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−まずは昨日のDUOでのツアー・ファイナル、本当にお疲れ様でした。中川さんの人間的なエネルギーがものすごくストレートにきれいな形で音楽になっていて、「歌」っていうのは確かに歌声はすごく重要なのだけど、それと同じぐらいにそこに込められる魂が大事なんだなって思いました。歌手の方はみんなそういう意識をもっていると思うのですが、何故、ソウル・フラワー・ユニオンからはあそこまで強く感じさせられるのでしょう?

中川敬(以下N):あんまり深く考えてない(笑)。けど、「出会いが多い」ということやろうね。この10年、海外でやることも多いし、しかもちょっと際立った場所が多いから。フィリピンのスモーキーマウンテンであったり、パレスチナ難民キャンプであったり、東ティモールであったり、もちろん国内でも被災地や労働者達のドヤ街であったり、ホームレスの祭りであったり。しかも、リキッドルームや昨日みたいな場所(渋谷DUO)でもやるから、本当に色んな顔と出会ってる。そういった「出会い」というものを、少なくとも誠実に、歌にちゃんと刻印していかなあかんとは思ってる。それだけはちゃんとやろうと思ってる。ただ、あとはチャランポランにいきたいなと思ってる(笑)。

−とあるインタビューで中川さんが「人との出会いが少ないから、海外との距離を遠く感じてしまったり、どれだけ海外でひどい事が起こっていても、そこにリアリティーを持てない」っていうふうに言っていたのを読んだことがあります。

N:そうとしか思えない。人がどうなんかは分からないけど。それはもう想像するしかないからね。ソウル・フラワーは突出しちゃうなって思うところはあるよ。音楽業界で突出してるなっていう。でも、そんなに変わったことをやってるつもりは全然ない、っていうか、自分にとっての日常的に感じれることだけを歌にしてるつもりやし。なんか日本の音楽業界の中では「社会派」とか「政治的」っていうことにされてまうよね(笑)。ヨーロッパやったら全然「中庸」。歌をうたうっていうのがどういうことかっていう根本原理が違うんやろうね。まぁ、今たまたまヨーロッパって言ったけど、どこでもそうやと思う。日本の状況に「特殊性」を感じるけどね。

−それでは、4年ぶりとなる完全オリジナル・ニューアルバム『ロロサエ・モナムール』について色々と教えて頂きたいのですが、この時期にこれを出そうと思ったのはどういった理由からなのですか?

N:実は毎年なんか出してる。「四年ぶり」とは書いてるけど、アルバムも出してるしね。3〜4曲新録で後はライヴとか、そういうアルバムがちょっと続いてたからね。まぁ実際に、曲が溜まってフル・アルバムを作ったほうがいいんじゃないかっていう話も周りにはいつもあるねんけど、オレが1年に1枚、なにがしかの作品を出したくなるからね。ものも言いたくなるし(笑)。特に「9.11」以降、ブッシュやコイズミがどんどん「リリース」するから、オレもどんどん「リリース」したいなって思って(笑)。そろそろ全曲新録で、スタジオ録音でフル・アルバム作りたいなっていうにはもちろん一年ぐらい前からあったし、まぁやっとできたっていう感じかな。この4年間のライヴでやってる新曲を集めた感じやから、ある意味オレの中ではベスト・アルバムっぽいっていうか。けっこう、非戦アルバムっていうかトピカルな作品が続いてたから、そこに入らないなっていう曲を録らずに置いてたところがあってね。<パンチドランカーの夢>とか<酒と共に去りぬ>とかは、3〜4年前からライヴでやってる曲やし。

−特設サイトには直接的なメッセージというよりは、日本の民衆のボトムにあるストーリーをすくい取ることに集中しているという解説がついていましたが?

N:やっぱり、冒頭でも言うたけど、「出会い」というものをちゃんと楽曲に刻印しようと思ってるところがあって、結果的にそうなってるっていう感じやね。まぁ、出会う人間もマージナルな場所にいる人間が多い、っていうか、もうオレはそんなに音楽業界の中だけにまみれて生きてないからね。色んなところで色んな人間に出会って、そういったものが音楽には反映するから。

−こうしてアルバムに曲が揃ってみて、全曲を通して何か共通しているところはありますか?

N:あとで振り返って思ったのは、もちろん全曲すごく「中川」してるなと思ったけど、やっぱり「1人1人が主人公や」っていうことを歌ってるね。もう、カリスマとかスパースターとかはいらない。ブッシュやコイズミやイシハラはもちろん、毛沢東もビン・ラディンもエルビスもいらない。そういうのじゃなくて「1人1人が主人公なんや」っていう、そういうことを歌ってるなっていう意味で、アルバム全編にそういうヴァイヴが通底してある、とは思ったね。

−収録曲について伺っていきたいのですが、<神頼みより安上がり>は昨日のライヴでも大盛り上がりでしたね。

 ソウル・フラワー・ユニオンの4年振りのフル・スタジオ・録音盤『ロロサエ・モナムール』を一人でも多くの人に聴いてもらいたい。中川敬の歌声、音楽を一人でも多くの人に知ってもらいたい。そんな少し青臭いような想いからこのインタビューは実現しました。東ティモールでの貴重な経験、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットとして10年間という歳月を通して見続けてきた阪神大震災の被災地・神戸、色々な場所での色々な出会いが、「ソウル・フラワー史上最高の仕上がり」というこのアルバムにどのように消化されているのか? 語り部はもちろんこの人、中川敬。関西弁を振るい、「日本の零年」を奮い立たせるべく歌い続ける、1匹の猛獣が如き気高き男。発せられる言葉ひとつ、立ち振る舞いひとつに嘘はなし。『hotexpress』初登場、是非読んでみて下さい。

対談

ソウル・フラワー・ユニオン
×
Ryo Kawakami


NEW ALBUM
「ロロサエ・モナムール」

01.神頼みより安上がり
02.アル・ファジュル <夜明け>
03.松葉杖の男
04.ひかり
05.酒と共に去りぬ
06.パンチドランカーの夢
07.アル・ファジュル・フローズン・ブラス(インスト)
08.見世物小屋から愛を込めて
<もしくは、セレブリティの秘かな愉しみ>
09.不死身のポンコツ車
10.零年エレジー
11.最前線ララバイ
12.無防備な女の子とドタ靴の俺
13.完璧な朝 <ア・ルータ・コンティヌーア!>
14. 星降る島 <オーマルシーラ・オーウルシーラ>


XBCD-1010
¥3,150(tax in)

2005.7.20 in STORES

ソウル・フラワー・ユニオン オフィシャルサイト>
http://www.breast.co.jp/soulflower/index.html

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ソウル・フラワー・ユニオン



素直に、こんなに楽しい気分になる曲ってすごいなと思いました。

N:それは良かった(笑)。常にそうあって欲しいと思ってやってんねんけどね。

−<アル・ファジュル>ですが、これは“夜明け”という意味ですよね?

N:うん、アラビア語でね。まぁゴロが良かってんけどね。けっこうみんな深読みするけど。「出発」って感じの曲やね。大体新曲って、作ってライヴで初めてやる時、お客さんの体の動きが止まる(笑)。この曲は、初めてやった時からみんなの体が動き続けてるから、これはもしかして「ライヴ曲」かもって。別に意識して作ったわけじゃないねんけど。

−<松葉杖の男>は個人的にもこの曲がすごく好きで、これは実際に中川さんの友人の方を歌った曲だと聞いているのですが?

N:浅田修一。映画評論家で高校教師。2〜3年前、60才過ぎで亡くなってんけど。4才の時に怪我をして、それからず〜っと片足で松葉杖。「今さら車椅子なんて乗れるかよ!」って言ってたね。8年前に対談をして以降、神戸の人やったから、モノノケ・サミットのライヴをちょくちょく見に来てくれてね。数年音沙汰がなくて、オレが今サイトで映画コラム(http://www.breast.co.jp/soulflower/nakagawa/
cinema/index.html
)を持ってるから、久々に浅田さんの本(著書に『神戸・わたしの映画館』など、多数)を読んでみたりして、「浅田さん、最近どうしてんのかな?」と思ってインターネットで探してみたら、2年前に死んだことが分かってしまって。すごいオレにとって魅力的なオヤジやったから、この曲は一気に作った。そのままあるがままを書いたって感じ。


−あの曲を聞いて、以前に中川さんが言っていた「人が死んだらパーティーのチャンスぐらいに思いたい」という言葉、それがすごくいい形で現れているなと感じました、楽しげなのに穏やかで優しくて。

N:うん、もうすでに悲しいからね。生き返らないもん。だから、生き残った者達がそれを何かいい機会にして未来に繋げていかないとね。せっかく人が集まってるわけやからね、葬式とかお通夜って。<満月の夕>とか、この<松葉杖の男>みたいな曲は、本当に、何かに突き動かされるように一気に書いちゃってるって感じやねんね。やっぱりそういう曲がいいね。

−<ひかり>では、すごく日本的な、しかも子供の頃に感じた時間の流れみたいなのを感じたのですが。

N:これは、うちのメンバー(ヒデ坊)が子供を産んで、その子(そらちゃん)と遊ぶ機会が多くてね。「ちょっと見ててや」とか言われたら学校のグラウンドとか公園に連れて行ったりして。そういう中でできた曲やね。まぁ、ちょっと意識的に「童謡」を書こうとはしてるよ、この曲は。この曲を作った時、そらちゃんに聴かせたら、すごい熱心に聴くわけよ。<最前線ララバイ>も、自分の周りに子供が増えてきたっていうのがあるね。最近、本当に世界を見渡しても子供の受難だらけやん。特に日本はひどい。そんな中、母親と子供の繋がりのことを考えたね。一気に書いたよ。

−ライヴにはすごく小さな子達もけっこう来てるじゃないですか? あれはもう、自然にそうなっていった感じですか?

N:もうひとつの活動にモノノケ・サミットの活動があるからね。そっちはけっこう市民運動系のイベントが多くて、親子のお客さんが結構いる。親が連れて行こうって思ってるんやろね。オレはもう、子供をどんどん連れてきて欲しいと思ってんねん、ソウル・フラワー・ユニオンのライヴにも。一緒に遊びたいね、音楽で。

−<パンチドランカーの夢>は?

N:これは、『アンチェイン』っていう映画があって、そのサントラを2000年に俺らがやってんね。ドキュメンタリー映画で、4人の実在するプロボクサーの話。ちょっと破天荒で個性的な奴等でね。そういう出会いの中で出来た曲やね。

−<不死身のポンコツ車>は中川さん自身のことを歌っているのかな、と、思ったんですけど。音自体からもそういうふうに感じました。自分の好きな音を選んでるのかなって。

N:まあ、そんな感じやね。これは相当「お気に入り」で。こういうメロディーを歌うのが大好きでね、春日八郎の<お富みさん>とかクールファイヴの<中之島ブルース>とか(笑)。テーマ曲っぽいよね、歌詞がね。「あんたもソウル・フラワーに入らへん?」っていう感じの歌詞でもあるからね。




まぁ、アラーもイエスもブッダも、全員俺の車に乗ったらいいんちゃうかなって思って(笑)。

−続く<零年エレジー>には、どのような想いが込められてるのですか?

N:何も込めてない、ブルース(爆笑)!! 「河村! エルモア風に(スライド・ギターを)弾け!」っていう曲(笑)。もう解説はいい。

−わかりました(笑)。続いて、<無防備な女の子とドタ靴の俺>に関しては、すごく衝動的な感じを受けたのですが。

N:この曲は、言葉を書いてみた、メロディーを書いてみたって感じ。自分の中から出てくるままに任せて、「何も考えない」って感じの曲(笑)。たまにそういう曲あるねんね。これもいいね。サックスの樋野展子が吹きまくってる。

−<完璧な朝(ア・ルータ・コンティヌーア!)>、これはどんな時に生まれた曲なんですか。

N:こういうメロディーは俺の十八番。10代の頃はモータウンとか60年代のモッズ・ミュージックとか、そういうのばっかり聴いてたから、なんかこういうのはすぐ出てくる。これは特に歌詞が気に入ってる。歌詞とメロディーと演奏の三位一体で、よし、アルバムに入れようって気分になった曲やね。長く聴いてるファンはニューエスト・モデルっぽいと思うかもしれないね。

−<星降る島(オーマルシーラ・オーウルシーラ)>はヘルデール・アレキソ・ロペスさんという東ティモールで独立運動を続けていた青年によって作られた曲ということですが。

N:山岳ゲリラ兵で、独立まで武器持ってた奴で。まだ20代の後半ぐらいの若者。で、東ティモールが独立して、元々ギターが好きで、今はギター弾きながら村の子供達に楽器を教えたりとか、そういうことをしてる青年やねんけど。

−今回、中川さんが日本語の歌詞をつけたということですが?

N:実は、オレの書いた部分は、全体の一割ぐらいの感じやねんね。NGOの環音(わおん→http://www.pc-lifeboat.com/waon/)っていうのをやっている名古屋の女の子がいて(広田奈津子)、その広田さんがアレックス(ヘルデール・アレキソ・ロペス)に会ってこの曲を気に入って、すでに日本語の歌詞をつけてて。それを彼女がオレに聴かせてくれて、聴いた瞬間に「あ、これはオレにやれということやな、もうこれはやらなあかんねんな」っていう気にさせられたんやな、なんか。で、オレなりに広田さんの歌詞を自分が歌いやすいように変えさせてもらったっていう感じ。この間、広田さんが東ティモールに行ってみんなにこれを聴かせたら、すごい喜んでくれたらしい。

−モノノケ・サミットとして2002年の東ティモールでの独立祝賀のコンサートやリキサでのお祭りに参加していますよね。<リキサからの贈り物>を聴いてみても、すごくいいものを受け取ってきたのかなっていう感じがしました。

N:うん、リキサは99年に大虐殺があった村で。教会に200人ぐらいが詰め込まれて、そこで殺されたんやね。2002年5月にオレらが行った時って、虐殺のまだ3年後。その教会にも行ってきたし、子供や連れ合いを殺された女性達とも会って。でも、みんなすっごく明るいねん。オレらが来たことに関して、ほんとにウェルカムっていう感じで。オレ嬉しかったのは、これは広田さんにあとから聞いてんけど、「歌詞は分からなかったけど、彼(中川敬)の歌っている声、あれは魂そのものだった」って。それ聞いて、オレの方が感動したっていうか、歌をうたってきて良かったなって。ある村の小さい4つ5つぐらいの子が<満月の夕>をすごい好きで、今でも「ラララ〜」でずっと歌ってるんやて。また会いに行きたいね。それはね、やっぱり何か返さなあかんなっていう気持ちになるもんやったよ。すごいパワーをもらったね。

−それではアルバム全体を振り返ってみて、今回はどんなアルバムが出来上がったと思いますか?

N:本当に、今のソウル・フラワー・ユニオンというものがうまくでてるなって思う。長い間やってるとね、聴く方もやる方も過去を引きずりながらやってる部分がどうしてもあるねんね。そういうものがないよ、このアルバムには。ここに込められてるものっていうのは、本当に“今”のソウル・フラワーの際立った部分が凝縮してある。魂の百姓一揆(笑)、そんなアルバムやね。すごく気に入ってるよ。

−それでは最後に読者の皆さんにメッセージを頂いてよろしいですか?

N:死ぬまで生きろ(笑)!!

Interviewer:川上了