あまり世間には知れ渡っていないことかもしれないが、BoAというアーティストは、音楽に対して実にストイックで、「人に届く、心に残る音楽を歌う」ことを夢としている根っからのアーティスト、シンガーである。そんな彼女が、例年のアリーナツアーではなく、ライブハウスツアーをこうして実現させたということは、BoA本人の想いがそのまま反映されたということになる。もっと近い距離でみんなの顔を見つめながら心を込めて歌う。その想いは、彼女の二十歳の誕生日となったこの日のライブから顕著に何度も感じることができた。

ギター、ベース、ドラムス、キーボード、パーカッション、マニュピレイター、女性コーラス×2といったビッグバンドによるダイナミックでアダルティな香りを漂わす演奏に包まれながら、黒いスーツ&シルクハット姿で登場したBoAは、若さに任せた力強さとはまた違った、確固たる自信と意思を感じさせる力強さでもって『LISTEN TO MY HEART』という誰もが知る大ヒット曲を、今まで誰にも見せたことのない、余計なことに左右されない剥き出しの才能と実力、感情でもって熱唱。オーディエンスは圧巻。そして興奮、感動の拍手と歓声。映画『シカゴ』さながらの衣装に身をまとったダンサーたちの登場と共にありあまる想いを歌声に乗せて爆発させたのは『VALENTI』。まるで真夏。しかも亜熱帯のそれを想起させる熱い滾りが早くもこの会場中に充満していく。そんな凄すぎる、そして研ぎ澄まされた彼女の、歌声ひとつ、動きひとつに逐一反応してしまう僕らの心と体。
二十歳のバースデイに相応しい大人な一曲、そして遠慮なく彼女の嗜好が形にされたナンバー『DO THE MOTION』。この曲をスムージィに、そして最後はみんなの度肝を抜くぐらいソウルフルに歌い上げると、「こんばんは!二十歳のBoAです!」と元気よく今日最初の挨拶。今夜こうして自分の誕生日にこれだけの人が集まってくれたことに感謝するBoA。そして彼女にとって20代最初となるライブは、より一層、彼女の中にある大人の女性を体現させるナンバーの畳み掛けへ(『soundscape』『Your Color』)。更には、情感をたっぷり込めて、映画『ノッティングヒルの恋人』でおなじみの『Ain't no sunshine』を、いつか必ずこういった場で歌おうと心の中に取っておいた大切なその曲を、まるでMTVのアンプラグドライブでも観ているかのような、ハイクオリティで大人っぽいアレンジでもって披露。イスに腰を掛けながらもその手で力強くリズムを刻みながら、ソウルフルな「そこまで声、出ちゃうのね?」と聴き手を驚かすぐらいの声で歌い上げていく彼女の姿は、もはや世界標準以上。凄まじい迫力である。誰もが口々に「すごい」「すごいね」。もうそれしか言えないのだろう。よく分かる。
一度退場したBoAを再びステージへ招き入れる情熱的な音楽とダンス。それに応えるように彼女は、コケティッシュな白とピンクのミニドレスに身をまとって『make a secret』の奏でと共にステージに再登場。ミラーボールも回転して、今夜の宴は、大人の格好良さに僕らを酔いしれさせていく。そしてライブ中盤、彼女は僅かな光とピアノの音色だけを頼りに、15才当時、初めて自分で日本語の詞を書いたナンバー『Moon&Sunrise』を披露してくれたのだが、この曲とこれの次に披露された『キミのとなりで』の2曲は、正に今回のツアーのコンセプトの中で最も彼女が体現したかったモノ、ライブテイクだったのではないだろうか。シンプルな音だけをバックに丸裸になった彼女の歌声は、もはや「すごい」なんて言葉では決して足らないほどに情感に満ちた、感動的な素晴らしい響き方、そして想いの伝わり方を魅せた。彼女の夢はある意味、この瞬間に結実していたと言っても過言ではない。
そんな彼女にとっても僕らにとっても有意義だった今夜のライブ、最後はやっぱり明るく盛り上がっていこうということで、『七色の明日〜brand new beat〜』『KEY OF HEART』を立て続けに、みんなと歌いながら、踊りながら、和気藹々と展開。「この曲だけはみんなと絶対歌いたい!」そんな想いを口にして『KEY OF HEART』をみんなと歌うBoAの笑顔、これが見れただけでこのライブの価値は十分高い。そしてノリにノって、あの久保田利伸の『LA.LA.LA. Love Song』のカバーをこの場で再現。これまたプレミアモノのライブテイク。もちろん「ララララ〜ララ〜ブソーング♪」はみんなで大合唱。そしてこの上なくピースフルな空気が流れたところでこのキラーチューン『QUINCY』。完璧な畳み掛け。そしてその歌声もクールでキュートなダンスも抜群なキレで魅せるBoA。もう誰もが感激である。

二十歳の誕生日。アンコールでは、新たな旅立ちを歌った曲『Everlasting』を熱唱。そして花束を持ったm-floの二人が「三十路のm-floで〜す!」と言ってステージに登場と、とにかくスペシャルな展開が。もちろんm-floとはあのコラボ曲『the Love Bug』を生再現。BoA自身も驚いちゃうぐらいの大盛り上がり、大声のコール&レスポンスが繰り広げられた。で、更なるサプライズ。バースデイケーキ、もとい、バースデイ・シャンパンタワーの登場!VERBALと二人でそれにシャンパンを注ぐとグラスの中は青く光り、BoA、大興奮!で、VERBALがキッカケを作ってこの会場にいる人全員で『Happy Birthday To You』の大合唱!いやぁ〜美しい光景であった。BoAちゃん、誕生日おめでとう!!
改めて今回のツアーで、自分のことを、自分の歌を、これだけの人が待って聴いてくれていることを実感したと語る、そんな今のBoAの心境にピッタリな歌が彼女の口元から溢れた。『コノヨノシルシ』。みんなのあたたかいハンドクラップに包まれながら「地図もないのにめぐり会えた」と歌い、一人一人と目を合わせ、手を振りながら、みんなの存在を感じて自分の存在を感じるBoA。「僕にとって君はかけがえのないコノヨノシルシ」。BoAがみんなに向けてそう歌ったようにみんなも彼女に対して同じ想いを巡らせた。そんな特別なキズナみたいなモノを誰もが体感する中、自身初の失恋ソング『Winter Love』に目一杯の想いを込めて彼女は熱唱。10代最後のシングルナンバーとなったこの曲に言葉以上の想いを溢れさせて歌う彼女に心を締め付けられる僕ら。この曲のフレーズ通り、彼女の頭上に舞い降る100億の雪を伝った想いは、僕らの胸に強く響いた。14才でデビューを飾り、今日で二十歳を迎えたBoAだが、この6年間を通して彼女は本当に国や言葉の壁を越えて直接僕らの心に響かせる歌を手にしたと、断言していいだろう。彼女はこれからも、いや、これまで以上に想いに満ちた歌声を、音楽をいくつも僕らに届けてくれることだろう。
追記。「大切な人がそばにいるってことを忘れずに」と、BoAはダブルアンコールにスペシャルアレンジを施した『メリクリ』を披露した。最後は彼女の声が持つ最大の魅力“あたたかさ”に包まれて、僕らは、今日は彼女のバースデイなのに、自分たちのバースデイのように楽しい、嬉しい気分にさせてもらうのだった。
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