本文で本人たちも語ってくれていますが、GANGA ZUMBAのニューアルバム『UM』は、こんな作品を他に作れる奴がいたら連れてきてほしいと思うぐらいの、ラテンもロックもポップスも民謡もあらゆる音楽が混在していながら、一本の道筋を照らしてくれる、とんでもない一枚。そしてそこに込められたメッセージがまた真っ直ぐで、体だけじゃなく心も躍らされてしまうという・・・とにかく画期的で有意義な作品となっている。なぜそんな作品を生み出すことが出来たのか?その答えは至ってシンプル、音楽愛と人間愛、そしてそれが生み出す夢にありました。宮沢和史と高野寛が語ります。
−−まずはGANGA ZUMBA初のフルアルバム『UM』、完成おめでとうございます!初のフルアルバムを完成させることができた今の率直な心境を聴かせてもらってもいいですか?
高野寛:早くみんなに聴いてほしいです。
宮沢和史:去年の冬に結成してから一年経ってるんだけど、その間に二枚のミニアルバムを出してるから、最初のGANGA ZUMBAの作品というわけじゃないんだけどね、決意も新たにやっと始まる感じがしてます。そういう感慨がありますね。あと、一年間じっくり作ってきたんで、捨て曲がないというか、一曲一曲がすごくしっかりしてるし、音楽もメッセージも。
−−あの、これはお世辞でもおべっかでもなくてですね、このアルバムから僕はジョン・レノンの『イマジン』やマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン?』にも似たスピリチュアルを感じたんですよ。臆することなく、世界を良い方向に向かわせようとしている姿勢が感じ取れたんですが、その意識はGANGA ZUMBAの理念としてあるモノだったりしますか?
高野寛:嬉しいですね、そう言ってもらえると。僕らの音楽の大きなふたつの柱は、グルーヴとメッセージだと思っていて、それを両立させるような作品がひとつ形にできたかなっていうのは、自分たちでも思っています。普通ね、わりと言葉に重点がある音楽とサウンドに重点がある音楽って、どちらかに比重があったりするんだけど、GANGA ZUMBAのみんなの力が合わさると、こういう言葉も音も全く同じ力でもって組み合わさって音楽ができるんですよね。
−−グルーヴとメッセージというふたつの柱、それを同じ力でもって両立させる音楽性というのは、GANGA ZUMBAをやる中で徐々に固まっていったモノなんですか?
宮沢和史:いや、最初からそうでしたよ、頭の中では。僕のソロのヨーロッパツアーや中南米ツアーに同行してくれたメンバーがそのままGANGA ZUMBAになっているわけですけど、海外でライブやるときにもいろんなメッセージを伝えるわけですよ。『島唄』を歌うときには「60数年前に戦争があって、そのためにたくさんの人が亡くなられた。だから僕はこの歌を書いて、二度と戦争が起きないようにしたいと思った」と伝えたりね。ずっと僕、そして僕らの音楽は、やっぱりメッセージを伝えるのが主で、特にここ数年がそうだったんですけど。それがGANGA ZUMBAになったとき、僕自身、シリアスなことをシリアスな顔をしてシリアスに届けても、それは楽しいかどうか?っていうところをすごく感じだしてきてね。
僕、ホコ天(歩行者天国)で歌っててデビューしたんですけど、あの頃って何も考えずにやっちゃったところがあって。メッセージ的なこととフィジカルな部分をどんどん結びつけて。なんか、その頃のことも思い出しながら、もっとフィジカルに楽しめて、汗もかいて、みんなで一体感を味わって、ライブが終わって家に帰るときに「なんか、あの一言がずっと残るなぁ」って引きずる、ライブの後にちょっと方向が1度ぐらい変わる、そういうことをしたいなと思ったんです。高野くんが今言ったみたいな、エンタテインメントとメッセージ。まぁ水と油みたいな関係かも知れないけど、本当は接点が絶対あって、そこがGANGA ZUMBAの目指すところだろうと。
で、このアルバム『UM』の中で『Rainbow Warriors』っていう曲が特典CDとして入ってるんですけど、ライブバージョンで。あの曲が僕にとって、GANGA ZUMBAの一員として初めて書いた曲なんですけど、あれこそが音楽とメッセージの融合っていうのにトライした最初の曲。レコーディングも初期の頃にやったんですけど、あれで僕の中でGANGA ZUMBAのイメージが固まりましたね。
−−ただそういった理念を持ちながら活動されている人にとって、それはアーティストに限らずなんですけど、どんなに人々と愛や幸福感を分かち合える瞬間があったとしても、次の瞬間、テレビを付ければ、それとは真逆の世界が広がってることが多々あって、そのギャップに言いようのない虚しさや苛立ちを感じるのが常だと思うんですが。
高野寛:それは、きっと昔からそうだと思うんですけどね。もしかしたら地球に人間が現れたときから、社会が生まれたときからずっとかもしれないし。でも最近は随分変わってきたなと思いますけどね。バブルの頃とかは、いろんな問題があってもわりと目を逸らして生きていくことができたんだけど、今はもうみんなが問題を直視しないと、特に大人はね、その問題を見ないと、未来がないぐらいの切羽詰まったところに来てると思うんですよ。その中で僕らがやってることは、ごく自然なことだと思うし、もしかしたらメッセージなんていうのは、あたりまえのことっていうか。みんなが何かを心に刻んでいかないといけない時代なのかなって、思いますけどね。だから多分、今こうやって僕らが話している春の世の中と、今年の夏・秋ぐらいの世の中って、また随分変わっていってるような気もするし。それぐらいのスピード感で今、世の中はどんどん変化しているような気がしますね。
GANGA ZUMBAも一年前からその辺はずっとブレないで来てるから、僕らの作品が秋になって古く感じることは多分ないと思います。さっき話に出た『Rainbow Warriors』っていう曲は、MIYAがGANGA ZUMBAで一番最初に書いた曲で、一番最初のライブテイクなんだけど、それが今回のアルバム『UM』の一番最後に入っていても違和感なく繋がっているっていうのが、象徴的だと思うんですけど。
−−その『Rainbow Warriors』は、どんな心境の中で生まれた曲なんでしょうか?
高野寛:MISIAに本をもらったんだよね。
宮沢和史:そうそう、『虹の戦士』っていう本をもらいましてね。インディオの教えなんですけど、人間のせいで自然界が破滅へと向かうときに“虹の戦士”が現れて、助けてくれる。地球、母なる大地を助けてくれる。そういう伝えがインディオの中にあると。でも、そんな者は来るわけないんだから、要するにそれを語り継ぐ子供たちに「君たちがそうなんだよ」「あなたたちが自分で守っていくんだよ」「それを次の世代へ繋いでいくんだよ」って伝えたいんだと思うわけですよ、僕はね。それはカッコイイなぁと思って。このまま行けば人間も未来も、高野くんが言ったみたいに危ういですよね。で、誰も救ってくれないし。極端に言っちゃえば、人間が居なくなれば救われるっていうことになったとしたら、悲しいですしね。自分たちで曲げてしまったんだったら、直さなきゃいけない責任があるしとか、その本を読んでいろいろ考えたんです。
で、俺たちも大それた事はできないけど、何か音楽を使って、自分達の心を少しだけ変えたり、さっき言った、ライブをやるごとにみんなに引っ掛かる何かを残していったり。“虹の戦士”になるなんておこがましいことは言えないけど、そうありたいなって。そういうことをちゃんと伝えられるグループになりたいなと思って、『Rainbow Warriors』を作ったんですよ。
高野寛:今日、今まで喋ってきたことを、GANGA ZUMBAを知らない人が読んだら、難しいこととか説教っぽいことに聞こえるかもしれないんだけど、その点で誤解してほしくないのは、音楽的には本当に難しくない。だから最初は、頭を使わないで聴いてほしいんですよ。体でね。それは、CDでもライブでもいいんだけど、聴いてもらったあとに何かを残してほしい。それが僕らの想いであって、やっぱり音楽は基本的に楽しむモノだし、その音楽を楽しんでいるときに感じられる何かっていうのが重要だから。本当は最初にこうやっていろんなことを言ってしまうのは、あんまり良くないかなって思ったりもするんだけど、それだけは強調しておきたいですね。
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