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私は私をあとにして
もうとにかく胸いっぱいである、このアルバム。
私は私をあとにして。過去と未来を今あるリアルな感情で繋ぐようになった熊木杏里にとって、こんなにピンと来るタイトルもない。今作は彼女にとって4枚目のアルバムであるが、この中にある新鮮な風景や感情は、まるでデビューアルバムのような爽やかさと鮮やかさを感じさせる。そしてまず1曲目が『新しい私になって』なのが良い。資生堂企業CMに起用され、全日本シーエム協会(ACC)が2007年度の「ベストサウンド」に選んだ、彼女の歴史から見ても正しく“新しい私”を切り開いた楽曲。と同時にそれまでの塞ぎがちだった自分〜他者や外界との接触を好んで生きるようになった時期の楽曲でもあり、それを証拠にこの『新しい私になって』以降、2曲目〜最後まで今作は、心を開いた先にある世界と感情が表現されている。 『春の風』では「夢を箱にしまいこんだ 鍵は きっと 今でも もう一度 開けられる日を 待ち続けているはずだから」と、夢を遠ざけてしまっていた者に力を与え、『最後の羅針盤』では「だれにも見えない 景色だろうと でも自分だけは 信じてゆきたい」と、これもまた力強く生きていこうという想いを与える。そしてその与える力は、単純に彼女自身の言葉に本当の想いが綴られているから、なのが良い。心を開いて得られた気持ちがこんなにも自分を前に向かわせる、それを彼女自身が全身で感じているからこそ生まれる歌は、どんな歌より胸を打つし、聴いてて気持ちが良いのだ。そんなわけで、今作はどの楽曲も気持ちが良い。歌声も歌詞もサウンドも。 そんなニューアルバムにおいて、どれも聴いてほしいけど、中でも絶対に何が何でも聴いてほしい新曲がある。それはアルバムのクライマックスを飾る『一等星』と『水に恋をする』とボーナスラックの『ひみつ』である。今挙げた3曲で歌われているのは、生きる喜び。人は暗闇に目を塞がれてしまいがちだけど、本当はいくらだって光を見出せるし、自分や他人を好きになって、世界を変えちゃうこともできるんだよという、熊木杏里自身の気付きや開きによって生まれたメッセージ、それがたまらなく良い。だって恋について歌ってるんだよ、彼女。デビュー当時は「心の天気に晴れはない」って歌ってたのに(笑)。ほんと、胸がいっぱいになる。だからさ、人は変われるんだよ、世界は変えれるんだよ、私は私をあとにして。(REVIEW:平賀哲雄) 01.新しい私になって 02.春の風 03.七月の友だち 04.最後の羅針盤 05.君まではあともう少し 06.幽霊船に乗って 07.月の傷 08.0号 09.一等星 10.朝日の誓い 11.水に恋をする 12.ひみつ(ボーナストラック) |
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