サイレン。車の走る音。人も歩く音。人の喋り声。街の雑然とした音たちの中で一際響き渡る誰かの靴音。エッジの利いたバンドサウンドが響き出すと同時に舞い落ちる垂れ幕。僕らの目の前には、ベース、ドラムス、ギターを従え、テレキャスを抱えたYUIの姿が。ファーストアルバム『FROM ME TO YOU』同様、オープニングは『Merry・Go・Round』。アルバムと違う部分と言えば、バンドサウンドの鳴りはもちろんのこと、YUIの気合いが注入された熱ある歌声。彼女の代表的なミディアムナンバーしか知らない人が見たら間違いなく驚愕の光景と歌声。曲はそのまま気合い充分のYUIのカウントから『Free Bird』へ。今宵は追加公演を除けばツアーファイナル。人生初の全国ツアーの集大成となるライブでYUIは今まで聴かせたことのないありたっけの声で歌い叫ぶ。そんな彼女に客席から無数の拍手と歓声。
「改めまして、YUIです。福岡出身の19才で、今、東京で暮らしています。今日は皆さん、来てくれてありがとうございます。最後まで盛り上がりましょう!」と、最初の挨拶。ギターをアコースティックギターに持ち替えて彼女が歌い出したのは、デビュー曲にして大衆の心を貫いた名曲『feel my soul』。これまでのイベントやフェスでのライブで披露したすべての『feel my soul』を超える強い説得力を持った歌声がこれまで以上に僕らの心を突き動かす。改めて彼女が持つ歌声の力に驚かされる僕ら。曲は間髪入れずに『I can't say』へ。徐々に気持ち良くその体を揺らし始めるオーディエンス。YUIのライブの楽しみ方を本能と感覚で覚えていく。
ファンが「YUIちゃん!」と叫ぶと、元気よく「ハイ!」と手を挙げて受け答えるYUI。彼女は「スタッフが作ってくれた」と言ってMCノートらしきものを取り出す(笑)。そしてそのノートの指示通り、今日までのツアーでの出来事を各地で覚えた方言で語ってゆくYUI。笑顔が溢れる会場。上着を脱いで白いTシャツ姿で、セカンドシングルのカップリングに収録されている『Last Train』、サードシングルのカップリングに収録されている『crossroad』を立て続けに歌い出す彼女。意外な楽曲の披露に驚きの声が上がる。もちろんYUIの曲だ、カップリングだからと言って良い曲じゃないわけがない。誰もが彼女の歌声、そこに綴られた言葉の耳を傾け、心をときめかせる。
イスに腰掛けるYUI。水を一口吸い込み、少しの沈黙の後、映画に主演させてもらった話を始める。その映画『タイヨウのうた』の主題歌となる愛に満ちた一曲『Good-bye days』を歌い始める。この瞬間は彼女も“雨音薫”に心を重ね、その想いを、張り裂けそうな想いを弾き語りで歌い綴る。「最高!」というファンの言葉に「ありがとう」と返すYUI。そして腰を下ろしたままで彼女は『Blue wind』を優しい音色たちに包まれながら歌い始める。会場に優しく入り込む青い風に揺られながら、私らしく生きることの素晴らしさを学ぶ僕ら。
ゆったりマイペースなMCのあとは、ゆったりマイペースな曲を。『Simply white』。もちろんゆったりマイペースでその曲を僕らは堪能。とても心地良い気分。自分の名を叫ぶみんなに「大好き」と答え、「やって面白いことがあったのでやってみたいと思います」と言って、なぜか「老若男女」と「東京特許許可局」をコール&レスポンス(YUIは噛み噛みだったけど(笑))。そんなお茶目な一面を見せた後は、うって変わって、心の叫びを。『Tomorrow's way』。よりドラマティックに、より感情的に成長したこの曲が僕らの気持ちを高揚させる。涙が出るほどに明日への一歩を踏み出したくなる。力ある曲、力ある歌声。大きな感動。でも歌い終えると、彼女はまたなぜか自分が出来ないくせに早口言葉をみんなとコール&レスポンスしたがる。どうも彼女的にすごく気持ち良いらしい(笑)。YUIが最終的にかなりご満悦な様子になったところで走り出したバンドサウンドと共に今宵のライブのクライマックスの畳み掛けがスタート。
客席の近くに歩み寄り、よくみんなの顔を見つめた後、バンドのメンバー紹介をし、俄然テンションの上がったそのメンバーと共に『Just my way』!急激と会場に立ちこめる熱気。ロックバンドのライブ慣れしている人が集まっていたら間違いなく大暴れしているに違いない、軽快でゴキゲンなバンドサウンドとYUIの歌声。立て続けに披露された『LIFE』では、誰もがその両の腕を高く上げてクラップ、クラップ!それを見てYUIは飛び跳ねながら『HELP』を歌い始め、果敢にその歌声とギターで攻め続ける。「東京!!」と彼女は叫ぶと、今まで歌っていた『HELP』をみんなと歌うことを決めたようで、みんなにコーラスの練習を頼み、実に彼女らしいやり方でこの会場の空気を眩しいぐらいポジティブなものに変えて、みんなの気持ちをひとつにしてみせた。「今日、本当にありがとうございます」と感謝の言葉を告げると、「楽しい話しようよ」と言っておいて「何かない?」と客に振るYUI(笑)。嫌いな食べ物を聞かれて「らっきょ」と答えてました。そんな他力本願の(笑)MCを経て、本編最後の曲『It's happy line』を彼女は歌い始めた。初の全国ツアー最終日、この記念すべき日に彼女は自身の人生を大きく動かしたこの曲をまっすぐな瞳で、勇ましくもある表情で、力強い歌声を会場中の人々の耳と心に激しく響かせた。
アンコール。幻想的なコンピューターの奏でと火の灯りに導かれるようにYUIは再びステージに現れる。アンコールで披露してくれた曲は『Spiral&Escape』『Ready to love』、そして『TOKYO』。彼女は人前で歌い始めたときと同じスタイルで、マイクも使わずにギターとその声だけでその最後の最後の曲を歌った。僅かな雑音のひとつでも入れば台無しになってしまう状況に敢えて彼女は挑んだことに特に深い意味はないだろう。ただみんなの前で自分の作ったとびっきりの自信作をまっすぐに響かせ、聴かせたかっただけ。かつて天神のストリートで不器用にギターを奏でながら歌っていた少女は、その頃の純粋さを持ったままプロのアーティストになったのである。
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