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−今回『hotexpress』初登場という事で、まずTHE BACK HORNの歴史を紐解きたいなと思うんですが、事の始まりは98年7月に山田(将司)さん、菅波(栄純)さん、松田(晋二)さんの3人が出会ったことだと思うんですけども、どういった経緯で3人は出会ったんですか?

松田晋二(以下M):専門学校の同級生で、最初は栄純と将司が「何かやるべ」みたいな話を進めていたらしく、その頃もう1人(岡峰とは)違うベースの奴がいたんですけど、そいつと俺はその後に栄純から声を掛けられ「やろう」っていう話になって。で、軽いノリだよね。「とりあえずやろう」みたいな感じからスタートしましたね。

−軽いノリで始めたものが、どの辺から真剣にやっていく感じになったんですかね?

菅波栄純(以下S):やっぱり面白くなってきたのは曲を作り始めてからですね。バンドを組んですぐは何曲かコピーをやってたんですけど、「どうなのかな・・・」みたいな(笑)。俺とかマツ(松田晋二)は物凄い楽器が下手だったので。それで、そういう感じではあったんですけど曲を作り始めて。そしたら俺以外のメンバーはオリジナルを作るのが初めてだったらしくて、それでバンドが楽しくなって、ライヴを重ねて。

−なるほど。

S:キッカケって言うのは無いけど、だんだん「ライヴにお客さん来て欲しい」とか、「もっとグッと来る曲を作りたい」みたいな気持ちが自然に大きくなってきて。デモテープを録り始めた頃には、売らずに配っていたんですけど、一応作品を作ってるからだんだん意識は高まっていったと思うんですね。やっぱりレコーディングとかするとね、何回も良いものを見極めたりしようとするから真剣になってきて、それでインディーズの時の初めての音源を出すくらいにはもう「このバンドで凄い事をやりたい」みたいな気持ちになってましたね。

−結成からそこに辿り着く間にはどのくらいの期間が?

山田将司(以下Y):1年くらい。

−インディーズでデビューしてから結構早い段階で『FUJIROCK FESTIVAL』に出演してましたが、その頃には自分達の中でも「フジロックに出演できるくらいのバンドになってきてる」みたいな感覚はあったんですか?

Y:無い(笑)。

S:そういうのは無かった。そもそもフジロックがどういうモノなのかがその当時はあんまり分かってなかった(笑)。事務所の社長が「フジロック決まったぞ」って言った時に、あまりにも俺らのリアクションが薄くて後で嘆いてましたけど(笑)。

(一同笑)

S:それより、その後に言った「給料が出る」っていう話にすげぇ喜んで(笑)。まぁ当時はそんな感じでしたね。

−初めてフジロックに出演した時の印象を覚えてますか?

M:「客いねぇんだな」と思いましたね。僕らのステージの前には5〜6人とかでしたから、フジロックなのに。どこでもバンドの実力と共にお客さんはいるんだなって。なので、フェスを楽しんで、フェスの在り方がどーのこーのなんつーのは全く考えてなかったですね。

−最初はそんなに華やかなものでもなかったんですね。

S:むしろ自分らの位置を再確認した。「まだまだだな。これから行かなきゃ!」みたいなのを突きつけられた感じでしたね。

−そういった経験もありつつ、2001年4月に「サニー」でメジャーデビューするわけですが、メジャーが決まった時はどんな心境でした?

M:メジャーに行くタイミングでベースの奴が抜けたので波瀾万丈の幕開けって言うか、全然華々しくないじゃないですか。「待ってました!」っていう感じで始まる予定だったのに、いきなりどん底からスタートみたいになって、精神的にはかなり錯乱していた状態で、そんなに余裕は無かったですね。とりあえずバンドの存続と、出す曲とかも決まっていたので、曲を作りながら「今後どうするか?」みたいな幕開けがメジャーデビューっていう(笑)。

−前のベースが抜けてから岡峰さんが入ってくるまでの期間は?

M:(岡峰と)一番最初に会ったのが3月の時だったんですけど、もう2ヶ月の間くらいに色々探して一緒にやる事になって。だから期間的には短かったですね。

−岡峰さんはTHE BACK HORNに入る前は他のバンドにいたり?

岡峰光舟(以下O):バイトしてましたね。それがライヴハウスだったから、そこがみんなと会うキッカケになり。

−最初の3人の印象は?

O:スタジオに入った時には・・・気難しそうな人達だと思いましたね(笑)。「携帯電話も持ってねぇんじゃねぇか?」っていう。

M:それは持ってた(笑)。

 ロックフェスが毎年あたりまえのように開催され、毎年良いバンドが世に生まれてくるのも必然的になったぐらい、なんだかんだ言って今の日本のロックシーンは恵まれている。それ故にちょっとしたサバイバルというか、それだけバンドが生まれてくる中で奇抜さだったり、技術だったり、キャッチーさだったり、骨太さだったり、まぁ色んなものが求められ、そこで自分たちのスタイルを貫いて「良いバンド」と評価されるのが難しいシーンになったとも言える。そんな近年のロックシーンで、バンプだったり、アジカンだったり、サンボマスターだったりが世間に「良いバンド」と評価され、売れまくっているわけだが、個人的には「おい、こっち見ろよ」と世間に言いたいバンドがまだここにいたりする。山田将司(vocal)菅波栄純(guitar)松田晋二(Drums)岡峰光舟(bass)から成る“THE BACK HORN”、彼らがそれだ。

対談

THE BACK HORN
×
Tetsuo Hiraga


4th Album
「ヘッドフォンチルドレン」

01.扉
  02.運命複雑骨折
  03.コバルトブルー
  04.墓石フィーバー
  05.夢の花
  06.旅人
07.パッパラ
08.上海狂騒曲
09.ヘッドフォンチルドレン
10.キズナソング
11.奇跡

VICL-61567
¥3,050(tax in)

2005.3.16 in STORES



10th Single
「キズナソング」

01.キズナソング
02.夜空

VICL-35759
¥1,200(tax in)

2005.1.26 in STORES

THE BACK HORNオフィシャルサイト>
http://www.speedstarmusic.co.jp/backhorn/

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O:「持ってる」って聞いてビックリした。それぐらい人見知りしそうな人達だと思いましたね。

−やっぱり最初は警戒するみたいなところがあったんですか?

Y:警戒というか、馴れ馴れしいのが好きじゃなかったっていう・・・俺は馴れ馴れしかったですけど(笑)。

M:何も気にしてなかったんでしょ。

Y:だからそれだけ自然に「こっちはぬるまってるよ」っていう。

S:それが裏目に。

(一同笑)

O:端から見た印象はそういう印象だったと思うんですよ。

M:それはあるね。

−岡峰さんが正式メンバーになってすぐ、映画『アカルイミライ』の主題歌になった「未来」のリリースがありましたが、これは映画の話ありきで作られた曲?

M:そうですね。『アカルイミライ』の監督とプロデューサーの人から「お願いしたい」っていう話をもらって。どこかでそういう話がくる予感はしてたんですけど、「そういう話があったら絶対良い曲作れるな」っていうのもあったし。だからそんなに「どうしよう!どうしよう!」という感じじゃなく、話が来て、「自分らなりの映画の最後に流れてくる曲を作ろうぜ」っていう事で、わりと煮詰まって作ったっていうよりはパッと出来て「これ良いな」って感じでしたね。

−それまでに映像を意識した曲作りというのはあった?

M:いや、無いですね。

−それが初めて?

M:曲を作ってから映像が浮かんできたとか、ジャケットでそれの絵を描いたりっていうのはあったけど、まるっきり映像ありきで曲を作ったのはそれが初めてで、すごく新鮮に楽しくやれましたね。それで、映画の試写会でトークショーみたいなのをやった時が一番テンパりました(笑)。

−どんなトークショーだったんですか?

M:何故か栄純の恋話で終わったっていう。

S:あ、そうだっけ?

M:「未来」の歌詞の話とかをしてて。普通、映画に出てる人がトークショーやるんだったら分かるけど、「主題歌をやってる」っていうだけでトークショーやるのは初めてなんじゃないかなと思って(笑)。貴重な体験だったと。

S:でも、それだけ“ただのタイアップ”っていう感じじゃなくて、「映画と俺らとがしかっり繋がっていた」と言える関わり方で良かったなって思いますね。

M:向こうのスタッフも結構そう思っててくれたよね。

S:俺らもそういう気持ちだったし、熱い感じでやらせてくれたから良かったですね。

M:今でもすげえ感謝してますね、『アカルイミライ』のスタッフには、本当に。

−この年くらいからTHE BACK HORNの音楽と映像作品の関係みたいなものが密接になっていった印象が僕の中ではすごくあるんですが、自分達ではその辺はどう思われます?

S:今の段階ではそういった話が来て答えるっていう段階なので、意識的に映像と関係していくところまでは行ってないですね。こっちから発信したものを映像に絡めるっていうのは、「そういうのも作ってみたいな」って最近になって思ったくらいで。

−でも、やっぱり映像を連想させる音楽が作れてるから、そういう話がよく来るっていうのはありますよね?

M:そういうのもあるとは思うんですけどね。でも、「映像とコラボレーションしたい」という元で曲を作ってる訳でもないですし、「ひとつのTHE BACK HORNの良い特徴なのかな」っていうくらいでしか受け止めてはいないんですよね。ただ、これからも「面白そうな映画とかサントラの話が来たらやってみようかな」っていう気にはなると思うんですけど、俺らのやってる音楽の、バンドの道があって、たまにそういうのが飛び込んできて、そこで一緒にやってっていう感じですよね。

−その飛び込んできた映画の話の中でも大きかったのが『CASSHERN』だったと思うんですが、皆さんはあの映画にはどんな感想を持ちました?

M:俺は正直すごく力を使う映画だなと思いましたね。あらゆる思考やら感覚やら、本当に脳みそフル回転で。だから「あの映画を観たらしばらく他の映画観なくて良い」くらいの、監督・紀里谷さんの世界観が渦巻いてましたね。そういう意味では衝撃でしたね。

Y:メッセージ性溢れる映画だなと思いました。あと、本当に大変だなと思った。あの映画を仕上げるまでの体力とか集中力とかすごいものがある。



−「レクイエム」が使われているんで、あの映画にTHE BACK HORNの世界観を感じるのは当たり前なんですけど、それ抜きにしてもあの映画はTHE BACK HORNの音楽の世界観に近いものを感じさせる作品だったなと思うんですが、自分達ではどう思われます?

M:“人は何故争うのか”っていうところとか、もっと深いテーマが『CASSHERN』には流れてて、俺らの音楽も、人間模様って言ったら変なんですけど、人間を描いてやってきた部分もあるから、多少映画とバンド、音楽っていう違うところではあっても近い部分があったのかなっていう感じはしますけどね。

−例えば、あの映画のラストシーンとかは今回の「キズナソング」にも通じる匂いがするなと勝手に感じたりしたんですが。

M:多分それは通じてくるものはあるんじゃないですかね、色んなところで。『CASSHERN』じゃなくても、例えば『世界の中心で、愛をさけぶ』だったりしても。同じ事を言おうとしてるのかどうかは作ってる人によって分からないですけど、そういうのって「偶然的に実は一緒だった」っていうのが結構ありますよね。

−ちなみに『CASSHERN』の挿入歌となった「レクイエム」なんですが、これも『CASSHREN』の映像ありきで考えて作った曲ですか?

M:そうですね、台本を読んだり。

−あの曲が完成した時は相当の手応えがありましたか?

M:もう主題歌狙いで作ったよね。もう決まってたんですけど、宇多田ヒカルが主題歌っていうのは。

S:「その考え変わんねぇかな」くらいに。

M:そうそう!思ってた(笑)。「この曲をバックに“キャシャーン”が登場したら絶対格好良いのに!」みたいな事言ってたよね。

Y:言ってた、言ってた。


−「レクイエム」はどんな想いというか、感情をぶつけた曲だったんですか?

M:人間ドラマっていうか、人間の生きる死ぬとか、感情っていう部分では、THE BACK HORNがずっとやってきたテーマでもあったりして、それをまた映画の為にやるのは温め返しにもなっちゃうし、元々出てる曲を使っても良いくらいだったんだけど、「新曲で」っていう話もあったし、とりあえずひとつテーマをみんなで見つけたんですよ。それで、戦闘シーンの激しいアクションが飛び交う中で流れてくる音楽を作ろうっていう事になって。で、それから発信して「主題歌になれば良いな」っていう感じもあって(笑)。だからなるべく作品の世界観がどーのこーのよりも、もっとパワフルで強い感じの、戦闘シーンで燃えるような曲っていう風に考えて作りましたね。

−そういう考えもあってだと思うんですけど、ライヴで「レクイエム」を演ると、すごいエネルギーがそこに生まれますよね。

M:独特だよね、あの曲だけね。

Y:イントロが決めで始まるから、その気持ち良さがすごいかな。

S:緊迫感があるよね。

M:オープニング感っていうか、「始まるぞ!」みたいなジワジワ感がありますね。

−「レクイエム」は歌ってる側からするとどうですか?

Y:強いだけじゃない。強さももちろんあるけど、やっぱり弱さもあって、そんな気持ちで歌いましたね。

−夏フェスは『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』以外にも出まくってましたけど、最近のフェスは結構楽しめてる感じ?

M:まぁそうですね。最近はイベント毎に自分達の中でテーマを掲げてて、夏フェスとかは「楽しみながら演奏をビシッ!とやって」っていう感じではあったんですけど、最近は「どれだけ初めて観る人に打撃を与えるか」っつーのを考えますね。ライヴに対しての気持ちの入れ方とか、「どう聴かせるか」っていうのでやってるから、自分達の実感としては、年明けからやってきたライヴの方が充実感はすごくありますね。

−2005年ものっけから精力的に活動という感じで、1月26日にはニューシングル「キズナソング」がリリースされましたが、この曲にはどんな想いが込められているんですか?

S:色んな人、沢山の人に聴いてもらいたいっていう気持ちは今までで一番ありましたね。コミュニケーションを取ったりする事の喜びとか、誰かが傍にいるっていう事の苦しさとかを、「もう一回感じたい」っていう気持ちが俺の中にはあって。「ちゃんとそれを感じて生きていきたい」っつーか。「コミュニケーション取る事を面倒くさがりたくないな」といつも思ってたんですけど、再び確認して。そういう気持ちを聴いてほしくて。

−そういう曲を書きたいと思えたキッカケはあったんですか?

S:今回のアルバムを作ってて、後半くらいに「皆にお届けするような気持ちで曲を作ろう」っていう話になって、それで、「だんだん人と関わる事の苦しさみたいな事を曲にしたいな」と思って。あと、「自分が音楽をやっている理由とかを書きたいな」っていう感じでしたね。

−この曲の歌入れはどうでした?

Y:押し付けがましくは全然したくなくて。「な?素晴らしい世界だろ」くらいのタッチ、「素晴らしい世界やないか、コノヤロー!」みたいな感じじゃなくて。心掛けとしては語りかける感じ。なので、この曲は寂しい奴とかにすごい伝わるんじゃないかなと。結構自分を探ったところからもう一回自分を見て歌いましたね。

−あと、気になったのが「キズナソング」のジャケットなんですけど、あれは何をイメージされてるんですか?

M:「イキルサイノウ」という企画展をやって、その時に出展してくれたナガトさんっていうクリエイターの人がいて、その人の作品を使って「これどう?」ってデザイナーの人が持ってきてくれたんですよ。なんか安直に「キズナソング」だから例えば赤い糸で結ばれてるとかじゃなくて、「もっと深い意味を込めたいな」っていうのがイメージ的にあったんですよね。その時にそのアイデアを持ってきてくれて、「あー良いな」って思って。

−「キズナソング」のカップリングに収録されている「夜空」という曲にも触れたいと思うんですが、リードトラックになっても全然おかしくないような印象を持ちました。この曲の中にも“キズナ”というキーワードが出てきますけど、それはある意味「キズナソング」とセットみたいな感覚が自分達の中にあって入れた感じなんですか?

O:最終的にそれがあって「一緒にしたら良いな」っつーのもあって。でも歌詞的には「夜空」の方が先ですね。

−カップリングで“隠れた名曲”とか言われる曲ってありますけど、今後そういう存在になりそうな感じの曲ですよね。

M:そうですね。

O:そういうの多いですからね、THE BACK HORNは。


−(笑)

M:「B面をA面にした方が良いんじゃないの」って数々のシングルで言われてまして、それを前向きに捉えれば“B面も手抜きしないTHE BACK HORN”っていう事で(笑)。

−あまり感覚的にそういうのを分けて作ったりはしないんですか?リードトラックだから、そうじゃないからっていうのはない?

O:「これはカップリングだから」って思って作った曲は無いと思いますね。

M:良い意味で全部本気でやっちゃうんで。

−続いて、今回のシングル「キズナソング」も収録されているニューアルバム「ヘッドフォンチルドレン」について触れていきたいと思います。まずこのタイトルにどんな意味を込めているのか教えてください。

S:このタイトルを考えたのは俺なんですけど、俺は“チルドレン”という言葉に“俺らの世代”っていう意味を込めたかったんですよ。誰と居てもどんなに賑やかな場所に居ても一人を感じる感覚っていうのが、“俺らの世代”ってすごく強いんじゃねぇかなって思うんですよ。だからどこに居ても部屋の隅っこで1人で膝を抱えてるような気持ちなのかなって。でもそれを案外上手く繕えちゃったりするズル賢さっていうか、技も持っていたりして、それでその場を楽しく繕ってしまってる自分に対する罪悪感もあるし、繕っていく事でどんどん本当の自分を見て欲しいっていう欲求がたまっていくんだけど、一人ぼっちで膝を抱えてしまう、そういう世代だなって。それが、街をヘッドフォンして、大袈裟に言ったら外界を遮断しながら自分のプライベートというか、自分の枠に閉じ込もったまま歩いていく姿とかぶりまして。それを“ヘッドフォンチルドレン”と名付けたんですよ。だから本当は物凄くコミュニケーションしたい欲が強い俺達が殻から一歩出ようとするサバイバルみたいな、そのサバイバルの助けになるようなアルバムにしたいなっていうのはありましたね。



−その「ヘッドフォンチルドレン」なんですけど、このアルバムが完成した今の率直な心境は?

M:「今までのアルバムの中で一番楽しい、聴いて楽しいアルバムが出来たな」っていう感じ。それはもちろん歌詞の面白みとかもあるけど、すごくサウンド的に鳴ってるって言ったら変ですけど、すごく楽しんでる感じが全面に出てて。もちろん「ヘッドフォンチルドレン」っていうタイトルの曲とかは、ある意味、今のリアルな場面を描いたりしてるけど、印象としてはすごく外に向かって俺らから放出してる感じがあるから。で、なおかつ俺らも楽しんでる感じが出てるから、それはやっぱり今までの中で一番抜けが良いって言うか、曲が外にガッ!と向かってる感じがありますね。そこにはもちろんバンドのエネルギーもあるし、曲のエネルギーもあるんですけど、印象としてはそういう感じがあります。

−「ヘッドフォンチルドレン」の収録曲についても触れていきたいんですが、まず1曲目の「扉」は読んで名の如く、扉を開け続けて生きていくっていう、この曲も生命力をすごく感じる曲だったんですけど、自分達的にはこの曲にどんな想いを込めてるの?

Y:「キズナソング」と同じような感じになっちゃうかもしれないんですけど、「愛って何なのか」っていう話で自分なりの愛を、自分に対しても感じながら色んな扉を開けていくっていう。

−最後に“柔らかな扉”という言葉が出てきますが、絶対的に最終的には希望のエッセンスを入れるっていうのが何となく今のTHE BACK HORNの世界の中にあったりしますよね。

Y:“柔らかな扉”は女性の性器だったりするんですけど、絶望だけに浸ってるようなテンションじゃなくなったんですかね。

M:「扉」は出来た瞬間から「これは1曲目だな」っていう匂いが出てて。最終的に曲順並べる時に色々順番を変えたりとかもしてたんですけど、最終的にやっぱり1曲目っていう感じになりましたね、音の印象通り。

−2曲目「運命複雑骨折」に関してはサウンドも歌も詞も全ての面に対して苛立ってるなっていうのを感じたんですが(笑)、けっこうフラストレーションを爆発させて作った曲なんですか?

M:元は別にそういう訳じゃないんですけどね。不思議と歌詞が出来上がったらそういう印象になったっていうのはありますけど。

−“気付けば誰もが立派な商売人”っていうフレーズとかが良いなって。

M:そこは良いですよね。

−やっぱりそういうのを強く感じるから詞にしてるわけですよね?

S:発声して気持ち良いっていうのも大事だから、書きたい事と気持ち良さと分かりやすさとか、色々なものが混ざり合ってるから一言では言えないんですけど、単純に曲に引っ張られて出てきた言葉というか。でも俺が書きたかったのはそういう事ですね。歌い続けていくとか、表現していくっていう、複雑骨折したかのような運命を歩む痛みの中から歌が生まれてくると、やっぱりゾクゾク来るというか。ヒリヒリした所から生まれてくるモノ、常にそういう事も歌いてぇなっていうのはありますね。

−続いて、シングルにもなった3曲目「コバルトブルー」ですが、この曲にはどんな想いやイメージが?

S:この曲は鹿児島に行った時に知覧町の『知覧特攻平和会館』っていう、特攻隊の基地だった場所を見に行った時の直感を得て作ったんですけど、想い的には、何がどうだか分からないけど自分らは結局「行こうぜ」っていう事ですかね。「行ってどうなるか分からないけど行こうぜ」っていう。

−すごい潔さがある感じの曲ですよね。

S:自分の背中をポンと押してくれるような曲にしたかったので。

−「コバルトブルー」は歌ってみてどうでした?

Y:まさに「行こうぜ」っていう感じですよね。戸惑いが無く「行く!」みたいな感じだった。

−この曲はやっぱりライヴで映えますか?

M:そうですね。逆にこの曲の場合、自分達が先走ってガーッ!て行き過ぎるとこの曲の味が出ないので、意外とライヴでやっていて気持ち良さそうに見えて、もっとシビアっていうか。

−力の加減というか?

M:そうですね。その演奏の仕方ですかね。それが何気に難しいなと思いますよね。

S:やっぱり緊張感とか切迫感が肝だから、バッ!て飛び出す時の緊張感とか切迫感を表す時には、自分らが演奏してる気持ち良さにかまけてグダグダになると良さが出ないんですよね。


−続いて、4曲目の「墓石フィーバー」ですが。

S:1曲1曲いくんですね(笑)。よしっ!行きましょう。行ってみましょう!

−(笑)。曲詞共に遊びを感じたんですが、「墓石フィーバー」はどういう発想から生まれた曲なんですか?

S:これはもうエンマが出てきたんですよ。こういう曲の場合、それこそ本当にメロに対して仮で歌詞を付けて歌ったりする時に出てきた言葉がわりと使える事が多くて、あんまり頭で整理すると格好良くならない曲は瞬発力が大事だから、瞬発力で出てきた言葉をノートにつらつら何ページも書いて、その中から拾って作った曲です。

M:この曲とかはかなり新しい、この「ヘッドフォンチルドレン」ならではの聴きどころだと思います。これを何も考えずに意味とかを求めずにただ聴いていくのが良いかなと。

S:それこそ意味を聞かれたら一番困るんだよね。その辺は歌詞にも出てくる「ええじゃないか」で通して欲しいんですけど。

M:通して欲しい(笑)。

−ライヴで聴くのが楽しみですね。続く「夢の花と」と「旅人」に関しては、土屋昌巳さんと共同プロデュースで作られてますが、それぞれ土屋さんとどんなやり取りをしながら作っていったんですか?

M:原型が出来てスタジオに一緒に入って。土屋さんは俺らと一緒にギター弾いてたんですけど、やっぱりその印象がデカくて「夢の花」とかは元にあった俺らのデモよりはもっと色気が出て、まさに「むせ返る夏の暑いアスファルトに冷たい雨が降ってる」みたいな、そういうイメージになりましたね。俺らが持っていない土屋さんのムードがすごく反映された2曲だなと思って。これはこれですごく新しい部分を引き出された感じがありますけど。

−続いて、「パッパラ」。これは僕の勝手な読みなんですけど、仮タイトルがそのままタイトルになった・・・?

M:そうです!

−イメージ的には踊れるロックをイメージして?詞の感じもそうですけど。



S:要は「恋がしてぇなぁ」みたいな感じですね。

−山田さんはこの曲に関して歌ってみて新鮮味などありました?

Y:歌唱面では新鮮ではありましたね。仕上がりのイメージとしては、まさにライヴで俺らががむしゃらにやってて、お客もがむしゃらに踊っててみたいな、ただその感じを求めてましたね。

−続いて、「上海狂想曲」。ベストネーミングというか、「このタイトルしかないだろう」というような感じの曲ですが。

M:ドラ鳴っちゃってますからね。

−この曲はどんなイメージを膨らませて作ったんですか?

M:この曲は、まず何年も頭の中にあったリフがありまして。で、その中国っぽいリフにスポットを当てて、今回めでたくやっとそのリフが曲になりまして、良かったですね。

−各パート、演奏のし甲斐がある曲じゃないですか?

M:けっこう難しい・・・って言ったら変なんですけど、冷静に考えちゃうと難しい(笑)。かなり今回のアルバムのバランスは難しかったっていうか、すごく冷静にシビアにやる曲と、そうじゃないテンションの曲をやるのとっていうのは、本当に右脳と左脳の使い方がかなり大変なんですよね。だからこの曲とかは、『ろくでなしBLUES』のケンカに行く時の気持ちみたいなのになれれば良いんですけど、なかなかそうもなれなかったりする時には大変ですね(笑)。

−すごい例えですね(笑)。

S:でもそうだよね。

−鬼塚なんかと抗争する前みたいな。

M:そうそう。あれだけ金属バッド持ち歩いてたら絶対通報されるだろうっていう(笑)。「どこから持ってきたんだ、その棒は!」みたいな物をいきなり持ってたりする感じとか。

−続いて、タイトルトラックである「ヘッドフォンチルドレン」ですが、この曲はTHE BACK HORNのイメージに無い曲調というか、シンプルな構成ですよね。

S:“ヘッドフォンチルドレン”って、俺はまさに自分がそれだと思うんですけど、その日常というか。それが“から明るいレゲエ調”、から明るさっていうのは、街のネオンとか賑やかさを象徴してて、そこを独りぼっちで歩いてるような気持ちですね。

M:最初にそれを栄純が弾いてきた時に、もちろんTHE BACK HORNの中でもすごく新鮮だし、今までだったら「えーこれどうなの?」っていう感じとか多分あったと思うんですけど、アルバムの制作途中でそういう新しい部分を探ってて、その中で「一見裏打ちで軽快なようなんだけどジメッとしてる」みたいなのが俺らっぽいなっていう風に感じて。だから聴いて驚く人もいるだろうけど、またTHE BACK HORNの新しい部分を植え付けられたら良いなっていうのもあって。あと、この曲は物悲しい感じがすごくしますよね。スネアーの所なんかは抜けてて爽快なら良いんだけど、ベン!とか鳴って、ジメッとしてるのは良いなと思うんですよね。

−そして先ほどお話を伺った「キズナソング」の後に「奇跡」が収録されてる訳ですが、この曲もまた3月19日から公開される映画『ZOO』の主題歌になってますよね。これは映画と曲、どっちが先だったんですか?

M:これは同時進行で進んでて、映画の話も来つつ、自分達もアルバムを作っていて。で、激しめの曲が先に出来てて、夏過ぎ頃にもっと新しい方向性がないかなって探してる時に、「ヘッドフォンチルドレン」「キズナソング」「奇跡」が出来て。で、その映画の話も来つつ、「俺らの中で一から作るのもアリだけど、今全く違うベクトルで進んでる曲を当てはめてみても面白いんじゃないかな」っていう風になって。それで「扉」を先方に「どうですか?これはピッタリでしょう」って言ったりもしたんですけど、向こうのイメージとしてもうちょっと“希望”っていうか、日差しが差し込む感じで映画が終わりたいっていうのもあって、じゃあ「奇跡」かなっていう感じになって。もちろんその時は「奇跡」っていう歌詞も無かったし、全然まだ決まってなかったんですけど、そこからその映画を観て、「元々この曲で書きたいな」と思っていたテーマ、巡り巡って繋がってるっていうテーマを書きたいなっていうのがあって。

−具体的には?

M:色々あった奴が防波堤で「色々あって最悪だな」って言って釣りをやってるんですよ。そしたら魚が釣れれば良いんだけど魚なんて釣れなくて、ビンを釣り上げたらその中に手紙が入ってるんですよ。その手紙を読んだ時に、またそこから自分は立ち上がっていけたみたいなストーリーが自分の中にあって。で、それを「今、歌詞に出来ればな」と思いながら映画を観てたら、これはちょっとリンクしてる部分があるなと思って。大きく言ったら生命で、そこには偶然も必然も全部ごちゃ混ぜになってて、ひょっとしたらもう死ぬのも、『カザリとヨーコ』(映画『ZOO』の中の1作品)では妹が代わりに死んじゃったりとかっていうのがあったりするんですけど、「そういう死ぬとか生きるのかっていうのも全部ひっくるめた繋がりになってるストーリーなのかな」と。そこが上手く合体してまして。で、元々あった「奇跡」っていう仮歌詞も活かしながら、自分の書きたかったテーマと映画が上手く合体して。だから今までとは全く作り方も違うけど、結果的に「すげぇ良かったな」と思って、それでアルバム「ヘッドフォンチルドレン」の新しい、「キズナソング」で一回締まった後にまた新しい道に向かうっていう部分も出来たし。もう全部に良かったなと思いますね。

−以上、アルバム収録曲全11曲について語っていただきましたが、このアルバムを引っ提げたツアー『「ヘッドフォンチルドレン」ツアー〜産声チェインソー〜』がすでに決定してますよね。どんなツアーにしたいと思いますか?

M:「この曲、ライヴで聴きてぇな」っていうのも、これを聴いたリスナーとかは感じると思うし、それをやりつつもやっぱりアルバム中心のライヴになると思うんで、それを軸にどう感動できるライヴを作れるか。で、それとは別にバンドの体力的にもっと各々のプレイも見直しつつ、ツアーでどれだけバンドの力が付けられるかっていうのも試すところではあるし。それを踏まえた上で「今までの中で一番良いツアーにしたいな」っていうのがありますね。やっぱりアルバム毎のツアーっていうのは、そのアルバムによってもちろん変わってくるし、テーマとかも変わってくると思うんですけど、今回のアルバムも一番最初にあったバンド感とか、「バンドのエネルギーをガッ!とアルバムに入れたい」っていう想いがそのまま残ってひとつのアルバムになったから、それをまたツアーでも出していきたいですよね。各公演、良いライヴにしたいなと思います。

−「キズナソング」を生ストリングスで聴ける公演はあるんでしょうか?

S:さぁ・・・考え中。

M:ひょっとしたら全公演生ストリングスでやるかもしれない、そんなゴージャスなツアーになるかもしれないですし。今まではストリングスが無い状態でライヴでやってるんですけど、それはそれでまた良い感じですし。これからそれは考えていきます。

−楽しみにしてます。それでは、最後に読者の皆さんに1人ずつメッセージをお願いします。

S:誰かの役に立てれば嬉しいですね、自分らの音楽が。そんな事ちっとも思った事も無かったんですけど、最近思いますね。

Y:同じ事を言おうとしてたんですけど・・・。

S:ヒュー!“キズナ”!

(一同笑)

Y:(「キズナソング」のイメージが)軽くなるから(笑)。まぁ「ヘッドフォンチルドレン」を躊躇わず聴いてほしいですね。「今のTHE BACK HORNが表れたアルバムになってるんで聴いてくれ!」っていう感じで。

O:ライヴでやるのが楽しみな曲が多いので、ツアーに来ていただけたら良いですね。

M:本当に「音楽っていうものを有効に活用して欲しいな」っていうのはずっと思ってるんですけど、このアルバムを聴いてちょっとでも一歩踏み出せるような、今まで出来なかった事が一歩踏み出せるような気持ちになってくれたらすごく嬉しいと思いますし、そこまで傲慢に思わないとしても普通に車で流して聴いたり、家で聴いてくれるだけでも十分楽しめるアルバムなので、「ヘッドフォンチルドレン」、聴いてほしいですね。

Interviewer:平賀哲雄