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無から出た錆
必ずしも自分の思い出の中にあるものだけが人にノスタルジーを感じさせるわけでもない。行ったことのない場所、思い浮かべたことのない情景であっても、なぜか懐かしく感じる。映画や音楽を通じてそんな経験をした人は少なくないかと思う。小説家の江國香織さんなんてその手の世界観を描写させたらピカイチ、初めて思い浮かべる情景なのに懐かしさを感じさせて、涙すら誘う。でも、彼女に負けないぐらい、泣けるぐらいのノスタルジーを与えてくれる女性はここにもいる。
熊木杏里、僕が知る限り、日本人で最もやわらかい歌声で、人の心をそっと震わせる女性アーティスト。彼女の待望(本当に待ち望んでいた)のセカンドアルバム「無から出た錆」は、前作「殺風景」にも増して、自身でしか表現でき得ない楽曲が目白押しで、どれもこれも最上級の聴き心地を味わわせてくれる。先に触れた江國さんの小説が涙を誘うぐらいのノスタルジーを感じさせるのは、これひとえに言葉への思いやり、そこからあったかい世界が生まれるからだと思うのだが、今作「無から出た錆」にも全く同じ印象を受ける。最上級の聴き心地の良さ、その下地には、少し大人になった彼女が手に入れた人を想う、思いやる気持ちが溢れているのではないだろうか。(REVIEW:平賀哲雄) 01.長い話 02.夏蝉 03.あなたに逢いたい 04.景色 05.おうちを忘れたカナリア 06.新春白書 07.雨 08.説教と楓 09.ムーンスター 10.イマジンが聞こえた 11.夢のある喫茶店 12.祖母と二人で 13.風のひこうき 14.私をたどる物語(BONUS TRACK) |
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