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ロボピッチャー 『透明ピアノ』 2005.1.14(FRI) Shibuya O-Westにて。 昨年3月に『消えた3ページ』、11月『透明ランナー』と2枚のミニアルバムを発売し、妙にリアルな夢を見ているような世界観を崩す事なく独自の音楽性に磨きをかけるロボピッチャー。自分が『消えた3ページ』で彼らの音に初めて触れた時、「夏の木造アパート、四畳半の部屋に敷きっぱなしの万年床、微かに残る饐えた汗の匂いにまみれながらマイケル・クライトンのSF小説を読んでいる」ようなクラクラするような気分に包まれた。そして『透明ランナー』ではより洗練されたサウンドとより突出させた個性と遊び心で、ポピュラリティと特有のサウンドフィーリングをぐーんと上に伸ばし、彼らの譲れない独自性を更に強く感じる、言うなれば※ムービング・ファスト・ボール的仕上がりになっていた。そして遂に、というかやっと、ロボピッチャーのライヴを観る機会がやってきた訳だ。バンドたるものライヴで魅せてやっとスタートライン。勿論、自分が勝手に思っている事であるが、間違った考えではないだろう。ともあれステージ後方では歴代の仮面ラ○ダーやマ○マ大使なんかの変身シーンをコラージュした映像をぼーっと眺めながら、彼らの登場を待つ。 キーボードやプログラミングを担当する伊藤忠之がステージに現れ、打ち込まれたシークエンスをスタートさせる。と次々とステージに現れてくるメンバー、『消えた3ページ』収録のポップチューン『夕暮れ時を待ちながら』でぐっとオーディエンスの視線を惹き付ける。タイトなえんじ色のスーツで額に汗しながら少しふわついたメロディを奏でる加藤隆生と、ぶっとい音色でボトムを支えながらコーラスで加藤のメロディをも支える有田さとこ、安定感のあるリズムで聴き手にひっかかるところを作らない森 崇と時に飛び道具的音響、時に美しいピアノのラインで楽曲に艶とインテリジェンスを生み出す伊藤。4ピースというシンプルでスタンダードな構成が生み出せる最大限の個性を持って互いに引き立てあい、1+1+1+1を10にも20にも高めていく。『恋でも恋じゃなくても』では生活感漂うリアルな視点と閉塞した生活故に脳内が生み出してしまう願望や妄想を含んだファンタジーで聴き手をぐったりと酔わせ、CDで味わえる感覚をより濃くしたステージを披露。“目を閉じたら暗闇の中にどぎつい色彩のペイズリー柄がぐるんぐるん回るような”、といえば伝わるだろうか、その雰囲気は『キャンディー』『キノコ』とサイケ全快のナンバーで更に加速され、オーディエンスはややぐったり気味?非常にアレな例えをするなら、ダウン系のヤ・・・や、止めときます。 ともあれそんなダウナーなサイケにあてられてしまったのか、『世界最速のワルツ』『ループ』とキャッチーでアッパーなグルーヴとぐっと来るメロディにもオーディエンスはどちらかというと聴き入ってしまっている様子。すると加藤はそんな雰囲気に気付いたのか、無理に煽る事もなく、「もうさ、こうなったらみんなでやろうよ」と軽く苦笑い、オーディエンスを柔らかい笑いに包み、4人が作り出したふわふわと地に足のついていない様な世界観を一度弛緩させてくれた。そして2枚のミニアルバムには未収録の楽曲『ミクロ』では前衛的な音響と加藤のグッドメロディ、アコースティックギターの柔らかい音色と硬質なシークエンスとの融合で今度はオーディエンスをガッツリのせると、最後は正に代表曲のひとつ『ロボピッチャー』でステージを後にした。
このライヴを観た帰り、その世界にあてられたのかややふらついた足どりに戸惑いながら、『透明ランナー』を聴いていて感じた事を思い出す。夢と現実を分け隔てるモノはなんだろう。いや、そもそもその二つに隔たりなどあるのだろうか。見たもの全てが現実だと捉える事はエゴでしかないが、それすらも信じられない人間はあまりにも哀しすぎる。そんなポジとネガが混同した世界がイコール現代なら、ロボピッチャーはその間をふらふらと徘徊する存在だ。その際に佇む両者を眺めながら、その全てに存在する“何か”を歌う。「パーフェクトな夢見て / 天国で会いましょう / 直滑降で地獄へも / 行ったり来たりしちゃいましょう」(『ループ』より)。その“何か”の答えなんて誰にも分からない。というより答えなんかない。ただ、“いる”のだけは事実。『透明ランナー』という言い得て妙なタイトルに込められたそんな想いが、聴き手にぐったりと心地よい倦怠感を与えるライヴ。激しく盛り上がって汗かくのがライヴの醍醐味なら、催眠術にかけられたような目眩と高揚感で包み込んでくれるのもライヴならではの醍醐味である。ガッツリとした直球ロックにちょっと食傷気味になってる方、是非キャッチャーとなって彼らのクセ球を捕球してみて下さい。キャッチした後で手元に残るこの高揚感、ロボピッチャーでなきゃ味わえない絶品ですよ。 ※ムービング・ファスト・ボール=野球用語で、手元で軽く変化する直球、ストレート。所謂クセ球ってやつです。 Live Report:杉岡祐樹 ◇ロボピッチャーの作品を購入されたい方はこちらまで◇ |