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−−今作の「初めて出会った時と 同じように恋してる」みたいなフレーズを、僕は本当に久しぶりに耳にして。今の時代にはあまりに浮いてしまう感覚だから、ちょっと忘れていた響きだったんですよね。で、驚いたのが、そんなロマンティックでピュアな世界観を持った曲のタイトルが『夢から醒めて』になっていたことで。この感覚を忘れて過ごしてる日々の方が“夢”ってことか!って。
宮沢和史:そんな風にいろんな解釈をしてもらえるっていうのは、嬉しいですね。「こう聴いてほしい」っていうのは何もないので。いろんな人が自分のストーリーを被らせることのできる曲を作りたいので。ただ、最近思うのは、僕らが子供の頃に比べて今は本当に何でも物があるし、便利だし、豊かだし。遠い外国にいる人にもね、携帯電話で「好きだよ」って言えたり、奥さんから「プラダのバック買ってきてよ」って伝えられたり(笑)。でもなんか忘れてるだろうなって薄々思ってて。この前、ブラジルの作詞家 ビニシウス・ジ・モライスっていう人の回想映画の試写を観たときにハッと思ったんだけど、何を便利さと引き替えに無くしたのかって言ったら、ロマンス。ロマンスっていうのはポエム、詩。それを作詞・作曲家として僕は書きたいと思って。ロマンスだけじゃ生きられないけど、ロマンスがないと生きられないですから。
−−そのロマンスを忘れてしまった人たちに『夢から醒めて』がどう響くのか、とても興味があって。今のシーンには無くなっちゃったモノがこの曲のようにも感じますし。
宮沢和史:ラディカルなモノっていうのは、過激であるとか、刺激的なモノだってずっと思っていました。なぜならば、そういうモノを聴いて育ったから。ジョン・レノンとかドアーズとかジャニス・ジョップリンとかU2とか。それで、敢えてノイジィなモノ、過激と感じられるモノを目指したり。でも今思うと、過激であるとかノイジィであることがラディカルではなくて。優しい誰でも使う言葉が心に刺さることもあるだろうし、さっき名前を挙げた人たちの音楽ももう一度よくよく聴いてみると、そこには優しさがあるんですよね。昔は彼らの音楽を難しく解釈していたから、気付けなかったんだけど。
−−あの、僕が最もTHE BOOMに衝撃を受けたのが『手紙』という曲で。あれこそ当時の時代においてはラディカルな曲だったと思うんですが。
宮沢和史:あの曲が好きな人はね、変わり者が多い。
−−(笑)。
宮沢和史:本当に多いんですよ。音楽家に多い。嬉しいですね。あの曲はテレビ出演が決まってから書いたんですよ。「ミュージックステーション」だったから生で、しかもトリっていうのが決まって。それで生まれたのが、あの問題作(笑)。そんなヒットするような歌じゃないし、不快に思った人もいるだろうし。でもあの曲も僕は大好き。誰もやってないし、ポエトリーリーディングで「ミュージックステーション」でトリなんて今後もないだろうし、伝わる人に伝わったし。だからとても満足してるんですけど、「伝えよう、伝えよう」って思ってやってましたね。でも常にそのときそのときのロック、今43才の男にとってのロックって何だろう? そこはTHE BOOMのひとつの基準になっています。ずーっと初期衝動の中で、パンクやロックのスタイルを貫くバンドもいるし、それは格好良いと思う。「すげぇな」って。でも俺はどっちかと言うと、その年その年の年齢にできる一番エッジの効いてる音楽をやりたい。それが今は優しさだったりするんです。
−−一方『All of Everything』は、ビートを大事にしたポップバンド時代のTHE BOOM、元々4人が持ち合わせていたグルーヴが出ちゃってる感じがします。
山川浩正:僕もそう思っていて。出ちゃってる感が程よくて良いなと感じてるんです。「そういう時代もあった」っていう繋がりが見えますよね。自分たちがやってきたことを受け継いで、その進化系が20年後の今出せるっていうのが面白いなと思ってます。
小林孝至:これが10年前にあったらまた違ってたと思う。今だから出せたグルーヴというか。それが何で今出てきたのかは答えられないんだけど(笑)。
−−この曲がTHE BOOMのライブで初期ナンバーと顔を並べて披露される場面も観たい気もするのですが。
宮沢和史:去年、20周年に向けてどんな音楽を、どんなライブをやったらいいのかずっと考えていて。いろんな方法があると思うし。ある過去の視点に戻って懐かしむっていうのもあるし、全く今までのファンの人を裏切って全然違う方へ跳んでいくやり方もあるし。そんなことを考えていたときにね、3本の再結成的なライブを観たんですよ。ひとつはMUTE BEATの約20年ぶりのライブで、代表的なメンバーが全員集まってライブをやったんですね。物凄く格好良かったんです。その直前にはLA-PPISCHが久しぶりにやるライブを観に行って。それは、結果的にキーボードの上田現ちゃんにとって生前最後のライブになっちゃったんですけど、それも物凄いライブで。満杯でね、建物が壊れるんじゃないかっていうぐらい盛り上がって。もうひとつ観たのがポリス。僕が学生の頃から一番良く聴いてて、世界で一番好きなバンド。俺たちの初期の音楽にすごく影響を与えたんだけど、27年ぶりの来日公演だったんですよ。懐かしい感じなんだろうなと思って行ったら「全盛期より凄いんじゃないか」って思うぐらいのライブを見せられちゃったもんだから、やっぱりTHE BOOMももう一回やるんだったら懐かしいのだけは嫌だと思いましたね。
懐かしい、みんなが聴きたい歌をやれば喜んでもらえるのかもしれないけど、それでは多分、本当の意味で満足をしてもらえないんじゃないかって。THE BOOMは常に新しいモノを取り入れて来たし、バカにされたり笑われたりしながらも、誰もやらなかったことを信じて。『手紙』もそうだし。それで「なんでそんなことするんだ?」って言われながらも進んできたんだから、戻っちゃいけないだろうなと思って。だから新しいTHE BOOM。それは今話した3本のライブから教えてもらいましたね。人は経験とか勉強を積んでいくと何でもこなせちゃうし、何でもすぐ判断しちゃうように無意識になってく。それでつまんなくなっちゃう。そんな姿勢で20周年を迎えたらとんでもないことになりますからね。
−−『All of Everything』の中にも「偽りのない言葉を 降り止まない欲望を 汚れのない青春を 歌い続ける」といった、前を向いた、THE BOOMの意思表明のような言葉がさりげなく綴られています。
宮沢和史:人というのは達観しない。どんどんどんどんバカになっていくし、理性って構築されていくようで解(ほど)けていってるような気がするし。どんな風に歳を取ったとしても。それに気が付いたんですよね。だから「降り止まない欲望」っていうのはこれからもずっとあるし、みんなの幸せを、自分の幸せを願って、それを歌にしたいっていうのは100%間違いないから、それだけは歌ってるぞと。
−−今でもそうした熱い想いや新鮮な感覚で20年間やってきたバンドの活動ができるって、奇跡的なことだと思うんですが。
宮沢和史:その通りです。みんな元気でずっとファンの人たちの前に立てるなんていうのは、奇跡みたいなことでね。しかも今回は3年も休んでいて、なのにステージが用意されている。最初は自分たちがやりたいようにやって「これは俺たちのモノだ」って思ってた。でもそんなのとんでもない。間違いなくみんなのおかげであって。だから物凄く気合い入ってますよ。山川がよく言うんですけどね、今までの20年間の歴史の中で一番格好良いTHE BOOMを見せたい。これが今の4人のキーワードで。20年間の自分たちと戦って、こっちの方が格好良いって言わせなきゃいけない。そこをどうするか? 4人それぞれに考えているところだと思います。
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