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Tourbillon ライブレポート

 キンと冷えた夜空に、少しだけ丸みを帯びた半月が浮かぶ。2006年も終わりに近付き、時の渦巻きの速度は早まっていた。僕は何かに導かれるように、厚生年金会館へと急ぐ。Tourbillonが11月にリリースしたアルバム『A Tide of New Era』は、シーンにおいて異彩を放っていた。その美しさには儚さが伴う。例えるならば、紅葉した葉を落とす木々や沈む夕日、廃虚、物事の終焉…。『アゲハ』で描かれる衰退した世界は、可憐な蝶の美しさを際立たせる。彼らは美しさを追求した結果、そんな楽曲をアルバムの一曲目に置いた。つまり、世界の終わり=始まりなのだ。僕は、受付で手渡されたセットリストを見て驚く。一曲目に記されていたのは『アゲハ』。アルバム同様に美しき終焉と共に幕を開け、時空を遡っていくライブになるというのだ。ステージにはロウソクの火が揺れ、下手奥にはHayamaのブースが鎮座。舞台上方には灰色の雲らしきモチーフが浮かんでいる。本当に、世界は光で満たされていくのだろうか…。そして僕は、その様子を記録することが出来るのだろうか。不安と期待は高まり、ペンを持つ手が一気に汗ばむ。

 
 左:RYUICHI
 右:INORAN
  客電がゆっくりと落ち、薄蒼く照らされたステージが浮かび上がる。重低音が響く中、ステージの背後に映るのは、水のイメージやイルカの群れ、鳥の影といった生命を意識させる映像。ヒトの手の影と共にメンバーが1人ずつ映り、「I'm a Tourbillon」と告げると『アゲハ』が舞い降りた。その無情な詩を、胸に手を当てメロディーに乗せていくRYUICHI。その佇まいはボーカリストを超越した何かを感じさせる。上手でアコギをストロークするINORANの上段で、サックスとコーラスを担当するのはYUKARIE。彼女のサックスソロでは、楽曲の持つ熱が一気に上昇する。スクリーンに映されたのは地球。儚く美しい詩世界は、ライブで想像以上に熱を帯び、『アゲハ』という楽曲に宿る生命力の強さを感じさせるオープニングとなった。ステージ後方に幕が降り、Hayamaが作詞・作曲を手掛けた『I'm just a Mermaid』へと蝶は舞い続ける。赤紫の世界に草花の絵柄が揺れ、RYUICHIのボーカルにYUKARIEが妖しく息を絡めていく。足を開き、いつものスタイルでリフを刻むINORAN。泡となり消えてしまう人魚姫の童話も、儚く美しいモノの一つ。現実とは別次元で語られるこの2曲で、早くもオーディエンスは興奮の渦へと巻き込まれた。

 「羽目を外して思いっきり、我々と一緒に汚れてみませんか。」と、既に本気モードのRYUICHI。この日の彼はパフォーマンスでも魅せた。全英語詩の『Innocence』では、腰をかがめ妖艶な舞いを披露しながら歌う。ステージでは立ち方一つで印象が変わってしまうが、キャリアに裏づけされたマイクさばきは見事としか言いようが無い。ストリングスのアレンジが印象的な『Lily』では、RYUICHIの声が埋もれ気味に聴こえるも、彼らはオーディエンスの手拍子に支えられ世界を紡いでいく。「INORAN!」「RYUICHI!」と歓声が飛び交う中、静かに始まった楽曲は『Nameless Greenness』。Hayama節が炸裂するサビのクオリティは圧巻。「描いたのは夢 失くしたものは何…」ステンドグラスのような照明が左右に拡がり、ステージは徐々に明るさを取り戻していく。INORANのアルペジオとHayamaが奏でるピアノの音色の相性は抜群だ。エンディングではその2人にスポットが当てられる。奏でられた旋律は、例えるならば“千の色の星”。名曲の誕生に立ち会い、唯々圧倒される自分が居た。この日のMCでも「グルーブ感が出て来た。」と語ったRYUICHI。ジャジーな音作りで季節感を醸し出す『season』では、バンドとしての一体感が生まれていた。

 
 Hayama
  やはり今回のツアーは試行錯誤の連続だったようだ。RYUICHIは、「初日のような緊張感を実は感じています。」と打ち明ける。東名阪3ヶ所4公演という短い日程の中で、これほどまでに創り込まれた世界観を表現するのは容易ではない。「次の曲も難しいです。」という曲紹介の後、Hayamaの美しいピアノフレーズから大曲『Breezy Night Journey』が届けられる。RYUICHIが全身を振動させて解放していく歌声は、ロックボーカリストの域を遥かに超えていた。フロントマンが観客に手を振りステージ下手へと消えていくと、INORANとHayamaによるインストナンバー『Karna』が披露さる。広大なサウンドスケープを彷彿とさせる音像に身を委ねる客席。スクリーンには胎児の映像が投影される。YUKARIEのサックスも合わさり、ライブで体感するインストの素晴らしさを再認識させられた。気付けばステージにはアコースティックギターを抱えたRYUICHIが立っており、『Don't Hold Your Feeling』がスタート。纏まったバンドサウンドを包む、暖かいボーカル。エフェクティブなINORANのソロといい、幅広い世代の心を掴むことができるバンドだと実感させられる。「1ケ所だけコードを間違えました。」とRYUICHI。彼らが並んでギターを弾いている姿を観ていると、何故だろう…非常に感慨深い。「昔を思い出します。自分はこういうステージで育って来たんだなって…。」RYUICHIのMCに、彼らを追い続けてきた多くのファンは嬉しさを噛み締めていた。

 
  「思いっきり暴れてみませんか!?」と煽るRYUICHI。待ってましたとばかりに客席のボルテージは上昇し、『Saturation』でライブは後半へ突入。宇宙的な映像と共に、動き始めたメンバー達。Hayamaの前に移動し、ギターを掻き鳴らすINORAN。サポートベーシストのHIROKIも激しい動きで客席を盛り上げる。高まったボルテージを保ったまま『瞬くように』へと傾れ込み、輪郭を失うほど歪んだベースラインに乗せ、スペーシーなボーカルが舞う。背後のスクリーンに映し出されるのは、お経のような文字の羅列。INORANがオーディエンスを煽り、Hayamaは立ち上がりシンセを操る。ホールは深夜のクラブにも似た異常なテンションに包まれていく。『I know nothing』では、RYUICHIがマイクスタンドを両手で持ち上げて歌い、サポートドラマーを務めるNAOKIは、細かいビートを刻んでいく。この日のライブで意外だったのは、INORANが殆どギターを変えなかったこと。ストラトキャスター1本で、楽曲に様々な色を彩色していくプレイは“職人”のなせる技。そんな所にもTourbillonが生み出す“大人なロック”の片鱗を感じることができた。パンクなナンバー『Lost World』では激しく動き回りながら、艶を帯びたボーカルを響かせるRYUICHI。「もういっちょ行こうか!」というRYUICHIのMCと共に届けられた本編ラストナンバーは『selfish』。原曲以上に熱を帯びたバンドサウンドは、INORANを中心に生み出された渾身の1曲に魂を宿らせる。光の粒が揺らめき、ゆっくりと動く流動的なエネルギーで会場は満たされていた。歌い終えた後、会場を見渡しながら手を振るRYUICHI。かつてRYUICHIは、「ライブが終わってしばらくすると、観客1人1人の顔が記念写真のように頭に浮かぶ。」と語っていたが、これが“瞬きでシャッターを切る瞬間”なのかと、一人納得。

 この日のアンコールでは、RYUICHIとHayamaの2人による『もう一度君に』が披露された。透き通るファルセットと、ピアノの音色に聴き入るオーディエンス。ピアノ脇に移動して歌うRYUICHIの姿は、ステージで育って来た1人のシンガーとしての自信に満ち溢れていた。そんなフロントマンによるメンバー紹介は、会場に笑顔を咲かせる。「宇宙一のピアニスト、プラチナフィンガー!」と紹介されたHayamaは、「これからも頑張りますので、宜しくお願いします。」と丁寧に挨拶。RYUICHIはサポートのHIROKI、NAOKI、YUKARIEを、ちょっとした小ネタなども挟みつつ紹介した後、彼曰く「Tourbillonの核」である朋友、INORANをステージに呼び込む。2人の絡みに大盛り上がりのファン達に向けて、届けられたラストナンバーは『your place』。ステージ中央に立ったINORANが、心地良く歪んだギターフレーズを鳴らすと、客席は手拍子で応える。Hayamaの背後に忍び込んで驚かせるなど、お茶目なステージングを披露するINORANに観客も笑顔。RYUICHIとINORANが寄り添い1つのマイクで歌う光景に、オーディエンスは大興奮の連続。気付けば会場は暖かい光で満たされていた。「どうもありがとう!東京、愛してます。バイバイ!」マイクを置き、メンバーと握手を交わすRYUICHI。マイクレスで「ありがとうございました!」と叫び、横一列で掃けていく彼らに、観客から惜しみ無い拍手が贈られた。

 RYUICHI(河村隆一)、INORAN、H.Hayama (葉山拓亮)の3人は何かを模索し続けている。Tourbillonのライブは、常に新しいモノを追い求める実験の場なのかもしれない。そこで得たものは、どんな形であれ次に繋がっていく。彼らが再びステージに上がる時、どんな驚きを与えてくれるのか…期待は膨らむばかりだ。
     
Tourbillon
【Tour2006 "A Tide of New
Era"】
06.12.02(土)
東京厚生年金会館
SETLIST
01.アゲハ
02.I'm just a Mermaid
03.Innocence
04.Lily
05.Nameless Greenness
06.season
07.Breezy Night Journey
08.Karna
09.Don't Hold Your Feeling
10.Saturation
11.瞬くように
12.I know nothing
13.Lost World
14.selfish

En1.もう一度君に
En2.your place


 
取材&テキスト:齋藤卓侑
Page Design:杉岡祐樹
 
Tourbillon OFFICIAL SITE http://www.tourbillon.jp/    

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