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愛する王子様のために悪魔に魂を売るお姫様―――、今回のツアーも倖田來未は幻想世界と現実世界を行き交い、スピリチュアルなライブとしても、コンセプチュアルなストーリーとしても、最高のエンタテインメントを提供することに終始する。幻想の中で真紅の瞳を光らせていたと思えば、次の瞬間には、現実の世界で激しい爆発音と共に宙を舞っている。そんな常にオーディエンスの脳と心を揺さぶる演出を基本設定とした今宵のライブのド頭、彼女はステージに舞い降りると「いくぞぉ!東京!!」と、早々に感情爆発モード。『Under』を皮切りに超攻撃的チューンばかりを、ステージ上を左右はもちろん上下にも飛び回りながら響かせる。そして『キューティーハニー』の「ハニーフラッシュ!」をみんなが気持ち良く決めてくれると、思わず満面の笑みを浮かべるくぅちゃん!やっぱり彼女には素直な感情表現がよく似合う。もちろんそれはシンガーとしてもで、続く『MORE』の、松明の炎に照らされながら情感たっぷりに熱唱する彼女の姿は、ちょっと神々しく。というか、この人の歌唱力や表現力にまだこれほどの糊代があったのかと、この曲では本当に度肝を抜かれた。多岐にわたってその才能を開花させてきた人だけど、やはり彼女は歌の人。特にこの後に披露された『hands』のような切ないバラードでの、涙を歌に変える才能は天才的ですらある。一度は失ってしまうかもしれないと考えた、みんなとの絆を感じながら歌っていた『ふたりで』も実に感動的だった。
“Kingdom”チェアーに腰掛け、空いている自分の隣に「座りたい人、いるぅ!?」と訊ねる倖田來未。そこはここにいる人々にとっては世界一のプレミアシート。しかも選ばれた人は彼女が用意したソングメニューから歌ってもらいたい曲を選べるというのだから、たまらない。それを勝ち得る条件は「くぅちゃんのことを一番好きな人」。もうみんな一生分の愛情を使い果たすつもりでラブラブ光線をステージに放っていました。そして、最終的に選ばれた幸運な女の子は、くぅちゃんの隣で嗚咽をするほどの大号泣(笑)。そんな彼女の隣で、彼女の手を取り、彼女の大好きな曲『大切な君へ』を優しい声と表情で聴かせる、彼女の憧れ。正しく夢のような時間。
その後、倖田來未は真剣な表情で「大勢の方に迷惑を掛けてしまって、本当に皆さん、申し訳ございませんでした」と、先の不適切発言騒動に対しての謝罪をした。そして、今日こうして会いに来てくれた、自分のことを信じ続けてくれたみんなに「ありがとう」と、新たな想いと意味が加わった『奇跡』を贈った。叶わないものを叶えてく力―――、そのフレーズを今日一番の感情を爆発させた声で響かせる彼女。その姿は、孤独を知り、弱さを知り、愚かさを知り、それ故に人を求め、愛を求め、光を求めずにはいられない、尊く逞しい人間の姿であった。そして倖田來未はあの屈託のない笑顔を浮かべて、再び愛と夢を『WIND』に乗せみんなのもとへと運んでいく。
ピースフルでポップでラブリーなくぅちゃんワールドに染まっていく会場。それは曲を追う毎に濃く広くなっていき、あの『anytime』をお花のブランコに揺られながら歌われたときは、もうなんか、そこにある空気が幸せすぎて、絵本でも読んでいるかのように穏やかな気持ちになった。その後も立て続けに披露されるポジティブパワー全開チューンにえらい勢いで揺れまくる、客席に光る無数の緑。と、笑顔。そして今夜もみんなでタオルをぐるぐる振り回しながら、天井知らずの明るさでもって『girls』を披露。これぞ倖田來未!といった、素直で無邪気で愛くるしい空間が見事なまでに生まれていた。そんなエンディングで本編が幕を閉じると、巨大な「くぅちゃん!」コール。そして突如始まる“BONUS STAGE くぅちゃんを探せ”のコーナー。キリンを演じたり、七三分けのサラリーマンを演じたりしてるくぅちゃんを見つけてワーキャーワーキャー(笑)。で、最後はこの会場の中から彼女を探すというドキドキ演出の中で、客席のど真ん中に現れた(!)くぅちゃんは、変なおじさんの振りを取り入れつつ『SHAKE IT UP』を披露。そのままメドレー形式でヒット曲を連発し、会場を本編以上にヒートアップさせていく。また、ダンスバトルの中で、この空間を時に殴りつけるような彼女のダンスパフォーマンスに大きな拍手が贈られる。
家から出ることもできなかった日々の中で、カーテン越しに見つめた月に当時の自分の想いを重ねた『Moon Crying』。君を想い 歌いたいよ、繋いだ手を離さないで―――、その声を震わせながら歌われたそのフレーズには、様々な想いが込められていることがよ〜く分かった。自分の人生の中で一番高かった壁を前にし、辞めて楽になりたいと思った日々。でも諦めずに歩いて良かった。みんながそこに居てくれるのなら、私は諦めなくて良かった!そんな切実な想い。彼女は「夢は掴むためにあるもので、奇跡は自分で生み出すもの」と語った。それは以前から彼女がよく口にしていた言葉だが、その説得力は明らかに違う。そして、それは最後に歌われた『walk』にも言えた。あの東京ドーム公演の最後もこの曲を涙しながら歌い上げた彼女だが、今日はあの大きな夢を叶えた瞬間以上に“歩き続ける”という言葉に強靱な意志を乗せ、そうして“諦めずに生きていく”という自身の想いを、みんなへのメッセージへと見事昇華。それは、様々な柵の中での活動を余儀なくされる立場でありながらも、その生き様を歌に反映させ続けてきた彼女らしい責任の取り方であった。そして最後にスクリーンに綴られた言葉は“to be continued”。それを見て頭に浮かんできたのは「まだまだこれからぁ!」と男前に叫ぶ、負けず嫌いの関西女の姿(笑)。みんなが大好きな女の子の笑顔でした!
追記。外に出ると、空にはま〜るい満月が浮かんでいた。会場からの帰り道、あの月は彼女にどんな気持ちを与えただろうか。
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