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ANDRE MATOS

『自分たちはANGRAみたいな音楽以外にも出来るんだ」ということを知らしめる、といった目的も正直あったと思う。意図して違うことをやってきた部分もあった。でも、その結果SHAMANではユニークなスタイルが出来上がった。
-アンドレ・マトス




-ずばり、SHAMANから離脱した理由は何ですか?


ANDRE MATOS:僕がSHAMANを脱退したのではなく、解散(※)に追い込まれたと言った方がよいだろう。僕とヒューゴ、ルイスのマリウッティ兄弟の3人は一緒に仲良くやっていこうと思っていた。メンバーではなかったけどライブ・キーボーディストのファビオ・リベイロ(現ANDRE MATOSの正式Key)も含めて4人は何も問題はなかったんだけど、他のメンバーとは折り合いがつかなくてね…。バンドとして機能することができないことが分かったから、別の道を歩むことにしたんだ。
 それで、なぜ今回のような“ANDRE MATOS”という形になったのかというと、ソロ・アルバムの話は大分前からあったんだけどいつもその時は何らかのバンドにいたから、並行してやることはあまり好ましくないと思ったしタイミングも逃してしまっていたんだよね。そんなこともあって、やるなら今かな、と。
(※:SHAMANは残ったメンバーで活動を続行している)


-SHAMANを脱退した後にはロック・オペラ「TOMMY」に参加したそうですね。

ANDRE MATOS:ちょうど一年ぐらい前だったね。あれはホントに今まで経験したことが無いものだったから凄く面白かった。そもそものキッカケは、ある日クラシックのラジオ局を聴いていたときにオーケストの指揮者のインタビューをやっていてね。その人が今度THE WHOの「TOMMY」がブラジルに来てサンパウロで公演をやるから出演者を募集すると言ってたんだ。それを聞いて面白そうだなと思って、普通にオーディションを受けに行った。ちゃんとスコアも覚えていってね(笑)そこでは歌に加えて、ミュージカルだから演技もしないといけない。その2つの審査があったんだけど、面白かったのはそこにいた舞台監督やらコーチやらの審査員がまったく僕のことを知らなかったんだ!ロックシンガーだということをね。他の人たちと一緒に普通にオーディションを受けたんだけど、一週間後に合格通知が来て、しかも主役に抜擢さ!凄く嬉しかったね。
で、リハーサルの初日には最初からオーケストラとクワイアと合同でリハをやったんだけど、その時の団員のなかで僕のことを知っている人が結構いてね。「CD全部持ってます」なんて言って来る人達がいたんだんだけど、それを見てた監督とかが「えっ何、君って有名人なの??」なんてことになってね。ホントに僕の実力を見て選んでくれたこともその時に教えてもらって、それが分かったから尚更嬉しかったね!

実際にやってみて、歌だけじゃなく演技をもやったことが凄く新鮮だった。演技はまったく初めてだったから指導も受けたしね。本番は3日間連続でサンパウロのラテン・アメリカン・メモリアルという大きな劇場でやったんだけど、チケットは毎日ソールドで凄く大盛況だった。ホントに楽しい経験が出来たね!またいつか機会があったらやってみたいよ。


-その「TOMMY」の主人公は心の病にかかりながら自分で道を切り開き“自由”を手に入れましたが、正に今回の「TIME TO BE FREE」のコンセプトにも通じるものがあるようですね?

ANDRE MATOS:(笑)…そうだね。「TOMMY」は素晴らしいストーリーだ。(主人公の)トミーは元々問題児なんだけど、自分のなかで特殊な才能を見出していく。その力で人々を救う救世主になるんだけど、そのうちに別の問題が出てきてね。そのトミーの特殊な力を悲しいがな家族が利用しようとしていくんだ。とても感動できる物語だったね。
確かに今回のアルバムを創るにあたって影響された部分が結構あるんじゃないかな。今回のアルバムタイトル「TIME TO BE FREE」に込めた意味を説明しよう。今までのアルバム制作は何らかのバンドの一員としてだったからそのバンドの色から逸脱することは出来なかった。今回は自分の名前のついたバンドではあるけれども、同時に初のソロ・アルバムということで特定した音楽スタイルに縛られることなく、自分が好きだと思うこと、そして今までやってきたことで特に好きなものを選んで“自由”に出来たんだ。だから今の僕の現状を凄く良く現しているタイトルなんだ。


-SHAMAN時代にはアンドレが音楽的なイニシアティブをすべて握っていたのかと思っていましたが、そうでもなかったと?

ANDRE MATOS:確かにSHAMANの時もやりたいことをやっていたんだけど、SHAMANの位置付けというのはANGRAの反動みたいなものがあって…。「自分たちはANGRAみたいな音楽以外にも出来るんだ」ということを知らしめる、といった目的も正直あったと思う。意図して違うことをやってきた部分もあった。でも、その結果SHAMANではユニークなスタイルが出来上がった。こうして出来たのが“SHAMANのスタイル”だ。“ANGRAのスタイル”ではなくね。だけど、今回はやりたいと思えばVIPERっぽいことも出来るし、ANGRAやSHAMANっぽいことも出来る自由があった。


-確かに「TIME TO BE FREE」を聴くとギターリフを押し出したシンプルなコード進行の曲や、ANGRA時代から築き上げてきたドラマティックな曲など、曲によって結構カラーが異なると思いましたが、そのせいですかね?

ANDRE MATOS:う〜ん…そうかもしれないね、おそらく。やっぱりこれだけ違うスタイルの曲を一枚にミックスさせるのは結構大変なことなんだ…しかも、“良いアルバム”に仕上げるのにね(笑) 凄く苦労したけど、この辺はプロデューサーのロイ・Zやサシャ・ピートに多くの面で助けられた。二人は僕が何をしようとしているかというのをよく理解してくれていたし、これまでのアンドレ・マトスの歴史を一つ一つ取り入れながらも、ちゃんと一枚のアルバムとして成立するように上手くサポートしてくれたんだ。色んなスタイルの音楽を混ぜるのはある意味大きなリスクがあるんだけど、結果としては凄く良い形に仕上がったと思っている。クラシカルなものもあり、プログレ、エスニック、ストレートなロックソングもある。これらが良いバランスで配合されていて、決してやりすぎないようにまとめられたんだ。それに、この「TIME TO BE FREE」には強いメッセージがあるから、それを伝えるにも非常に重要だった。僕は曲を創るにあたって歌詞を凄く重要視していてね。もちろん曲も自分が気に入らなければとことん納得するまで創り込む。その成果が凄く良く出ていると思うよ。


-特にロイ・Zは「バンド復興人」というか、アーティストを原点回帰させる事が得意なプロデューサーとして有名ですよね?

ANDRE MATOS:僕は凄くラッキーだった。まず一つはロイ・Zに偶然にも出会えたこと、そしてもう一つは仕事を引き受けてくれたことでダブルラッキーだった。一緒に仕事した結果凄く良い友達にもなれたし、完璧なコンビネーションだったと思うね。この「TIME TO BE FREE」のすべての面において一番影響力があったのはロイ・Zだったと思う。さっきも言ったように僕がやりたかったことをよく理解してくれたし、僕にとっても良い勉強になった。ロイ自身も僕のことを凄くよく勉強してくれていて、過去のCDを全て熟知しつつ、それを踏まえてどういった要素をピックアップすれば良いのかを考えてくれた。

後はメンバー全員にとっても良い先生であったとも思う。特にレコーディングについてはロイのやり方を観て改めて学ぶことが出来たね。雰囲気も凄く良くて、スタジオにいることを忘れてしまうぐらいにリラックスして出来たし、仕事も早かった。ロイの凄いところはメンバー個々の最高の部分を引き出すことが出来るんだ。完璧さを要求するわけでなく、フィーリングを重視してくれたね。それが凄く良かったと思う。
一方のサシャ・ピートは全然ロイとは違う。作業的にはベイシックなレコーディングはロイとやって、最終的なレコーディングとミキシングをサシャとドイツでやったんだけど、サシャはドイツ人気質で凄くキッチリとした所があってね…ロイとは違うタイプのプロデューサーだ。ロイのスポンティニアスな部分と、サシャのキッチリした部分が良い形でアルバムに反映されているんじゃないかな。アメリカとヨーロッパのそれぞれの最高のプロデューサーと同時に仕事が出来て、とてもラッキーだったよ。


『これは僕にとって究極のバンドだ。辞められないのも分かっているし、自分の名前でやらなくてはいけないから。でも、今こそその責任を負ってでもやるべきだと思ったのが今回なんだ。』−アンドレ・マトス


-話が戻りますが先ほど「歌詞を重要視している」とありましたよね。今回のアルバム「TIME TO BE FREE」を通して何かコンセプトはありますか?

ANDRE MATOS:確かに、歌詞は重要だ。今回のアルバムにもタイトルにあるようにテーマは“自由”だ。自由というものは人間にとって凄く重要なことで、誰しも求めていることだと思う。ただ、今の世の中は表向きには自由とされていたり民主的であるとされているけど、実際にはそうでない部分がまだまだ沢山ある。何となく自分が囚われの身というか、抑圧されているような部分ってあるだろ?だけど、音楽というのは自分自身を解放できる貴重な手段の一つなんだ。この音楽を使って自分を解放させよう、というのが今回のテーマだ。アプローチはそれぞれ別だけど、基本的にはどの曲も“自由”について歌っている。

少しアルバムタイトルのことを話しておくけど、“TIME TO BE FREE”という文には二通りの大きな意味がある。一つは"今こそ自由になる時が来た"という意味。もう一つは"自由になるために時間が必要だ"という意味で、自由を手にするのは相応な時間が必要だということ。自由は向こうから歩いてくるものではなく自分で掴み取るもの、そのためには「時間が必要だ」ということを現している。割と哲学的な深い意味が込められていて、タイトルにも各曲にも掛かってくるんだ。


-なるほど…。例えば「Moonlight」の歌詞の中に"月の光は誰のものでもない"という節が印象的で、これが"アンドレ・マトスの音楽は誰のものでもない"と歌っているようにも思えるのですが、これが今回のコンセプトにあっているからリメイクをしたんですか?

ANDRE MATOS:(笑)…君はこの曲に対してどんな印象を持っている?

-オリジナルバージョン(VIPER時代のアルバム「THEATRE OF FATE」収録)は非常にダークでネガティヴな印象でしたが、今回の新しいバージョンは途中で一転して曲のアレンジがポジティヴなイメージに変化しますよね?そのポジティブな雰囲気が"アンドレ・マトスの音楽は誰のものでもなく自由なんだ"と喜んでいるように思えたんですが…。


ANDRE MATOS:(笑)…面白い、とても面白い。曲の感じ方というのは人それぞれ違うから、人に聞くのが好きなんだ。例えば「この歌詞について説明してください」と言われても僕は絶対にしない。やっぱり解釈の仕方は人によって違うから、自分の考えだけを言ってもしようがないと思っている。実はこれは僕のおじさんから学んだことでね。彼は画家なんだけど、一緒に美術館に行った時にある絵があって僕が「この絵って良い絵なの?悪い絵なの?」って聞いたんだ。そしたら「お前はこの絵が好きか?」って聞かれたから好きだって応えたら「どうしてだ?」って。青がきれいで…みたいなことを言ったら「それで良いんだ。それが全てなんだから」って言われたんだ。このとき、周りの人がどうこうではなく自分自身が好きか嫌いかの、自分の考えで良いことを学んだね。それからは音楽だけではなくて芸術全般に対して同じように考えるようになった。

それで、君が感じた「Moonlight」に対する考えは偶然にも僕が考えていたことにかなり近い。だけど、はっきり言ってそんなことはどうでも良い。何かを曲から感じ取ることが大事なんだ。まぁ、確かに僕自身、これからソロ・バンドで好きにやって行こうという自由な気持ちがあったんだと思う。でも、この曲をリメイクした理由はそれじゃなくて、この曲は僕が生れて初めて作った曲だったから、生れて初めてのソロ・アルバムに入れたかったんだ。さっき君が言ったようにオリジナルバージョンの方がダークだっていうのも当たっているし、それを新しい形に作り直したんだ。そうだな…例えば本に例えよう。例えば18年前に作った物語があったとする。一応そのときは完成していたけど、18年経ったら結末が気に入らなくなってしまい作り直した…「Moolight」を作り直したのもこんな感じだったんだ。


-…すごく深いですね。

ANDRE MATOS:(笑)


-それと、JOURNEYの「Separate Ways」のカバーも意外でしたが、アンドレ自身彼らからの影響はあったんですか?

ANDRE MATOS:確かに僕にとってとても大切な曲、という訳ではないけどね(笑)でもJOURNEYは好きだから何かをやりたくて。僕の声がスティーヴ・ペリーに似ているってよく言われるし、僕自身も彼の歌唱スタイルは凄く好きだし素晴らしいと思うからJOURNEYをやりたかった。で、最初「Don't Stop Belivin'」をやろうと思ったんだけど、ロイに「いや、Separate Waysが良い」って言われたんだ。「Separate Ways」はJOURNEYの曲の中で一番メタルチックだからこれが良いってね(笑)で、結局彼の案を飲んだ。


-そう言えばJOURNEYはまた新しいシンガーを探していて、噂ではスティーヴ・ペリーに声の似たシンガーを探しているそうですけど…興味あります?(笑)

ANDRE MATOS:ホントに??でも、僕の中では別の計画があるから(笑)でも確かジェフ・スコット・ソートが歌っていたんじゃ…。


-クビになりました…。

ANDRE MATOS:クビ!?オッ〜。僕のCDでも送っておこうかな(笑)


-「TOMMY」の時みたいに受かるかもしれないですね。

ANDRE MATOS:(笑)…良い経験になりそうだ。


-(笑)…それでは最後に、この「ANDRE MATOS」バンドはこれからも続けていくものなんですか?

ANDRE MATOS:もちろんさ!僕のトップ・プライオリティーだ。人には「ANDRE MATOS」ってバンドなの?それともソロ・プロジェクトなの?って良く聞かれるけど、バンドだ。一応ソロではあるけど、"ソロ・アーティスト"っていうと曲も一人で書いたり、レコーディングとツアーでメンバーが全く変わったり、その場その場で雇ったりするだろ?それが嫌だったんだ。これがバンドだという所以はレコーディングもライブも同じライナップでやるし、曲もチームで創っている。他のメンバーも僕の名前をバンド名にすることを賛成してくれているし、一生懸命に支持してくれている。それに報いるためにも良いバンドでありたいね。やっぱりバンドの雰囲気って作品にも影響すると思う。和気藹々と楽しく創った方が絶対に良いものが出来る。一人寂しく創るよりも、仲間と一緒にやった方がいいよ。


-ANGRAやSHAMANの時のように、今度は"脱退"することは出来ませんね。

ANDRE MATOS:自分を辞めることになるからね(笑)だから、そういった意味でもこれは僕にとって究極のバンドだ。辞められないのも分かっているし、自分の名前でやらなくてはいけないから。でも、今こそその責任を負ってでもやるべきだと思ったのが今回なんだ。


-分かりました。それでは来日公演を楽しみに待っています。


ANDRE MATOS:直ぐにアナウンスできると思うよ!


-やらなくてはいけない曲は分かっていますよね(笑)

ANDRE MATOS:(笑)…基本的にはニューアルバムからの曲をやるけど、古いのもやるよ!VIPER、ANGRA、SHAMAN、VIRGOまでね。「Carry On」だろ、「Nothing To Say」だろ、「Living For The Night」に「Fairytale」…


-あまり言ってしまうとサプライズがなくなってしまうので…(苦笑)

ANDRE MATOS:大丈夫だよ!もっとサプライズがあるから!





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