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−デビューしてからしばらく経つけど、この新しい環境にかなり慣れてきたんじゃないですか?

熊木杏里(以下K):そうですね、慣れてきましたね。ただ、慣れたら慣れたで自分の中で問題が出てきて・・・。

−どんな問題?

K:そうですねぇ。ラジオとかやってると人に合わせて喋るのが上手くなってくるし、ただ、それは自分にとって良いことか分からない。喋りすぎるのも好きじゃないから・・・

−「窓絵」が2月に出て、あれから5ヶ月ぐらい経って、どんな変化が出てきました?環境とか心境とか。

K:環境はそんなに変わらないんですけど、「歌やるぞ!」って言った時とかは家族がすごい優しくなった・・・とか(笑)。

−(笑)。なんで?

K:邪魔をしないようにとか思ったんですかね?

−あぁ、受験シーズンの息子がいる家みたいな。

K:そうそう、ピリピリとかはしないんですけど。

−(笑)。

K:ただ、心境はそんなに変わんないかな・・・歌を作ってるのは前からだし。

−「窓絵」のリリースから今回の「咲かずとて」のリリースの間、具体的にどういう活動をしてたの?作詞作曲の日々?

K:うん、作詞作曲の日々・・・で、あとはラジオが結構苦戦してたから、喋ることとか。

−あぁ、最初の頃?

K:うんうん。最初は何を話せばいいのやらって感じで。一人喋りだから、誰かに喋りかけてる風にも最初上手くできないし。

−ゲストが来たら来たで。

K:そう・・・色んなこと気にしすぎて喋ったりするんですよ。ただ、最近は「いいじゃん楽しめば!」っていうのになってきて。

−自分以外のアーティストに会って話を聞いたりしていると、刺激とか影響とかって受けたりする?

K:ありますね。似たような人とかもやっぱりいるんだけど、本当にS極とN極みたいな対照的な人もいるから、ふーんって。こういう人もいるんだねって(笑)。でもやっぱ、みんな自信を持って言ってるから、そういうところはすごいと思った。自分は・・・あんまり自信を持って「自分の音楽ってこうなんです!」とか言えないから。すごいなって。

−一番印象に残ってるアーティストとかいます?

K:香奈さん。「香奈は森に住んでるの」みたいな、そういう感じの・・・だけど同じ歳なのにすごいしっかりしてて。ただ、テンポがずれてて、どこで私は喋ればいいんですか!?っていうのもあったし、いろいろ。

−(笑)。間がね。

K:色んな面でインパクトが強かったですね。

−あと、『HOT TUNE JEIRO』のサイトの中で写真とかも最近載せたりしてますけど、元々写真は好きなの?

K:いや・・・。

−結構ノリ的にやってる感じ(笑)?

K:(笑)。ただ、だんだん好きにはなってます。角度にもこだわりだしたりして。

−そういった音楽や詞とはまた別の部分で、今後チャレンジしてみたい事とかってある?

K:音楽と別でですか?

 アメリカで旅客機がビルに突っ込んで多くの人々が死んでゆく瞬間をテレビで見たって、次の瞬間、友達からの遊びの誘いに笑顔で答えている自分がいる。それは仕方がないことなのかもしれない。しかし、熊木杏里という一人の女の子は、それを受け入れることができないでいる。多くの人々が死んでいくこと以上に、その瞬間的に忘れることの出来る人間の性質に嫌悪感を抱いてしまう。デビュー作「窓絵」からも充分に彼女の繊細さに気が付くことはできたが、本作「咲かずとて」に収録されている3曲からは、「窓絵」以上に彼女の葛藤が強く打ち出されている気がする。もっと楽な生き方、もっと別の人生の選択肢もあったはずなのに、今作から感じることのできる彼女は、もうほとんどの人々が「それは仕方ない」と諦めてきた冒頭のような問題に対して激しく葛藤している。“あなたを愛せない私はどこへも行けない”と歌った「咲かずとて」、井上陽水の「傘がない」の持っていた世界観を彷彿させる「二色の奏で」(この楽曲こそ、人生に対する現時点での彼女の答えが歌われているのかもしれない)、“声のない歌を囁いて私は今どこに行くの?”と歌った「まよい星」・・・この3曲からは、ヘラヘラと笑うことを許せない彼女の葛藤を感じることができるはずだ。しかし、彼女は何故にそこまで思い詰めるのか・・・?

対談

シンガーソングライター:熊木杏里
×
ライター:Tetsuo Hiraga

2nd SINGLE
「咲かずとて」

1.咲かずとて
2.二色の奏で
3.まよい星
4.咲かずとて〜カラオケ〜
5.二色の奏で〜カラオケ〜

2002.8.21 in STORES

2nd SINGLE/VPCC82167/
\1,200(税込み)

(C) 2003 VAP
http://www.vap.co.jp/anrico/index.html

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こちらまで


−うん。

K:いやぁー、そんなには無いかな。音楽に関係してきちゃう。

−資料見たら、『一人暮らし』とか書いてあったけど(笑)。

K:一人暮らしはしたいですね、そういえば。

−やっぱり憧れるものがあるんですか?

K:ありますね!一人の空間が。弟と部屋半分に仕切ってるんですよ、カーテンで。

−なかなか自分の世界を作りづらいと。

K:なかなか。なので、夜になってしまうという。

−あー、曲とか詞はやっぱ家で作るんだ。

K:家でやりますね。

−弟が眠りについた頃。

K:ついた頃。

−そんな状況下で生み出したセカンドマキシシングル「咲かずとて」、聴かせていただきました!

K:ありがとうございます。

−自分からしても結構納得のいく出来だったんじゃないですか?自信作っていうか。

K:自信かぁ・・・。でも、これはこれで、っていうのはあるかな。ただちょっと『こっぱずかしい感』はあるんですけど。

−え、どういった部分が?結構さらけ出し過ぎちゃった感があるってこと?

K:ありふれてるじゃないですけど、あまり自分としては使いたくない言葉とかをすごい使ってるし。「窓絵」の時に、「時計」(デビューマキシシングル「窓絵」収録曲)しか恋愛の歌は無いと思います!とか言っておきながら、2枚目でドカンと歌っちゃってる感じがこっぱずかしい。

−(笑)。しかも1曲目みたいな。

K:ただ、次にこういうのが来るっていうみんなの予想をブチ壊したような気持ちもあるし。

−「咲かずとて」という曲自体は、どういう思いを込めて作ったの?

K:「咲かずとて」は、その言葉から色々考えられるようにしたいと思って作りました。

−この曲の中で“人は求めないほうが、幸せなのだろうか”っていうフレーズが出てきますけど、やっぱりこういうテーマって何か形にしないと消化できなかったりしますよね?

K:そうですね。

−それで答えを見つけたり。

K:はい、はい、はい。

−だから気がついたら最後こういう、こういうことなんだなっていうことで自分で納得するみたいな。

K:ありますよね、それは。

−この「咲かずとて」の場合は、求めないほうが幸せなのかもしれないけど、『それでもなお!』みたいな。そんな感じのことを歌ってるように感じたんですけど。

K:そういうのが苦しくても・・・求めずにはいられないんじゃないかなって。

−全然表現方法は違うんですけど、そこの部分だけみると、例えば、あみん「待つわ」的な要素はあります?

K:アハハ!そうですねぇ。世界観的にはそうですよね(笑)。

−結構さらけ出した状況ですよね。

K:そうですね。ま、あんまり救われない・・・それでも別にいいかなっていう。

−でも、後ろ向きな感じってわけじゃないですよね。

K:ではないですね。

−『人はどうすれば?』みたいなことよく考えてたりします?

K:自分が生きていく上で大事なことだから、すごい考えちゃうんですよねぇ。眠れなくなる・・・。

−そこから歌詞が生まれてくるっていうか、悩まなかったら書けないですよね。熊木さんの場合、多分。

K:そういうところはありますね。だから悩んでないと不安になるんですよ。

−「咲かずとて」はどんなシチュエーションで生まれてきた曲なの?

K:サビのメロディが浮かんで、夜駅で歌いながら・・・。

−出てきた?

K:出てきた(笑)。気づいたら、“♪あなたを愛せない”、おぉ愛せないって(笑)。

−(笑)。夜の駅で浮かんできたんだ。結構夜の方が多いですか、詞が浮かぶのは?

K:夜の方が多いかな、うん。

−夜出てくるテーマと昼出てくるテーマって違ったりする?

K:テーマは変わらないけど、言葉が違う。夜は切羽詰まってる感じ(笑)。

−なるほど、切羽詰まってる感じと言えば二曲目の「二色の奏で」。この曲にはどんな思いを込めて?

K:これは19歳の時に書いて、「これだから“十代は”」って、自分に言い聞かせてるみたいな歌なんだけど、本当に歌詞そのままの気分なんですけどね。テレビ見てて、誰かが死んだニュースが流れても、携帯で笑いながら喋ってる自分とか、人が死んだのとか思っても遊びに行っちゃったりするのが・・・それでいいのかなぁって・・・ね。同じ世界で起きている現実なのにって。

−ちょっと違うかもしれないですけど、井上陽水さんの「傘がない」的な要素も窺える一曲ですね。

K:はい。意識はしてないけど、自分の中のどっかにね、そういう要素があるんじゃないかなぁ。

−この曲はテーマが死生観や人生だったり、結構重いじゃないですか。でも、そういう詞を書くからこそ、力が入ったりしますよね?

K:そうですね、ありますね。

−「二色の奏で」はどういう時に書き始めたんですか?

K:これは・・・そういう風に思ったときに。もうメロディと一緒に歌いながら出てきて、歌いながら書きながら。

−この手の詞は結構たくさん書き溜めてたりするんですか?

K:ありますねぇ。「二色の奏で」っぽいのはいっぱいある。もっと暗いじゃないですけど、重かったり。自分にしか分からないような。

−この曲は、聴いてて鳥肌モノだったんですけど、一番最後の“世に生まれたことに悩むのならば 生まれてこれたことに懸命に生きて いつか人生と太筆で書いても恥じることのない道を”っていうフレーズ、これが熊木さんの中の死生観の結論?

K:そうですね。そういう風にいたいって思う。何か最終的な位置は見えていても、そこまで行く過程が見えなかったりするんですよね。例えば、どうやって生きれば、陽水さんみたいな生き方が出来るのか、とか。一応そういう目標みたいなのを据えて懸命に生きる、と。

−さっき、「テレビ見てて、誰かが死んだニュースが流れても、携帯で笑いながら喋ってる自分・・・」みたいなことを話してましたけど、気にしなきゃ気にしないで済むことだったりしますよね?

K:そうなんですけど、遊んでることにあんまり楽しめない・・・ことが多い、最近。

−それは、遊びに行っちゃってから途中で、ふとそういう衝動に駆られたりするってこと?

K:そうそう。最近ね。

−最近なんか、なおさらですよね、暗いニュースは後を絶たない。

K:何にでも影響されやすいんですよね、ニュースとかにも。マンガでも影響される、だけどマンガ喫茶にあえて行くんですよ。

−(笑)。

K:現実逃避をしに行くんだけど、むしろ現実を突きつけられるみたいなのがあって。でも、そういうのが好きなのかなぁ。

−あと3曲目の「まよい星」ですけど、これはどんな思いを込めて?

K:それは、迷ってる・・・(笑)。

−(笑)。

K:結局繰り返してるんですけど、2曲目で一応もう結論づけたくせに、また迷ってしまってる・・・めちゃくちゃ救われないCDになってるんですけど。

−(笑)。


K:星空の下で作ったんですけど。

−多分そうだと思いました。

K:星に喋りかける感じ。人付き合いみたいなのがすごい苦しかったりした時に、自分はどういう位置に立てばいいんだろう?って悩むことがあって、でも、自分では逆らえないものもあるし・・・と思ったときに星を見て、雲がかかっちゃえば見えないしね、お前も逆らえないんだね!みたいな(笑)。そういう独り言的な。

−自分自身のことをそのまま歌ってるっていうか。

K:そうです、そうです。もう全部そうですね。

−こうして振り返ると、内容の濃い作品ですね。前のシングルと比べても、結構テーマが重いのは、曲選んでいく中で、自然とそういう感じになったの?

K:うん。そういう曲が多かったんですよ、今回作って提出したものが。

−結構こういう深いテーマの作品とか出せると、やっぱり多くの人に聴いてもらいたい気持ちが強くなったりします?

K:あぁ・・・。

−それはあんまりない?

K:ない。「こういう風に思ってるんだけど、みんなはどう思ってるのかなぁ?」ぐらいの感じ。なんか、傷をね、残したい・・・別に癒すとかじゃなくて。

−デビュー作の方が、どっちかっていうと・・・。

K:ほわ〜ん。

−ほわ〜んとした、うん。

K:そうですね。だから違う道が開けたような気がする。

−うーん。生で聴きたいですよね。

K:生で歌いたいですね。

−あと、こうやってマキシシングルが二枚出ると、そろそろアルバムとか作り出してんじゃないのかな?って思うんですけど。

K:曲は徐々に作ってますね。

−それは、色んなタイプの曲?

K:そうですね、色んなタイプを。

−どのぐらいのペースで曲とか詞とか作ってるんですか?

K:えーっとですね、メロディがちゃんとついて全部出来るのはそんなに多くないんですけど、詞を書くのはほとんど毎日。一応「この日まで」って言われないと、ちゃんと形にしないタイプだから。

−(笑)。大体どのぐらいストックあるの?

K:90・・・ちゃんと整理してないです。100はいってないかな?

−よくそんないっぱい言葉が出てきますよね?

K:ねっ。自分でも恥ずかしいですよね。

−なんで?(笑)。

K:いっつも思い悩んでるのが。朝爽やかに起きたことがないんですよ、しかめっ面で起きるんですよ。「はぁー、朝か・・・」みたいな感じで。

−(笑)。

K:自分でもびっくりするんですよね(笑)。楽しくない訳じゃないんですよ。だけどなんかどんよりしてる。外に行きたいわけでもないし、家にいたいわけでもないし。で、お母さんとかが帰ってくるとすごい救われた気になるんですよ。お母さんが普通に「今日はご飯何にする?」とか言うと、プイッて戻される感じがして。

−うん、うん。一人になるとヤバイってこと?

K:かなぁ?でも一人が好き、心地よかったりするんだけどなぁ。

−それはもうずーっと?

K:ここ最近かな、やたらに。眠いのに脳だけ起きてるから、よく夢見るし。

−なんかそういうモヤモヤが全部吹っ飛んだ後の詞とか見てみたいです。

K:(笑)。吹っ飛ぶことがないんじゃないかなーと思う。多少は忘れる事が出来ても。一瞬だけバーン!って。そういう時はそういう時で、目がパチッと開くのかもしれないし。

−身を削って作ってる感覚はある?

K:私は削るって気はない。削っていったら、いつか無くなっちゃうじゃんって思うし。

−今は苦しいけど、でも・・・。

K:必要なことなんじゃないかな。

−これからも良い作品を作っていって下さい。

K:はい。

−じゃあ最後に、このインタビューを読んでる読者の人にメッセージをお願いします。

K:はい。えーっとですね、これが一番難しい(笑)。前作とは違う世界になってるから、詞を聴いてもらいたいかな。それで何か心に残るモノがあるといいなと思います。

Interviewer&Photo:Tetsuo Hiraga