
小宮山純平(dr):生活しにくい街だなって思いましたね。物価も高いし、お金も掛かるし。でもよく東京に来るようになって、最近は半月ぐらい滞在していたりするんですけど、そうやって住んでみると「良いところいっぱいあるな」って思ったり、人だって結構優しい人多いし。だからイメージで冷たいと思っていたんですよ。
ウリョン:最近は普通に東京で遊べるようになったから、あのときよりは全然東京へのイメージは変わってる。「住めば都やな」っていう感覚になったかもしれない。
−−今日は初登場なので、バンドのストーリーについても少し触れさせて頂きたいんですが、そもそもこの3人はどのような流れで一緒にバンドをやるようになったの?
ウリョン:結構あっさりした感じなんですけど、僕が楽器屋さんでメンバー募集をしてて、電話番号を貼っておいて、それに電話してきてくれたのが小宮山と林で。それまでいろんな人に会ってきたんですけど、僕の話をちゃんと聞いてくれたのがこの2人だけやった。で、逆にこの2人もいっぱいメンバー募集で人と会ってたんですけど話にならなかったみたいで。「俺はこれをやりたいんだ!」って押しつけてくる人ばっかで。で、お互いに良い人を探してるときに出逢って、最初は飲みに行く仲間みたいな感じだったんですけど。音楽する前にどういう人かもっと知りたいというか、もう1回バンドメンバーと友達みたいになりたいと思っていて。だから「どんな風に音楽をしていきたいか?」って話し合ったり、好きなアーティストのCDを交換したり、そうやって関係を育んでいきながら、2002年5月に結成するんです。「こいつらやったら、一緒に行ける」と思って。
小宮山純平:それで僕の家で3曲を2日ぐらい掛けて録音して。そのCD-Rを100枚ぐらい作って街にバラ撒いたんですよ。だから最初からスタジオに入ったりはしなかった。で、まずはライブをしていかんとって。
ウリョン:俺ら、初めは演奏下手やったけど、本気でやるんやったら下手も上手いもあんまりないなと思って。プロの人でも全員が全員べらぼうに上手い訳じゃなくて、オリジナルっていうか、自分らの個性を出した音楽をやってる。だから俺らも下手なりに「俺らの曲は誰にもマネできへん」っていう気持ちでライブやって。その内にとあるクラブと出逢って、それをきっかけにイベントに出たらコンピレーションの話が来て。
Interviewer:平賀哲雄
Page Design:梅原直也