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−スガさんが自画自賛されていたアルバム『TIME』、今振り返ってみるとどんなアルバムだったと思いますか?

スガ シカオ(以下S):ちょっとやり過ぎたかな?って(笑)。「もうちょっと分かりやすくすれば良かったかな」と、今はやや思ったりもしてるんですけど、作っているときは夢中なんでそれどころじゃないんですけどね。そういう感じがあって、なので、ポップで明るいのをすごくやりたくなって。だから今回の新曲(『奇跡/夏陰/サナギ』)みたいなところへ行ったと思うんですよ。

−いつ頃に「やりすぎたなぁ」って感じていたんですか(笑)。

S:作ったときから思ってた(笑)。一応(当時の)インタビューでそういうこと言うとマズイなと思ってたんで、どこでも言ってないんだけど、「やりすぎたなぁ」とはすでに気付いてて(笑)。暗いし、尖がってるし。でも「ま、いっか」とは思いつつ、反省って言うわけはないんですけど、その反動で、「そろそろ明るいのやりたいな」って思っているときに、ちょうどツアー明けぐらいかな?「『熱闘甲子園』のテーマやりませんか」っていう話が来たんで、「これはうってつけだな」っていう感じで。で、仕事を引き受けたんですよ。確かに『TIME』はその時の自分の理想的な曲ばかりが入ってたりするんですけど、理想系って言っても、その前回にやれなかったことを形にしている感じなので、結局グルグル回ってるだけなんですよね。バラードやってると早いのが作りたくなって、早いのいっぱい作ってるとポップなのがやりたくなって、「頭の悪いやり方だなぁ」とか思うんだけど(笑)、絶対そういう風になっちゃうんですよね。

−そんな『TIME』がリリース日、去年の話になっちゃうんですが、六本木ヒルズでオシャレな事やってましたよね(笑)?ボジョレヌーボーの解禁日に合わせたイベントを。

S:あ〜(笑)。あれはね、アルバムのプロモーションを兼ねて、抽選でお客さん集めて、六本木ヒルズの最上階に小さなステージ組んで、夜景を観ながらライブを聴くっていうね。まぁちょっとオシャレ過ぎて気恥ずかしいものはありましたけど(笑)。

−そして、『TIME』を引っさげた全国ツアー『Shikao&The Family Sugar TOUR '05』がありましたが、気持ち良く回れるツアーになりましたか?

S:うん。全然ストレスもなく、やりたいようにやれた感じですね。最初に比べると、どんどんライブが面白い方向に変わっていったし。お客さんと一緒に成長していって、良いツアーになりましたね。『TIME』の収録曲もライブだとね、何も考えずにストレスなく出来たし。「ライブでやると、良いアルバムなんだけどな〜!」って、しみじみ思いながら歌ってました(笑)。

−女性コーラスとスガさんだけの構成で曲を披露するなんてことも試みていましたが。

S:一人で歌うことはここ最近多いんですよ。だから最初はあのコーナーも一人だったんだけど、女性コーラス二人が「私たちもやりたい」って言ってきたので、「じゃあ三人でやってみる?」って言って始めたのがあのスタイルで。そしたらすごい面白いものになって。よく拍手もらえるんですよ、あの形はね。大道芸っぽくて。大盛況でしたね。

−ツアー中にそうやって色々変わっていくことはよくあるんですか?

S:ありますね。ツアーの曲目とか、アレンジとか、やってることは常に変わって。変わりながら次の回へ、次の回へと向かってますね。

−あと、「小さなライヴハウスでお客さんが3人しかいない頃からファンクをやってきたんだ!」というMCが印象に残ってます(笑)。

S:あれはね、ぼやき(笑)。あそこはぼやきと夢を語るコーナーで、自分が普段口に出せない事を思い切って言ってみよう!みたいな(笑)。

 スガ シカオのインタビューは基本ぶっちゃけトークなので、毎回楽しい。まぁぶっちゃけトークと言っても、音楽業界の裏側について語る!とかそういうのじゃないのだが、自分の作品に対しての想いや感想を惜しみ隠さず話してくれるのが嬉しい。で、あれだけ前回のインタビューで自画自賛していたアルバム『TIME』、早速「やり過ぎた」と反省気味(笑)。まぁそれだけ遠慮なく振り切って作った楽曲群ということなのだが、そこでの反動が夏の思い出を彩るスタンダードミュージックの誕生へと結びつくのだから面白い。そんな今振り返る『TIME』の話、全国ツアーの話、デビュー前のちょっとした秘話、ファンクの未来、そして、新作『奇跡/夏陰/サナギ』について、軽快に楽しい雰囲気で今回も語ってくれた。

対談

スガ シカオ
×
Tetsuo Hiraga


NEW MAXI SINGLE
「奇跡/夏陰/サナギ」

01.奇跡
02.夏陰
03.サナギ
〜theme from xxxHOLiC the movie〜

AUCK-19009
¥1,260(tax in)

2005.8.10 in STORES

スガ シカオ レーベルサイト>
http://www.office-augusta.com/suga/

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スガ シカオ

−実際に3人しかお客さんがいない時期っていうのは?

S:ありましたよ〜、日本人ってファンク嫌いなんだもん(笑)。なので、昔からいい思いはしてなかったんですけど。あの頃は、大体固定メンバーが8人か9人ぐらいのファンクバンドをやってて、最初は本気でやってたんですけど、みんな働き始めちゃってからはグズグズにやってて、たまにライブハウスでやったりとか、友達の結婚式に乱入したりとか、そんなことばっかりやってたバンドがありまして。で、その頃からみんなファンクの曲は作ってくるんだけどポップスが少ないから、僕がポップスの曲を担当してたんです。『愛について』とかもその頃作った曲で。でね、あのぼやきを口にした東京国際フォーラムの時はね、その頃のバンドの奴らが来てたんですよ!だからそういうMCを多分してたんだと思う。

−「いつかは何万人の前でファンクをやりたいんです!」とも言ってましたが、それはやっぱり夢?

S:そうですね〜。大体ファンクをベーシックにした音楽をやってる人って一世代に一人ぐらいしかいないじゃないですか。その人が消えていくと、次の新しい世代の人が一人だけ出てくる。そうやって伝承されていってるんですけど、やっぱり作るのが難しい音楽なんですよね。で、好きだからってファンクだけやってても絶対にみんな振り向いてくれないから、やっている人はそこそこいるんだけどメジャーにほとんど上がってこないし、インディーズでもほとんど相手にされない。そういう世界、ジャンルなんで、なかなか一世を風靡するみたいなことには成り得ないんだけど、でも「いつかそんな風になったら良いな〜」って。ロックはちゃんと下の世代に伝承されていって、ピラミッドの歴史が出来るようになってる。ファンクとかブラックミュージックとかって、なかなかそういう風にならないですからね

−それっていうのは、“作るのが難しい音楽”だからっていう理由だけなんですかね?

S:あと、ファンクとかブラックミュージックやってる奴って自分勝手な奴が多いから(笑)。他人をリスペクトしたりする意識に欠けてる奴が多いんじゃないかって、最近気付いたんだけど(笑)、そういう一匹狼が多い。そう考えるとさ、ジェイムス・ブラウンもジョージ・クリントンもみんなやっぱり一匹狼、プリンスもそうだし。だからファンクの歴史ってバンドの歴史じゃなくって一匹狼の歴史だから。結局そういう人を見習ってやり始めると自分も一匹狼になっちゃうんだよね!それがファンクが歴史を作れない弱点だって最近気付きました(笑)。

−で、年始のツアー終了後は、もう今回の新作に取り掛かっていたんですか?

S:ツアー終了後は、ずっとデビューしてから休みをもらえなかったんで、1ヶ月ぐらいお休みをいただいてました。このままデビュー10周年に向けてイベントが多くなってきたりすると、また休みがなくなりそうだったので、でも“今回の新曲を作んなきゃ”っていうのがあったんで、ギターを持って海外へ、あちらこちら行ってて。そこで『夏陰』とかは作ったんですよ。ちなみに『夏陰』作ったのはホノルルです。あの曲はホノルルバージョンっていうのがあるんですよ。そっちが一応オリジナルなんですけど、今回収録されているのは東京に帰ってきてからリアレンジしたもので。

−その『夏陰』も『奇跡』も甲子園のテーマソングだったわけですが。

S:そうなんですけど、あんまりガッツリ、白球だ!高校球児だ!みたいな曲にするつもりは最初からなかったんで、意外と迷わずに作れて。オーダーもなかったんですよ、別に。なので、甲子園の曲っていうと、とにかく土とかユニフォームとかグラウンドに話がまとまりがちじゃなんですけど、そうじゃなくて、球児と、その家族と、恋人と、クラスメイトと、例えばベンチに入れない補欠の選手とか、そういうもっとでっかい輪の中の“夏”だったりとか“人の優しさ”を最初から狙って書きたいと思ってたんですよ。




だから甲子園の番組じゃないところで流れたとしても、聴いた人なりの何かに当てはまるような曲。それを思うのは簡単なんですけど、やるのはすごく大変でした(笑)。

−特に『奇跡』とかは、最初のサビ頭の部分は夏っぽくて爽やかなんですけど、そこからAメロに向かうところなんておもいっきりスガ節炸裂じゃないですか。その辺の遠慮のなさが良いですよね。

S:怒られてもいいんで、遠慮なく作ったほうが良いと思うんで(笑)。

−甲子園は前からよく見てたの?

S:見ますね。特に地方予選とか好きなんで。地方予選の最初のほうって、なんか学校も本気になってない感じが好きなんですよ(笑)。あれって、地方本選の準々決勝か準決勝ぐらいになると、ようやく学校が本気になって、学校休みにして「みんな応援に行け!」みたいな話になるんですけど、その前までは、みんな学校があるから応援にすら行けないから、野球部員と応援団だけですごくこじんまりとやってるんですよね。それがなんかすごく好きで。試合もなんか有り得ないような、バスケットじゃないんだから!っていうぐらいの点差で終わっちゃったりするし(笑)。

−ちなみにその甲子園の映像をバックに自分の曲が流れるのはチェックしてました?

S:もうバッチリでしたね!多分アレ以上のハマりはないです!俺の作品を抜ける奴はいないな、『熱闘甲子園』(笑)。あと5年はないな(笑)。

−その甲子園があった上で誕生した『奇跡』ですけど、ここまでのサマーソングって『SPIRIT』以来になるんじゃないですか?

S:そうですね。こういう曲は今回みたいな機会がないと書かないですからね。そういったところが悪いほうに出ちゃったのが『TIME』だったと思うんですよ。書きたいものだけをバランス考えないで書いちゃった感じなので。もうちょっとこういう『奇跡』みたいな要素があれば、カラフルで、マニアックで、すごく良いバランスだったと思うんですけどね。でも放っておくと、こういう曲書かないですからね、やっぱり。必要なんだけどあんまり書かない。こういう曲が重要なんですけどね、マニアックな曲を格好良く際立てるためにも。

−歌詞のイメージは?

S:歌詞はですね、最近の異常気象をちゃんと書こう!みたいな(笑)。暑すぎてイライラする感じを出したかったのと、“希望とか夢に満ち溢れている人は奇跡を望まないだろう”っていうのが僕の中であって。それより、“希望とか夢を嘘臭く感じてる奴だからこそ奇跡を望むんじゃないかな”っていうのをちゃんと正直に書こうと思って。そういうダークサイドなところもイーブンで書くっていうか、それはやめないように、ちゃんと貫こうかなって思ってます。まぁ世の中のほとんどの歌はダークサイドを書かないですけど、僕らの生活の中には確実にあるわけじゃないですか。だから僕はそれはちゃんと書きたい。そこは性格なんですけどね〜。「音楽は夢を与えるものだから、そんなものは書く必要はない」って言われたら、「あぁ、そうですね」って感じなんですけど。「でも僕は書きます」みたいな(笑)。まぁ「信じてもらいたいな」ってところから「正直に書こう」っていうところに繋がるんだけど。

−一方、『夏陰』ですが、この曲の雰囲気っていうのはスガさんの得意なところなのかな?って。

S:最近そういうのが定着というか、ある程度やってきたので、衣替えをしようという感じで、アレンジ、プロデュースもろとも東京事変の亀田さんに全投げして。オリジナルのバージョンは別にあって、それはいつも通り僕がやってるんですけど、今回のシングルに収録されている甲子園のバージョンは、僕が初めて楽器をひとつも触らずに完成したっていう。結果、“爽やか悲しい”みたいな雰囲気がよく出て。

−亀田さんとは以前からお付き合いはあったんですか?

S:お互いの仕事を知ってはいるんですけど、会うのは今回が初で。でも亀田さん、色んな雑誌で僕のレコ評とか書いてくれていたりして、僕が何をやりたいのかを分かってくれている人だなって、その文面から伝わっていたので、ある程度安心して今回はお願いしましたね。

−実際に仕上がったものを聴いてどんな感想を?

S:ほとんど注文なしだったんですけど、「これでバッチリです」っ言う感じでした。

−ちなみに『夏陰』の詞に関しては、どういう世界観を作ろうとして書いたもの?

S:ニュアンス的には『夜空ノムコウ』の、あれは冬の歌だったんですけど、それの夏バージョンみたいなものを書きたいと思って。でも今までにない新しい言葉の使い方とかは取り入れていて。実はこの曲の歌詞は一回書き直してるんですよ。それも良かったんですけど、なんか普通に良いだけな感じがしちゃって。で、もうちょっと〆切まで時間があったんで、書き直してこの形になったんですよ。なので、歌詞は気合い入れて書いてますよ、珍しく。

−実際に歌入れしてみてどうでした?

S:歌うのは難しかったな。未だにテレビとかで歌うと、へべれけになる時とかあるもん(笑)。

−そして、今回のニューシングルにはスガさん自身も大好きな曲『サナギ』が収録されていますが、これは映画の話ありきで?

S:そうですね。「主題歌に『サナギ』を使いたい」っていう話があったので、「それだったら全部作り直します」って言って。ただ僕、嬉しかったんですよ!『サナギ』がそういう形でメディアに乗っけてもらえるのがすごく嬉しくて。『TIME』について反省しているとは言え、やっぱり『サナギ』みたいな曲が、自分が一番突き進んでいく道!みたいなところがあるので、でもなかなかキッツイ曲なので、ラジオでもかかりにくいし、なかなかメディアには乗らないし、それが大きい映画の主題歌に選んでいただいて、しかも「やりたい放題、これは出来そうだぞ」っていう感じだったので、水を得た魚のようになって一日で仕上げましたね(笑)。

−こんな機会そうあるものではないと(笑)?

S:そうですね。こんだけやりたい放題にやって、それが色んな人の耳に届くことって滅多にないので。これは「本当に楽しいな」と思って作りましたね。なので、今作はもう僕の中では「『サナギ』のために出してます」ぐらいのね(笑)、感じではあるんですけど。

−ちなみにこの『サナギ』が主題歌になってる映画『劇場版xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢』は、どんな内容の作品なんですか?

S:原作は全部読んでるんですけど、オカルティックコメディーとか呼ばれてて。ただコメディーとは言いつつも、すごくメッセージ色が強い作品だと思いますね。ダメな人はダメかもしれないけど、なんかの宗教の経典に出てくるような話をものすごく噛み砕いて作っているような、メッセージ色の強い内容だと思いますね。なんか人を殺したりとか、レイプをしたりとかっていうことが当たり前になってるコミックの中で、全然反対側の正当性をメッセージ色として持ってるのってすごいなって。過激なほうに走るのはいくらでも可能じゃないですか、だけどその逆にわざと行ってるのが、僕は共感できたし、ある意味アバンギャルドだなって。

−ぜひ『サナギ』と合わせてチェックしてもらいたいですね。で、以上3曲入りのニューシングルのリリースもありつつ、今年はオーガスタキャンプ、10月に沖縄でやるんですね?

S:僕も自分のホームページ見て、「え〜!やるのぉ!?」みたいな(笑)。ビックリしましたけど。で、僕は沖縄は一回も行った事ないんで、初めてなんですよ。楽しみです。

−では、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

S:『奇跡』と『夏陰』はものすごく夏をテーマにしている感じがあるんで、夏の終わりに向けてこの2曲で盛り上がってもらいたいですね。夏の思い出と一緒に曲をしまってもらいたいというか。特に『夏陰』はね、何かの思い出の中にいてほしいと思う曲なので、そんな風に聴いていただけたら嬉しいなと思います。

Interviewer:平賀哲雄