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巨大なステージを取り囲む、さらに巨大な観客席。約7万人を収容したその光景は圧巻だ。天候はあいにくの雨模様となったが、集まるファンの表情に暗いものはなく、歴史的とも言えるそのステージを目前に、誰もが期待を露にした輝かしい笑顔を見せている。来年以降のサザンオールスターズ活動休止。1978年のデビュー以来、長きに渡りJ-POPシーンの先頭をひた走ってきた彼らだ。オーディエンスが胸に秘める想いもそれぞれにあり、一言では語り尽くせぬものばかりだろう。スペシャルゲスト・キングカズこと三浦知良(※1)が登場し、マーチングバンドと共にド派手な開会宣言に沸き起こる大歓声。4日間で計30万人を動員した【真夏の大感謝祭】、その最終日が遂に幕を開けた。
記念すべき1曲目、『YOU』のムーディなイントロに、一層沸き立つ歓声。気付けば、すでに感動して涙するオーディエンスもいる。総立ちになった7万のエネルギーは相当なもので、もはや雨を気にするものはステージ上も含め、誰ひとりとしていなくなっていた。
「今日は最終日でーす!」 湿っぽさもなく、元気に宣言した桑田佳祐は、この日のコンセプトを「いつも通りのサザン」という。序盤の“青山通りから鎌倉まで”なるメドレーでは、78年に発表の記念すべき1stアルバム『熱い胸さわぎ』から、いまだ最高傑作と名高い『KAMAKURA』(85年リリース)収録曲まで、懐かしのナンバーを次々に披露。膨大な曲数が演奏されたため、全てを紹介するにはスペースが足りないのだが、誰もが歌える超代表曲に加えて、ドラムの松田弘がメインボーカルを務める『松田の子守唄』や、ハラボーの歌謡メロディとロカビリーファッションのダンサーが懐かしい『そんなヒロシに騙されて』など、ファンには嬉しいナンバーも。当時の境遇をシニカルに描いたといわれる『働けロック・バンド(Workin' for T.V.)』やバグパイプ調の音色が木霊する『Bye Bye My Love(U are the one)』では、その懐深い音楽性を改めて感じ入ることができ、正に30年の集大成とも言えるメドレーとなった。
「スタンドー、アリーナ! ファミリーシート!」と、いつもの掛け声(プラスアルファ)にまたしても怒号のような歓声が轟くと、ゆっくりと弱まっていく雨脚。桑田も「止んだよオイっ!?」と歓喜の声を漏らすと、“鎌倉・由比ヶ浜からキラーストリートを経由して”と次なるメドレーへ。正にその“由比ヶ浜”が歌詞に出てくる『愛の言霊[ことだま] 〜Spiritual Message〜』から『シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA』と、90年代の大ヒットナンバーが続けば、2005年のアルバムからの“キラー”チューン『ロックンロール・スーパーマン〜Rock'n Roll Superman〜』では、空を埋め尽くすほどの風船が一斉に解き放たれる感動の演出が! その美しすぎる光景に涙してしまった方も多いだろう。照明の光を反射する風船が、星のように煌きながら空に消えて行く。この日のハイライトに数えられる、最高の瞬間がそこにはあった。
エレクトリカルパレードをBGMに、逆サイドに設置されたサブステージに移動すると、「音楽の神様に乾杯!」と、今度はメロウなチューンを披露。さらにメインステージに戻ると、『いとしのエリー』(79年)『真夏の果実』(90年)『TSUNAMI』(00年)と、それぞれの世代がかつて、己が青春に照らし合わせて涙した珠玉の名バラードを続ける。そしてこの【真夏の大感謝祭】にむけて作られた『I
AM YOUR SINGER』は、メンバーの華麗(?)なダンスと共に披露されるのだが、そこには野沢“毛ガニ”秀行の姿が! スクリーンに映し出された彼の笑顔に歓喜の声が上がった。
演奏時間も2時間を優に超え、終演が近づいてきたことを暗に察した観衆もいたかもしれない。しかしサザンの面々はラストに向かって盛り上がり必至の人気楽曲を次々に演奏。『HOTEL PACIFIC』ではお馴染みのダンサーも交えて会場全員で楽しく踊り、『ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)』で何処までも響いていきそうなほどのコール&レスポンスを。そして本編ラスト、『マンピーのG★SPOT』でピーマンの被り物をした桑田のその姿は、正しく「いつものサザン」だった。
アンコールでメンバーが再びステージに舞い戻ると、事前に用意されていたサプライズ企画として、スタンド席の観衆が一斉に2色のプラカードを掲げる。ステージを取り囲むように現れた“WE ARE SAS FAMILY!”の文字と、約7万が叫んだ「30周年おめでとう!」という賛辞。感極まった原坊は口元に手を添え号泣し、桑田の瞳も何処か潤んだようにも見える。もちろん、観客席には数え切れない程の涙、涙、涙…。日本の音楽シーンにおいて、数々の記録を打ち立ててきたサザンにとって、一番の偉業。それはこの光景に表れていたのではないだろうか。
何においても多様化が進む中、最後の国民的バンドと呼ぶに相応しい彼らが創り上げた、この関係性。約7万の涙を誘った『Ya Ya(あの時代[とき]を忘れない)』を歌い終えた桑田は、「サザンの屋号を一旦、みなさんに預けます! 預かって頂戴! みんな、死ぬなよ!」と再会を約束した。この日最後の挨拶を交わした5人のその表情。去っていく背中も何処か晴れやかで、「やっぱり必ずまた逢えるんだ」と確信を強くした方も決して少なくなかっただろう。“We will be seeing you again soon!” これは『I AM YOUR SINGER』の最後にディスプレイに映し出された文字である。そう、彼らはきっとすぐにまた、私たちの前に姿を現してくれるのだろう。 |
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