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SET LIST

01.向日葵
02.太陽
03.どうぞ
04.黒子
05.乙女心てさっ・・・
06.ならば
07.約束
08.止めないで (弾き語り)
09.あなた あたし (弾き語り)
10.髪
11.笑
12.ウエイシェンマ
13.ニセアカシア
14.事実
15.尽くす

En
16.ただただ
17.金木犀
18.願いごと



「笹川美和 ソロ・ライヴ“事実”」
2004.1.17(SAT) 横浜赤レンガ倉庫1号館 赤レンガホールにて。



 <太陽>もすっかり沈み昼間とは違う顔を見せる、にぎやかな光に彩られた港町・横浜。そんな夜の喧騒を縫うと現れる、幻想的に浮かび上がった赤レンガ倉庫。舞い散る粉雪がさらに情緒ある風景へと導いていく。
 
 「今日は寒い中ありがとうございました」
 『向日葵』『太陽』が終わり、体育館よりも一回りか二回りほど小さく、立ち見のオーディエンスで溢れ返った空間が大きな拍手に包まれる頃には、縮こまっていた体もかじかんだ手足も彼女の“うた”の温度によってポカポカになっていた――彼女の名は、笹川美和。愛情を独特な視点で綴る彼女の詞は、恋を重ねてキレイになっていく女性の胸の内が映し出され、その<事実>に深く共感する――。水を一口飲んで「それでは<どうぞ>聴いてください」と、『どうぞ』に入るとドラムの重低音と共に言霊を宿す歌声が広がっていく。オーディエンスは息を呑み、視線はステージの一点に集中している。精一杯の愛情を表現した『黒子』を情熱的に歌い上げ、「改めましてこんばんは。ようこそ来てくださいました」、苦手そうなMCを始めると会場は和やかなムードに。そして、インディーズ時代の楽曲『乙女心てさっ・・・』へ。初めて聴く曲だが、壮大なバンド演奏に乗せた心に染み渡るバラードであり、ついつい我を忘れて聴き入ってしまう。
 ところで、立ち見でギュウギュウに詰まった会場では、私を含め、後方からライヴを観ていたオーディエンスにはしばしば彼女の姿が全く見えないまま歌声だけが聴こえてきたりする。しかし、『ならば』『約束』の間も全くと言っていいほど姿を把握できなかったのだが、これが逆に“うた”だけに集中する要素となり、これまで以上に詞世界にドップリ浸かり引き込ませていく効果を作り出した。


 
 MCを挟み、なんと楽曲としてはまだ未完成である新曲2曲を一足先に弾き語りで披露。ステージに一人ポツンと座り、良い感じで滑り出した新曲『止めないで』の途中、ちょっとしたハプニングが起こったが、会場の「がんばってぇ〜!」という声援に見守られて再び演奏スタート。誰もが抱いたことのあるほろ苦い想いを呼び起こさせるような一曲だった。そして、次の新曲『あなた あたし』は、この空間を覆い<尽くす>ピアノの美しい旋律とサビのリフレインが印象的で、胸を締め付けてくるステキな一曲。完成したこの2曲を聴ける日が待ち遠しい。

 ステージに再びバンドメンバーが揃い、MCを挟んで<乙女心>を詠った『髪』に入ると、さっきまではにかみながら喋っていたのがウソのように、一瞬にしてアーティストの表情へと変わっていく。そして、聴きなれたイントロが流れれば、「笑い 笑え 泣き 笑え〜♪」と『笑』が始まる。現在2歳のいとこのために作ったというこの曲は、力強さや逞しさを教え、力を漲らせてくれる感動的なものだった。それとは反対に『ウエイシェンマ』では、中国語の独特な雰囲気でやさしく穏やかに感情を表現していく。
 「(年始めの仕事が今日のライヴで)皆さんと一番最初に触れられたので良かったと思います。ありがとうございます」、そしてインディーズ時代の楽曲『ニセアカシア』を披露。彼女の作品の中でもワールドミュージックに接近したオリエンタル色の強い一曲と言える。さらに、刺々しくソウルフルに歌われる『事実』で畳み掛ける、ライヴ・バージョンならではのバンド演奏の迫力にオーディエンスも圧倒されていく。ラストを飾るのは、痛いほどの愛が綴られた『尽くす』。歌い終わり先にステージを去っていく彼女に大きな拍手が送られ、演奏が終わるとバンドメンバーにもう一度大きな大きな拍手が送られる。

 鳴り止まない拍手はやがてアンコールを求める手拍子へと変わる。そして、再び彼女がステージに登場すると、手拍子が再び大きな拍手へと変わる。「アンコールなかったらどうしようかと思いましたね。良かった、良かった。これで新潟へ帰れる(笑)」と、アンコールに応えて『ただただ』を披露。会場はやさしくて温かくて柔らかな空気に包まれる。和気あいあいとしたバンドメンバーの紹介に、会場が<笑>に溢れたところで「金木犀」へ。ライヴ・アレンジでのこの曲は、より一層幻想的な雰囲気を醸し出し、壁を踏み台に跳ね返ってくる音の群れは絶えることなく振動となって心を揺さぶり、マイクを通して伝わる息継ぎはこの空間に緊張感をももたらした。オーディエンスは<ただただ>ステージを見つめ聴き入る。
 「ワンマン・ライヴをして初めて楽しいなと思うことができました。ありがとうございます」と言い、拍手に包まれる中、一人ステージのピアノのイスへ向かい『願いごと』を弾き語り始める。鍵盤から次々に生まれる音と、口元から放たれる歌声を少し足りとも聴き逃さないよう、オーディエンスは最後で最後の曲を噛み締める。何度も何度も「ありがとうございました」と言う彼女に、「ありがとう!」の意味も含んだ今日一番大きな感嘆の拍手が送られた。 
 きっと感動の余韻は肌を突き刺すような外気に触れても冷めることはないだろう。粉雪が感動の余韻を溶かそうとも消えることはないだろう。

Live Report:加藤絵里

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