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−記念すべき1stアルバム「殺風景」が完成しましたね!デビューとはまた違った満足感や達成感があったんじゃない?

熊木杏里(以下K):ありましたね!アルバムを出したい気持ちがずっとあっただけに。色んな曲を詰め込んで、「こういうのもあるんだよ!」って部分を知ってもらいたかったというか。

−今作はどうして「殺風景」というタイトルにしようと?

K:ひらめきですね。何もないように見える風景は、もしかしたら何もないっていう目で見なければ何か見えるかもしれない。そんなイメージですね。

−なるほど。他にもタイトルの候補はあったの?

K:ありました。「私の窓」とか、「普通だねー」とか言われて(笑)。あとは、今作の一曲目のタイトルにもなっている「夢見の森」。でも、「夢見の森」だと、意味を限定してしまいそうな気がしてやめました。

−アルバムのレコーディング自体は順調だったの?

K:すごく順調でした。今回心掛けていたことがあったんですよ、自分で色んなことを判断しようって。歌い終わった後にいつも、「大丈夫ですか?」とか聞いてる自分がいたんですけど、「大丈夫?じゃなくて、自分が良いと思えばそれで良いんだよ」って思うようにして作っていったので、とてもスムーズにレコーディングは進みましたね。

−前回のインタビューで言っていた“自信を持とう”という部分を行動に移したわけですね?

K:そうです!今回からは!

−プロデューサーの吉俣良さんとは今作を作る上で色々話したの?

K:はい。色んなこと言ってくれましたよ。歌い方のこと、音のこと。でも、基本的には「思ったようにやれ!やりたいと思ったことはやれ!」っていう感じで。

−今作は様々なミュージシャンが参加していますけど、どういった経緯で参加してもらうことに?

K:吉俣さん族ですね。吉俣さんの仲間というか。

−印象的な人とかいました?

K:ギターの狩野さん。すごくフォークソングに詳しくて、レコーディングが終わったら、いつもフォークソングを一緒に歌ったり、練習をさせてくれたり。

−ちょっとしたフォークソング教室みたいな?

K:そうそう!段々楽しみになってきて!

−今作の曲順は結構悩んだりしました?

K:すごい考えました!シングル曲の場所とかも悩んだし、耳にうるさくないようにしたかったし。でも、面白かった。「この場所にこの新曲を入れてちょっと驚かしてやろう」とか(笑)。あとは、全13曲揃ってやっと“熊木杏里”になったって感じで、実はかなりこのアルバム気に入ってます(笑)。これから先、作品を作る上での基本が出来ましたね。

−オープニングの「夢見の森」から触れていきたいんですけど、この曲は何をテーマに作ったの?

K:夢とか、願望とか、希望とか。心持ち一つで紙一重だなって。夢を見るって幸せなことだけど、そればっかり見ていたら近くが見えなかったりするし。その心の持ち方って難しいなって。何かを“羨ましい”って思う心もあるけど、それは“夢”なのかな?とか考えて。

−“人生はいつから自分だけのためじゃなくなるんだろう”というフレーズがすごく印象的だったんですけど、こういった部分での葛藤は、大人になるにつれて出てきてる?

K:そうですね。お父さんを見ててそう思うんです。家族のために・・・他にやりたいこともあったんだと思うんですよね、音楽がやりたかったとか。でも、私には「好きなことずっとやってけ!」って言ってくれたりして嬉しいんですけど、いつまでも夢ばかり見てちゃいけない現実との葛藤というか、そういうのはありますよね。結局、杏里は自分のことでいっぱいだからね、今は自分だけのためなんですけど。

 “飽き”や“忙しさ”を理由に音楽離れしてしまう人や、元から音楽には興味がないと言う人が、ふと足を止める音楽や歌が稀に存在する。万人に認められる音楽などはもちろん存在しないのだが、そんな大きな意味ではなくて、単純に体(もしくは心)が反応してしまう音楽(もしくは歌声)。デビューシングル「窓絵」リリース時から数えて4度目のインタビューに応えてくれた“熊木杏里”というシンガーソングライターの作り出す作品は“それ”に当てはまる、そう僕は思う。今月26日リリースのファーストアルバム「殺風景」は、まさにそんな音楽や歌声の“総集編”的内容になっていて、意識・無意識関係なく「なんかいい」と感じさせる。その理由などは何でもいい。どうしてもその理由が知りたい人は、彼女の書く詞に着目してみるといい。このインタビューで彼女が何を想って曲や詞を書き、歌をうたっているのかを感じるのもいいかもしれない。とにかく彼女は“なんかいい歌”を歌う。

対談

熊木杏里
×
Tetsuo Hiraga

1st ALBUM
殺風景

1.夢見の森
2.窓絵
3.やすり
4.りっしんべん
5.わちがひ
6.ル・ラララ
7.咲かずとて
8.殺風景(朗読)
9.今は昔
10.二色の奏で
11.二人の会話
12.寿
13.心の友〜WiLSON〜

2003.3.26 in STORES
VPCC-81447
\3,000(tax.in)

(C) VAP
http://www.vap.co.jp/anrico/index2.html

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熊木杏里

−“自分だけのためじゃなくなる”ことが重荷にならないような生き方だったら良いと思いますけど。

K:そうですよね!出来ればそれが良いですよね。

−自分だけのためじゃなくなっているんだけど、自分のためにやっているんだ!だから不満じゃないよ!みたいな。

K:そうそう!それも心持ち一つじゃないですか。人のためでもあるけど、自分のためになっていれば良いですよね。

−あと、“左胸のサイレン”というフレーズも印象的だったんですが、これは何を形容しているの?

K:“警告”とかそういう意味です。心臓、自分の大事な部分。感受性が唸っている・・・。

−この曲はオープニングに入れたい!って感じだったんですか?

K:そうですね。何かが始まっていく源を感じるんです。「ようこそ」って感じの。

−あのイントロのストリングスがそれを感じさせますよね。

K:あのストリングスは、「井上陽水さんの曲みたいな雰囲気にして下さい。」と、吉俣さんに頼んで入れてもらったんです。良いですよね!

−2曲目には、デビューシングルとなった「窓絵」が収録されていますが、もう一年前なんですよね、このデビューシングルが世に出たのって。確か熊木さんが大学卒業したばかりで。

K:そうそう!「卒業しました!」とか言っていました。「危なかった!」とか言ってましたよね(笑)!?

−ちゃんと卒業してなかったら、人生ちょっと変わってたかも?

K:今頃、駄目人間に陥っていましたよ(笑)!

−あれから一年経ったんですけど、この曲の捉え方って変わってきたりしてます?

K:あんまりひとつひとつの言葉にはそんなに意味はないなって。全体的にフワ〜って流れるものというか。言葉の区切り方とかも自分の中ではあまり無い感じなんですけど、これはこれで確立されていますよね。存在感も大きく感じますし。

−代表曲というか?

K:それを壊したいですね!これからは。でも今しばらくは「窓絵」にすがって(笑)。

−「窓絵」の詞の中の「雨も降るけど 雪も降るけど 心の天気に晴れはない」っていうフレーズが今になってみると、熊木杏里そのもの!って感じがします。

K:そうですね(笑)!本当にそうかも!この曲書いた時は、窓からは雨とか雪とかは見えるんだけど、太陽だけは見えない・・・そんな部屋に私はいるっていう絵が浮かんできたんですけど、気がついたらこのフレーズ通りの生き方してますね(笑)。

−続いて、3曲目「やすり」。熊木杏里らしい“失恋フォークソング”ですね、これは。詞のアプローチとかも“イリュウジョン”とかね!決して英語ではなく。

K:英語では書かないですからね。カタカナになっちゃう。

−この曲は18歳くらいの時に、恋が駄目になってしまって書いたようですが、歌う時にその対象となった相手とかって思い浮かんだりするもの?

K:対象よりもその時の自分が思い浮かびますね。その時に傷ついていた自分とか。“足もと見ずに追いかけられたんだ君を”とか、当時の自分の心境を思い出します。

−続いて、4曲目の「りっしんべん」。この曲はデビューシングル「窓絵」にも収録されていましたが、アルバムにも入れたいぐらい思い入れが強かったんですか?

K:そうですね。思い出深い曲で!自分の中でカッチリ出来た!オリャーって(笑)。こういうテーマが一番書きたいところなんですよ。

−この曲は、家の中にこもって書こうとしたけど書けなくて、遊びに行った夜の日に書けたっていう曲でしたよね?

K:はい。そうです(笑)!最近はそういうことないんですけどね。生まれ方が珍しかった曲でもありますね。

−続いて、「わちがひ」。

K:(笑)。わちが“い”と読みます。

−これはどういう意味なんですか?

K:そのまま、輪違い。重ならないんだけど、繋がっている・・・自分と他人は違うってことを切実に思って書きました。

−自分と他人は違うけど、それに絶望するって感じではないですよね?

K:そうですね、違うんだけど繋がっているわけですからね!

−「わちがひ」にはトランペットが入っているじゃないですか。それがあってすごい夜なイメージを感じたんですけど。

K:外国をひとりで歩いている感じ。

−日本の夜ではなく、ロンドンとか?

K:そうそう!吉俣さんがロンドンがすごい好きな人なんですよ!そういうイメージで。

−別に夜に書いた曲って訳ではない?

K:夜ですね!

−相変わらす夜に曲とか詞が思い浮かぶのが多いんですか?

K:寝る前とかに、書きますね。

−ハマっちゃうと寝られなくなっちゃったりとか?

K:そう。でもそれはそれで時間が経つのが気にならない。

−続いて、「ル・ラララ」ですが、可愛い感じの曲ですね。

K:これはデビュー前の初期段階に作り始めて10曲目ぐらいに出来た曲なんですよ。自分の中でこういう雰囲気の曲って無くて、今じゃあんまり書けないですね。なので、今回アルバムに入れたかったんです。

−この曲書いた時、どういう心境だったか覚えていますか?

K:この時期、詞に出てくる“君”って奴がやたら憎ったらしくて!コノヤローみたいな気持ちで!

−実は怨念が(笑)!?

K:実は(笑)!“君”に対しての恨み辛みが!“君”は私の何を見てくれるの!?っていう・・・。

−ラララとか言ってるけど(笑)。

K:(笑)。“ル”がマイナーで、“ラララ”がメジャーな気分で。浮かんだり下がったりみたいな。

−そして、セカンドシングルにもなった「咲かずとて」が、7曲目に入っていますけど、この曲も他にはない感じというか。

K:赤裸々だなって。こういうどっぷり愛の歌ってもう書きたくないんですよね(笑)。

−振り返って思いましたけど、この曲が一番ストレートに恋愛のテーマを歌った曲ですよね?

K:そうなんです。自分の中であまり使いたくない言葉を思いっきり使っているし、そういうところでは思いっきりのイイ歌なんです。それでアルバムに入れてみたら、シングルの時とまた違った聴き方が出来て、ビックリしましたね。

−続いて、8曲目・・・曲じゃなくて朗読「殺風景」。これは曲にせず、朗読にしたのはなぜなんですか?

K:最初から朗読を入れようと決めてから書いたんですよ。意味が分からないことを言おうと思って(笑)!夢の中で浮いている匂い・・・みたいな。

−歌入れするより難しかったりしたんじゃないですか?

K:ちょっと、こっぱずかしかった(笑)!でもナルシズムで乗り越えました(笑)!

−この朗読から流れるように「今は昔」のイントロに入るのが気持ち良かったです!

K:そこは意識して曲間を短くしてるんですよ、わずか曲間一秒。

−「今は昔」は、サードシングルのリードトラックになった曲ですけど、俗に言う“勝負の三枚目”みたいな部分で何か言われたり、意識したりってありました?

K:全然意識していませんでしたね!後から誰かに「三枚目で勝負だよね!?」って言われてから、そうだったんだ・・・って(笑)。それよりも私はとりあえず自分の好きなことをやろうっていう想いが強かったもので。

−デビュー時は、「恋愛ベースの曲はあんまりないです。」って言っていましたけど、振り返ると結構ありますよね(笑)?

K:ありますね!(笑)。ラブソングではないんですけど、意外とどんなテーマで書いても、“恋愛”も匂うみたいな!結局、そこから拾えるモノが多いなって。なので、デビュー時のその言葉は取り消します(笑)。

−続いての曲「二色の奏で」に関しては、そういう恋愛ベースからはかけ離れた、死生観を歌った曲ですよね。この曲は自分の中でも特別な曲って感覚はあります?

K:ベターっと真っ黒に塗った曲ですからね。

−アルバムの流れで聴いてもやっぱり強烈なインパクトがありますよね。

K:そうですよね。「暗いから」「重いから」って、どこ行っても厄介払いで(笑)!

−僕の憶測なんですけど、セカンドが出た頃っていうのは、デビュー以降、最も悩んでいたのかなって思ったんですけど。そういう時期ではありませんでしたか?

K:悩んでいましたね。だからこそ、色んな自分の曲が出来たと思うし、一番曲が出来た時だったんですね。やっぱり悩んでるときか・・・って感じだったんですけど(笑)!

−続いて、11曲目の「二人の会話」。この曲は何をテーマに書いた曲なんですか?

K:心と身体の不一致は?って曲。心と身体が会話して。心はそう思ってても、身体はそうじゃないことがある。そういうのをちゃんと分かっているか?って部分ですかね。

−この曲は、イントロとアウトロにオルゴールの音が入っていますけど、あれはオルゴールじゃないんですよね?

K:ないですね。ピアノなんです。それを吉俣さんが初めて誉めてくれたんですよ(笑)!「こんな風に弾いているのは珍しい、斬新だ!」って。私にとっては普通なんですけど、吉俣さんからすると斬新だったらしく。

−続いて、12曲目「寿」。タイトルからして「これはウェディングソングかな」って思って聴いてみたら、ウェディングソングに感じましたね。

K:はい。成り得ますね。結婚式で歌おうかな(笑)。

−なんで「寿」というタイトルに?

K:ひらがなで、“ことぶき”って浮かんできて。そういう匂いがしたんですよね。めでたいことだって。

−この詞を書こうと思ったキッカケって何だったんですか?

K:人の前でいつも同じでなくちゃいけないなんて疲れるなって思って。本当に分かってくれる人がいたらいいなって切実に思っていたので。元々はサードシングルの候補で頑張って作った曲なんですよ!でも、6分強ある曲なのでシングル向きではないなってことで。

−これは是非結婚式で(笑)!

K:歌えると思いますよ!友達に向けて歌おっかな?

−そしてラストに!

K:ヤツが!

−ヤツが(笑)!「心の友〜WiLSON」が登場しますけど。これは完全に一発録りって感じですね?

K:そうですね。でも、30回くらい歌いました。狩野さんにはえらい迷惑かけたんですけど。

−30回ってすごいですよね(笑)!

K:デモテープがお父さんと一緒にフンフン歌ってたんですよ!その感じがそのまま出せたら良いなって思って。これだけ別物で、暖かい日溜まりを感じますよね。

−一番最後の「ウィルソーーン!」ってところが良い感じだなって。

K:ウィルソンはどっかに逃げましたからね。タンバリンを置いて(笑)!12曲でひとつの流れは終わる感じで聴いていると、変な口笛が聞こえてくる感じが良いかなって。

−ボーナストラックじゃないですけど(笑)。

K:そうですね(笑)。

−なるほど。これからもウィルソンは、心の友って感じで?

K:はい!そうです!(笑)。

−こういうのってアルバムでしか聴けないですよね?

K:そうなんですよね!絶対いつか入れてやろうって!(笑)。

−ウィルソンの意味は全部ここに書いてありますしね。

K:そうそう!取扱説明書みたいな感じで(笑)!。

−わかりました。今、ファーストアルバム「殺風景」の収録曲について一通り聞かせてもらいましたが、この作品は熊木さん自身にとって、どんなアルバムと言えますか?

K:今のところ、杏里の“総集編”って感じですよね、本当に。別に何かのテーマを決めて寄せ集めた訳ではないんで。人間・熊木杏里です。

−コンセプト「熊木杏里」みたいな!?

K:そんな感じですね。

Interviewer&Photo:Tetsuo Hiraga