昨年で結成10周年を迎え、ベストアルバム『10th Anniversary Best Album SUN & MOON』で改めてその音楽の魅力を体感させてくれたorange pekoe。その制作でナガシマトモコと藤本一馬も改めて自身の音楽の特性を再認識し、更なる表現の高みを目指すべくニューアルバム『CRYSTALISMO』を制作した。その仕上がりは、音楽への愛情に充ち満ちたorange pekoeでしか成し得ない表現の結晶。今作へ込めた想いを2人に訊いた。
−−昨年で結成10周年を迎えられた訳ですが、10周年と聞いてどんな気持ちになったりしましたか?
ナガシマトモコ:実は自分では気付いてなくて、スタッフに言われて初めて気付いたぐらいだったんで「もう10周年か、そんなに経ったっけな?」って感じでした。目の前のことをひたすらやってたら、あっという間に時間が過ぎていた感じですかね。
藤本一馬:それだけ音楽に集中させてもらえていたってことは、幸せなことだなって思います。あと10周年記念ベストアルバム『10th Anniversary Best Album SUN & MOON』を作りながら、自分たちがやってきたことを振り返れたのも良かったですね。あまりじっくりと過去の曲を自分で聴くことがなかったんですけど、ベストのために全曲マスタリングしたので図らずも「こういうことをしてきたんだな」って思えて。それと「こうすればもっと良くなるんじゃないか」っていうのを感じたりもしたので、それが今回の新しいアルバムにも素直に繋がっていたりして。だからすごく良い機会を与えてもらったなと感じています。
−−つい先日には、初めてニューヨークでライブを敢行したそうですが、2人にとってどのような意味を持つステージになりましたか?
藤本一馬:お客さんの反応も良かったし、ライブが終わった後も「良かった」とか「ずっと聴いてました」みたいな話が聞けたので、それが単純に嬉しかった。自分たちもニューヨークで生まれた音楽が好きで聴いていて、それと同じように言葉が分からなくても僕らの音楽を感じてくれる人がいるっていうのが、一番嬉しかったですね。
−−終演後には現地メディアから取材オファーが急遽入ったりもしたそうですが。
ナガシマトモコ:なんかね、ガンガン現地の人が突撃で話し掛けてきたんですよ。で、野外フェスなんでテント待機だったんですけど、そこにも「話したい」ってファンの人とか「私はこういう者です」ってメディアの人とかもやってきてくれて、すごく嬉しかったです。
−−2003年のアルバム『Modern Lights』のラストに収録されていた『虹』を披露されたそうですが、あの曲を今ニューヨークで歌おうと思ったのは?
ナガシマトモコ:あの曲の英語詞バージョンを9.11が起こったときに居ても立ってもいられなくて作ったんです。だからニューヨークでライブするなら絶対歌いたいと思って。で、人に対してはもちろんなんですけど、土地に歌ってるイメージもあったりして。ニューヨークという場所でいろいろ起こったことだったり、そこにあるいろんな人の想いに向けて歌う感覚でしたね。
−−「平和を祈ろう」という言葉は、何をどう考えても正しい言葉ですが、それ故に口にすると、特に戦争がリアルでない日本で歌うと「そんなこと言われても」となってしまいがちな言葉だと思うんです。それでもorange pekoeがあのとき「平和を祈ろう」というメッセージを曲にしようと思ったのは何故なんですかね?
ナガシマトモコ:悲しかったんですよね。戦争を始めてしまうことも最大の理由ではあったんだけど、「戦争反対!」って言ってるのもすごく戦争っぽく見えて。もちろん必要なことでもあると思うんですけど、何かに対して「反対!」って衝突が起きてるということが異常に悲しくて。もっと温かい方法でできへんもんかな?ってすごく思ったんですよね。で、平和っていうのは、戦争という出来事に対してだけじゃなくて、今の日本を見渡しても辛い人がおったりとか、そういうことに対して「もっともっとみんなが元気よくなってほしいな」っていう想いでもあって。そういう意味では、まだまだどの土地でも歌いたい曲ですね。
−−そんな有意義なトピックもありつつ、ニューアルバム『CRYSTALISMO』が完成しました。今作の仕上がりにはどんな印象や感想を持たれていますか?
ナガシマトモコ:とにかく完成したことがすごく嬉しくて。このアルバムに取り掛かる前に「ひたすらやりきって、周りの人に“あなたが居たおかげでやりきれました。ありがとう”って感謝できるぐらい、清々しい感じで終わりたいなぁ」って思っていて。だからガンガンいろんなことに食らいつきながら作っていって。それがすべて完了してマスタリングで全曲流して聴いてるときには、このアルバムに携わった全員の顔が思い浮かんで「みんなありがとう」って実際に泣けてきたんですよ(笑)。だから今は完成したことにとにかく満足してる。
藤本一馬:いろんなことがあったんですよ。毎回思うんですけど、1枚アルバムを作るっていうのはなかなか一筋縄にいかない。でも今回は本当に自分たちとしては「やりきったな」って強く思えたので、良かったなって。ミュージシャンみんなで一発録音というスタイルなのでやっぱり時間も掛かりますし、みんながみんなで良い状況で音楽を作るっていうのは、簡単なことじゃないんですよね。でもやっぱりそれが自分たちが作りたい音楽であり、聴きたい音楽であることは最初から確信していたことだったので。生で録ることで感じられる必然性とか、何か音楽の中にドラマがあったりするアルバムを作りたかったんですよ。で、その気持ちに今回参加してくれたミュージシャンのみんなが賛同してくれて、この2人が納得しなかったら何回でも、嫌な顔ひとつせずに取り組んでくれたんです。そういう人間としても素晴らしいミュージシャンに出逢えたっていうのもすごく大きな財産で。そういう意味では、音楽的なアルバムとしても、人生的なメモリーとしても「良かったな」って思えるモノができた。それが今の気持ちです。
Interviewer:平賀哲雄
Page Design:佐藤恵