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SET LIST

01.GANG OF LOSERS
02.LOST IN THE PLOT
03.WE CAN HAVE IT
04.22:THE DEATH OF ALL THE ROMANCE
05.END OF A HOLLYWOOD BEDTIME STORY
06.THE SECOND PART
07.PINNED TOGETHER,FALLING APART

THE DEARS 『canada WET』
2005.5.14(SAT) LIQUIDROOM ebisuにて。



 とにかくもうすんごい人。三宅島の人口・・・いやいや。量もそうなんだけど人種がまたすごい。日本人は勿論として、アメリカ人、イギリス人、そしてカナダ人と・・・。すいません、自分嘘付きました、正直区別出来ません。ともあれ、そんな多民族あつまるLIQUIDROOM ebisuで今夜開催されますイベントは題して「canada WET」。カナダで人気を集める5組のバンド、カナダの大御所バンドや世界的に人気なバンド、そしてブレイク前夜的なバンドを集めて行われたこのイベントは、想像をはるかに上回る程の人気だ。確かに近年、あのAvril LavigneやSUM 41、Simple Planといったカナダ勢が大きくフィーチャーされ世界中で大ヒットを飛ばしているのは事実だし、注目度が高いのは充分承知の上だったのだが、足の踏み場すらない程にパンパンに、しかも前の外人がでかくて前方が全く確認できない、なんて状況はまった・・・と愚痴臭くなってきたが、ともあれTHE DEARS。本国では既になかなかの人気バンドで、ここ日本でも5月に発売されたアルバム『NO CITIES LEFT』でデビューしたばかりの注目株である。宣教師の息子であるVo.マレイ・A・ライトバーンを中心に活動する6人組のバンドで、その『NO CITIES LEFT』のジャンルで括ることの出来ないオリジナリティ溢れる楽曲が、日本の音楽誌やコアな音楽ファンを中心に高く評価されている。新しくも懐かしい、奏でる音の暖かみと湿り気帯びたボーカル、丁寧に作りこまれた構成と全体を覆う暗く冷たい雰囲気。何か言葉にすると矛盾だらけのTHE DEARSだが、聴いて頂ければ自分が言っている事、というか言わんとしている事は伝わるんじゃないかとも思う訳で、ともあれそんな彼らを見るために、この多民族スペースにやってきた訳である。



 実は彼らの前に演奏したStarsから拝見させてもらったのだが、白人可愛い系(?)のボーカルがMCでやたらと「FxxK」と言っていたのが妙に素敵で心奪われたのだが、THE DEARSもキーボードの、ナタリア・ヤンチャクとヴァレリー・ジョドイン=キートンのふたりの女性が並んで立っているのにまず目が行ってしまい、何とも淫靡な雰囲気。こちらはとてもスリ・・・なんかいやに下品なレポートになってきているので割愛。ともあれ静かに、ゆったりとライヴがスタートする。これは『NO CITIES LEFT』を聴いた時から既に想像できていた事なのだが、とにかくまずマレイ・A・ライトバーンの歌声が素晴らしい。ステージの中央にどっしりと構えた彼はギッと前を見据え、抑揚のあるメロディラインを力強くも何処かじめっとした、それこそモリッシーやデーモン・アルバーンに例えられる英国風の湿り気を帯びた歌声が観客の目を釘付けにする。そして彼の絶望と諦念、それらの逆説的に垣間見える薄明るい希望が人々の胸に心に突き刺さり、やがてステージ上から目が離せなくなる。アルバム収録曲の『LOST IN THE PLOT』ではエモーショナルなギターサウンドとふたりのキーボードから奏でられるメロディが壮大な世界観を演出、多種に渡るポップセンスは勿論、ギターロックやゴシック調のクラシックなど本当に様々な音楽性を咀嚼、吸収して自分たちの音として奏でる彼らの底の深さは正直、この短いライヴでは堪能しきれたとはいえない。それほどに、深くて広いのがTHE DEARSの音楽だ。



 ライヴはちょっとSimon and Garfunkelを思わせるトラック(やや安直)の『22:THE DEATH OF ALL THE ROMANCE』でナタリア・ヤンチャックのボーカルも堪能できるなど、それまでTHE DEARSを知らなかった人も徐々に彼らの世界観に惹き込まれていく。そして最後の、場内を圧倒した『PINNED TOGETHER,FALLING APART』でのマレイ・A・ライトバーンによるブチ切れボーカルに自分も意識を吹き飛ばされ、ふと我に返った時には残響音が鳴り響くステージにはもう誰もいなくなっていた。作りこまれたトラックや『NO CITIES LEFT』のタイトルに象徴されるような退廃的な絶望感はもちろん彼らを語る上で外せない重要な要素であるのだが、それ以上に、彼が搾り出すように吐き出す生の声。これはTHE DEARSのファンなら勿論、何処かで耳にしてちょっと興味がある方なども是非体験して欲しいです。音源だけでは感じ取れない熱量のこの圧倒的なエネルギーは、近年の軟弱なポップロックを吹き飛ばすだけのパッション、それもダークで美しいという何とも日本人好み(多分)な陰湿さ(勿論褒めてます)に溢れています。是非、今度はワンマンで来て欲しいです、THE DEARS。

Live Report:杉岡祐樹

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