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柴田淳 インタビュー

Album

『ゴーストライター』
2009.11.04 Release
VICL-63407
\3,045(tax in.)

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01. 救世主
02.透明光速で会いに行く
03.Love Letter
04.うちうのほうそく
05.蝶
06.雫 〜instrumental〜
07.雨
08.宿り木
09.君にしかわからない歌
10.幸福な人生
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 私の歌は全く夢を与えないから。大人の現実だから―――。彼女はこれまでずっと音楽に自分を密接させたきた。幸福を実感できないから幸福の歌をうたわないし、悲しい恋愛に傷ついたから悲恋の歌をうたう。それはきっとこれからも変わることはないのだろう。けれど、今作『ゴーストライター』ほどに彼女の素顔に触れるアルバムはきっともう生まれない。その理由について、柴田淳が語る。

−−アルバム『親愛なる君へ』リリースタイミング以来、約1年半ぶりのインタビューになるんですが、あれから今回のアルバム『ゴーストライター』に辿り着くまでは、柴田さんにとってどんな期間になりましたか?

柴田淳:なんか、今回のアルバムのプロモーション期間にずっと言ってることがあって。去年の年末に初めてイベントに出演して、そこで挫折して、それで今年はずっと苦しかったっていう……話ばかりしてて! なんか嫌になってきちゃって(笑)!!

−−何で挫折したんですか?

柴田淳:【Saltish Night】っていう塩谷哲さんのピアノを前にボーカリストが次々と入れ替わるイベントに出させて頂いたんですけど、歌唱力が評価されている人ばかり出ていて。で、私はどちらかと言うと、作詞作曲をするシンガーソングライターをやっているから「ちょっと多めに見て」的な言い訳をしながら歌ってきたんですよ(笑)。それなのに演奏は一緒で歌だけ入れ替わるってなると、声量だとか歌唱力を競う歌合戦みたいになっちゃって、私は何も魅せられるところがなくて。自分の存在をどういう風にアピールしていいのか全然分からなくなっちゃったんですよね。「イベントって出方を間違えると魔物と化すな」と思いました。それで今までの言い訳は通用しないことがよく分かってしまい、自分は何を自信にしてやっていけばいいのかが分かんなくなっちゃった。

−−なるほど。

柴田淳:でもその中で藻掻き苦しみながら曲は作っていて。それが「大変でした」っていう話で、今回のプロモーションはいつも終わってて。だからここでは違う話をしたい(笑)!

−−では、そのイベントの直前の話を。昨年11月25日に東京国際フォーラム ホールAでのコンサートがありました。あの日は柴田淳の歴史から観ても大きな一日だったんじゃないですか?

柴田淳:え〜〜っと、そうだなぁ、あんまり……。

−−(笑)。

柴田淳:ロビーから何から綺麗な東京国際フォーラムでコンサートができる嬉しさは物凄くあったんですけど、大きかろうと小さかろうと緊張は一緒で。あと、上手いステージをやるのはあたりまえで、更にどうやって伝えるか。曲順を途中で入れ替えたりとか、そういうことを考えるのってベテランクラスだと思うんですけど、まだ私はやりきることだけで精一杯なんです。でもその私でさえ「もうちょっとこうすればよかったなぁ」ってステージに立ちながら反省していたので。だから「やっとこのステージに立てた!」とか、正直あんまり感じなかった。課題がたくさん出てきましたね。

−−では、昨年末は本当にライブのことで苦しんだ感じだったんですね。ちなみにそこからどのような流れで自分のモチベーションを上げていくんでしょう?

柴田淳:まず1月は放心状態で、2月から「創作を始めてください」って言われたんですけど、全然出来なくて。初めてスタッフに泣きつきましたね。これまでは何があっても〆切は破ってこなかったんですけど、初めて「できません」っていう話をしまして。それでもレコード会社的には何か出さなきゃいけないということで、カバーアルバムを出すとか、セルフカバーを出すとか、いろんな選択肢をくれたんですね。でも、前まで歌謡曲のカバーアルバムを作りたいと思っていたんですけど、なんか作りたくなくなっちゃって! 作りたいと思う旬が過ぎちゃっていたので「やっぱりオリジナルアルバムじゃなきゃ嫌だ」と思って、それで3月、4月と作り出して。でも曲が出来上がって「良い!」と思ったら、誰かの曲とそっくりだったりとか、とにかく今回は「あれに似てない?」「これに似てない?」ばっかだったんです。それを出して「パクった」って言われるのはすごく嫌だし、そこまで良い度胸していないので、だから結局作っては何か似てるの繰り返しで時間が掛かっちゃって。

−−嫌なサイクルですね。

柴田淳:それでもスタッフは有り難いことにリベンジする時間をたくさんくれたんですね。でもそのおかげで「今日ダメでも、明日やればいい」と思って集中しなくなって。しかもレコーディングって突き詰めていくとゴールはないですから、今度は精神的にも肉体的にも疲れてきちゃって(笑)。で、その合間に初めて野外イベントに出演してみたんです。「昨年末に挫折したのによく次の年の夏フェスに出れましたね」ってみんなに言われたんですけど、形態が全然違ったんですよ。誰かと何かを比べるような次元のステージじゃなくて、それぞれのアーティストで場面転換してくれる感じだったし、塩谷さんとか佐藤竹善さんとか主催の葉加瀬太郎さんとか、有り難いことにみんなチヤホヤしてくれたから、居場所がちゃんとあったんですよね。なので、楽しかったんですけど、そこでレコーディングモードが1回切れちゃって。またそっちのモードに戻すのも大変で。で、時間も遅れちゃってっていう、結構悪循環でしたね。

みんな良かれと思っていろいろ用意してくれるんだけど、申し訳ないんですけどそれが更に空回りする要因になっちゃったかなって。だから勉強になりましたよね。スタッフも私も。時間が延びる原因は全部私なんですけど。なので今度は短期決戦でズバっとやります(笑)。

−−そんな状況下でも生み出してみせたニューシングル『Love Letter』。自身では仕上がりにどんな印象や感想を?

柴田淳:この曲を作るときに「すがる愛じゃなくて、すがらない愛の方が深いんじゃないか」って思うことがあって。前に『光』っていう歌を作ったんだけど、その当時は「好きな人を看取って一人で生きていくぐらいなら、本当に申し訳ないんだけど残された人のことを全く無視して先に逝きたい」っていう気持ちがあったんですよ。でももし両親より先に死んでしまうことがあるとしたら、やっぱり残された人たちって生き地獄になると思うんですよね。だったら自分が看取った方がラクだなって、今は考えられるようになった。

あと恋愛における別れとかでも、本当は「行かないで」って言いたいけど「大丈夫」って言った方がいいと思うようになった。それは最高の嘘だと思うし、そう言ってあげた方が相手は安心して幸せになれるのかなって。そこで「行かないで」とか「あなたがいないと生きていけない」って言う方が相手を不幸にさせるような気がするんですよ。そういう想いがあって、すがらない愛、心配かけない愛を書きたかったんだけど!

−−だけど?

柴田淳:どうしてもメロディが恋愛メロディで、自分でも悲恋の歌が書きやすいんですよ。あとは酷い男に何人も引っかかってきた中で、皮肉も言いたかった(笑)。「ずっと前から一人だった あなたを愛した時から」って、聞こえ方によっては憎まれ口というか、嫌みでしょ?

Interviewer:平賀哲雄
Page Design:佐藤恵